こんな現代版兄貴は…ちょっとイイ

元拍手話の現代版パラレル兄弟話。

クリスマスにも、こいつらは相変わらずでありまして…




「クリスマスDE 兄弟」

《設定》

お兄さまのお名前はマルチェロ(都内某マンモス私大文学部常勤講師)。

弟さまのお名前はククール(一応、そこの学生。一応、学部は経営学部)。


ごく普通の兄弟の二人(弟はしかし、歌舞伎町で源氏名アンジェロで通用する、カリスマホストでもあります)、

ごく普通の家(弟が“優しいお客にプレゼントされた”億ション)で、

ごく普通の同居(火事でアパートを焼け出されてしまった兄を、弟がムリヤリ引きずり込んだ)をしました。


しかし、ただ一つ、普通でなかったのは…


弟さまは、お兄さまに“恋”をしていたのです♪









「クリスマス…」

ククールは

にんまり

しました。


「アンジェロちゃーん、なんでそんなに嬉しそうなの?」

お客さんが問います。


「えー、だって、クリスマスじゃーん。嬉しい嬉しいって!!」

「あ、そんなにあたしとイブにデートするのが嬉しいんだー。」

「ええー、そんなコト言ってぇ。実は本命が先約なんでしょ。」

「やだー、カレシいないってぇ。てゆーか、アンジェロちゃんこそ、イブは本命とデートなんでしょー?」

「ヤだなー、オレ、カノジョなんかいないよー。」


カレシならいるけど

と、ククール、源氏名アンジェロは、こっそり呟きました。









「んっふ、ふっふ、ふーん。」

冬だからまだ暗いとはいえ、夏ならとうに「朝」と言ってもいいような時刻ですが、ククールにとっては「いつもの帰宅時間」です。

「あっにきー、ただいまー!!」

帰り着くと、早起きの兄マルチェロは、とうに起きて、身支度をカンペキに整えた上で、朝食後のコーヒータイムをしていました。


「兄貴ー、オレ、おなかペコペコー。」

そう言いながら、ククールは豪華なシステムキッチンに置いてある鍋を開けます。

中には、「ニッポンの朝ごはん」と題しても良いような一そろいが、プロ並みの味付けで出来上がっていました。


自分でご飯をよそい(本当はマルチェロによそって欲しいところですが、もちろんそんなワガママを言った瞬間、”アンジェロちゃんの商売道具”は、空手有段者のマルチェロによって破壊されてしまうでしょう)おかずを電子レンジで

ちん

して、ククールは食卓に着きます。


マルチェロはそんなククールに 視線すらくれません が、ククールは平気です。


だって、最近のマルチェロは、(そんなでも)ククールに とても優しい からです。









「兄貴ー、クリスマスパーティーしようよー」

ククールがそう言い出した時、ククールは自分で言い出しながら、マルチェロの痛っ烈な反論はだいたい予想していました。




年の瀬のこの忙しいのに、パーティーなど至愚の極みだ。

貴様、そのような欧米にかぶれた行事に私を巻き込むかっ!!

あのような軟弱で軽薄な、祝祭と呼ぶにもおこがましい代物を祝う?軟弱で軽薄なのは、貴様だけで十分だ。


などなどなど




だからククールは、自分の言葉を聞いた瞬間、その眉根に不快の皺を寄せたマルチェロに、畳み掛けるようにこう言ったのです。


「兄貴、そもそもクリスマスパーティーっていうのは、家族と共にいる喜びを確認し合う日なんだよ!?」


ククールとマルチェロは、兄弟は兄弟でも、異母兄弟です。

かなりロクデナシの兄弟の父親が、マルチェロとその母親にいろいろと酷いことをしたので、マルチェロは当初はククールを弟とすら認めてくれませんでした。

でも、”ククールの愛情が通じて(と、ククールは思っています。事実かどうかは知りません)”二人はようやく、

「兄弟」

と認め合うようになったのです。









ククールの言葉に、マルチェロはしばし考えた末に言いました。


「なるほど、それは良い考えかもしれん。」




それから、なぜかマルチェロの機嫌はとても良くなりました。

そもそもマメなマルチェロは、クリスマスパーティーに備えて、料理の下ごしらえにも余念はありません。

食べ盛りのククールのために、たっくさんの料理を用意してくれるようです。


何より、今まではマルチェロの料理を食べると、かならず苦言がついてきたのに、最近では食べても文句は言いません。




兄貴はやっぱり、オレのことがどんどん好きになっているんだっ!!!


にまにまにま

と、思わず(彼が美形だからまあ見れますが、常人がしたら間違いなく気持悪い)笑みが漏れてしまいます。




ココは一つ、パーティーの後は、ミッドナイトアダルトモードにっ!!


ククールは、なにせ父親の葬式まで兄に会ったことは愚か、存在すら知りませんでしたので、兄弟とは何か、よく分かっていません。







そして、イブの当日。


ククールはわざわざお仕事を休み、プレゼントその他の準備に夕方までの時間を潰しました(もっとも、夜型の彼のこと。起きたのは昼前なのですが)


「うっふふふー、兄貴へのプレゼントはバッチシ!!だし、コンドームも1ガロン(12ダース、144枚)入りまで入手しちゃったもんねー♪」

はたして1ガロンのコンドームをどうするつもりなのか、ツッコミを入れる人は誰もいません。


ともかくも、彼のような問答無用の美青年が、にまにま笑いながらほとんどスキップ状態で歩いている様子というのは、かなり人目をひいているのですが、もちろんククールは気付いていません。


「ケーキは要らないって兄貴が言ってたな。コレはあれかな、兄貴お手製のクリームつきの兄貴が

『私を食べて♪』

とかいう、シチュかー!?」


そうしなければ世界が崩壊するとしても、マルチェロはそんなコトはしないと彼以外誰もが知っている妄想で、胸と下半身を膨らませながら、ククールは家路へと急ぎます。




「兄貴ー、ただ今ーっ!!」

そして、天使のような満面の笑みで、ドアを開けた彼が見たものは…













「おおククール、メリークリスマス。サンタさんは徹夜仕事で、ベリー苦しみます…なんてのう、ほっほっほ。」

おこたに入った小さなサンタさんの、優しい笑顔をククールに向けた姿でした。









ククールは思わず膝を着きました。


「おおククール、どうしたのかね?」

小さなサンタことオディロ教授は慌てて駆け寄ろうとしますが、マルチェロが止めます。


「年甲斐も無く無駄に張り切りすぎて疲労しているだけでしょう。御心配は無用です。」

でも優しいオディロ教授は駆け寄ります。


ククールは言いました。

「なんでいるの?」

遠慮を未だ知らない3歳児のような台詞でしたが、オディロ院長は優しく微笑んでからマルチェロに言います。


「おやおや、ワシが来ることは知らなかったのかね、マルチェロや?」

オディロ教授の問いに、マルチェロは優しい口調で(でもククールにとっては冷然とした返答を)口にしました。




「クリスマスパーティーっていうのは、 家族と共にいる喜びを確認し合う日だ と、ククールは申しました。よって、 パーティーにオディロ教授が御越しになることは、パーティを開催すると決めた時から予定として折込済み です。なにせ、オディロ教授は 私の最愛の家族 でいらっしゃいますからな。」


ククールは、更に力を失って


べたり

と倒れ付しました。









マルチェロが腕を振るった料理はいつもにまして美味しく、部屋の飾りつけは、文句のつけようがないカンペキさで、しかもオディロ教授が直々に作成したというクリスマスケーキは、さすがパン屋の息子というべきか、玄人はだしの出来でした。


「…」

でもククールは、お葬式のような顔で(でも、黙々ながら口はさかんに動かしていますが)す。


「ククールや、体調でも悪いのかね?」

オディロ教授は心配しますが


「愚弟の心配など無用です。」

マルチェロは完全ムシモードです。



しかも、今日はオディロ教授はお泊りだと言うではありませんか。




(オレの兄貴の、イブのアツーい、愛欲の夜がーっ!!!!!)

ククールは、心の中で何度も絶叫しました。









翌日。

マルチェロは普通にお仕事に出かけねばならないため、ククールがオディロ教授を送り届ける役目を仰せつかりました。


オディロ教授は

「一人で帰れるから気を使わないでおくれ。」

と言ったのですが、


「何をおっしゃるのです。愚弟のような、 この国のGDPになんら貢献しないような生物 など、こんな時くらいしかお役に立てますまい。」

とのマルチェロの温かい心遣い(もちろん、ククールには一切口を差し挟ません)から、こうなったわけです。









家に着くと、オディロ教授は言いました。


「すまんのう、ククールや。」

「…何で謝るの?」

「せっかくのクリスマスじゃ。兄弟水入らずで過ごしたかったじゃろうにのう。」

「…」

まったくもってその通りなのですが、いざ、図星を指されると心が痛むククールです。


「マルチェロは優しい子じゃからの。ワシのような年よりが一人でイブを過ごすのが可哀相に思ったのじゃろう。」



もちろん事実としては、マルチェロは むしろククールが要らなかった に違いないのですが。




「ちょっとお待ち、ククールや。」

そしてオディロ教授は、家の中に入ると、何か可愛い包みを持って出てきました。



「メリークリスマス、ククール。」

「オレにプレゼント?開けていい?」

「もちろんじゃよ」




開けると、そこには小さなアルバムが入っていました。


「何の写真?」

「開けてごらん。」

言葉どおりに開けると、そこには黒髪の男の子が写っていました。


小さな頃から、少しずつ大きくなって…




「兄貴のアルバムだーっ!!!」

ククールは叫びました。




「そうじゃよ。マルチェロの小さい頃の写真じゃ。ワシはお前たちの父御とも、そしてマルチェロの母御とも、少しばかり面識があってのう。ちょっとした写真がいくつかあったのじゃ。それを集めてみたのが、それじゃ。」

「すげー、兄貴可愛いよ。小さいよ!!兄貴にもこんな頃があったんだーっ!!!」

オディロ教授は、優しい瞳で言いました。


「のう、ククールや。マルチェロは今でもやはり自分の過去を嫌っておるから、ワシが死んで、あの子がワシの家を片付けて、そしてこの写真を見つけたら…きっと焼き捨ててしまうじゃろう。でものう、人の過去とは消し去ってはならぬものじゃ。」

「…」

「だからククールや、ワシはもう何かあってもおかしくない年になってしもうたから、これをお前にあげるよ。たった一人の弟として、これからもマルチェロを見守ってやっておくれ。そして、いつかマルチェロが自分の過去をその不幸ごと受け止められるようになったら…その時には、このアルバムを見せてやっておくれ。」

「約束するよ、オディロのじいちゃんっ!!」

ククールは、力いっぱい、返答しました。







そして二人は、約束の指きりげんまんをしましたと、さ。











「あっにきー♪」

「用も無いのに私を呼ぶな、鬱陶しい、むしろ忌まわしい。」

パーティーが終わると、またマルチェロはいつものマルチェロに戻りました。


「んふふふふー」

「気色の悪いニマニマ笑いを浮かべるな。コーヒーが不味くなる。」

ですが、ククールの機嫌は最高潮です。




え?なぜって?


(そんなスカした顔して見せても、兄貴の可愛かった姿を、オレは知ってるんだもんねー。んふふふ、ランドセル兄貴、ぷりちー。)

例のアルバムを、オディロ教授が想像もしない方向に用いて、大満足だからです。




「んっふっふー」

「いい加減にしろっ!!」

「あーにきっ♪カワイイー♪」

「死ねいっ!!!」


かくして今年も年の瀬に向かうのですが、でも今年も、そして来年も、二人の(いろんな意味での)成長は、見込めないみたいですよ。


2008/12/28


クリスマスくらいいい話を…と思って書いてみたお話。

現代版の兄貴は、裏の魔王聖下はもちろん、「童貞聖者」シリーズの兄貴よりはるかに弱いです。
ほら、アレですよ。兄貴は 敵が強いほど燃える人 なんで、現代のようなヌルい時代では、力の発揮しようがないのでしょう。

そして、拍手コメントでもいただきましたが、オディロ教授はもちろん、現代版でも聖者であります。

だからってククール、君、チョーシ乗りすぎ!! inserted by FC2 system