こんな現代版兄貴は…ちょっとイイ

元拍手話の現代版パラレル兄弟話。

クリスマスにも、こいつらは相変わらずでありまして…




いろんな意味でスゲすぎる客

《設定》

お兄さまのお名前はマルチェロ(都内某マンモス私大文学部常勤講師)。

弟さまのお名前はククール(一応、そこの学生。一応、学部は経営学部)。


ごく普通の兄弟の二人(弟はし界隈では“源氏名アンジェロ”で通用する、カリスマホストでもあります)、

ごく普通の家(弟が“優しいお客にプレゼントされた”億ション)で、

ごく普通の同居(火事でアパートを焼け出されてしまった兄を、弟がムリヤリ引きずり込んだ)をしました。


しかし、ただ一つ、普通でなかったのは…


弟さまは、お兄さまに“恋”をしていたのです♪









「時にククール。最近、世界的な不況だが、お前の商売に影響はないのか?」

お正月のお屠蘇でちょっと機嫌が良かったのでしょうか?

なんとマルチェロが

なんとククールの

仕事に興味を持ったような発言をしました。




もちろん、ククールは嬉しくて天にも昇る心地でしたが、 クリスマスでいろいろと学んだ彼は ここでチョーシにのって、兄の機嫌を損ねるような真似はしませんでした。

ええ、ククールだって成長するのです。




「んー、確かに余所の店とかは、売り上げ落ちて集団解雇とか、イロイロ大変みてーだよ。」

「お前の店は?」

「オレんトコはヘーキさ、なにせ 絶世の美形のオレがいる から。」


もちろん、この発言は軽くスルーされましたが、ククールはそのくらいでへこたれるほどか弱くはありません。




「ま、オレの店ってば、あの地域ではナンバーワンだからな。本当にいいホストには、きちんとカネ出す客は必ずいるさ。」

「ほう、そんなものか。」

マルチェロはお屠蘇のおかげか、納得してくれたようでした。

ククールは心から、 来年もこのお屠蘇絶対買おう と思いました。




「だが、この不景気にお前のような代物にカネを払おうという人間だ。妙な人間も多かろう。」

相変わらず、ビミョーにとげのある言い方ですが、ククールは気にしません。


「ま、多いかな…ああ、そういやこないだ、いろんな意味でスゲすぎる客に会ったんだ。」

ククールが、力いっぱいアピールすると、お屠蘇のおかげか、マルチェロは

「ほう、どんな客だ?」

なんと食いついてくれました。


ククールは心から、 来年もこのお屠蘇絶対買おう!!5リットルくらい買おう!! と思い、語りはじめました。



















ククールがちょっと休憩していると、同僚が息せき切って入って来ました。

「アンジェロ、指名だっ!!」

「あ?いいけど…なんで慌ててんの?」

「マフィアのドンだっ!!」

「…あ?」

また別の同僚が言いました。


「おれ知ってる、アレ、カジノのオーナーだって!!」

「いいから、すぐ行け、すぐっ!!」




というわけで、ククールは状況が掴めないまま、“マフィアのドン”の前に押し出されてしまいました。




「おうっ、来たか。」

ドスの効いたバスボイスをかけてきたのは、間違いなく熊を素手で殺せるはずの、ヒゲでハゲの異様に押し出しの強い顔に似合いすぎる、葉巻をくわえた初老の巨漢でした。

(うわあ、マジでドンだよ。)

ククールは思いましたが、


「はじめまして、アンジェロでーす♪」

と、ハニーボイスで挨拶しました。


「うっわー、ホント超びけーだあっ!!パパ、雑誌で見たとーりだよ。スゴいゾー!!」

ぴょこん

という効果音と共に出てきたのは、小さな…と言っても、ドンと比べて小さく感じるだけで、本当に小柄かどうかはよく分りませんが…女の子でした。

ド派手な黄緑の髪に、なんというか、通販で売ってるセーラー服のような、つまりコスプレっぽいデザインの服を着た女の子です。


(パパ?ヲイヲイ、いくらドンだからって、こんな女の子が愛人?ちょっとロリ入ってんじゃねーのか、このドン。)

ククールは思いましたが、もちろん、おくびにも出しません。


女の子は大はしゃぎで、足をバタバタしてました。

短いスカートから、下着が見えそうですが、もちろん見るような真似はしません。




ドンが怖いので。




(しっかし、このドン。愛人連れてホストクラブたあ、妙な趣味してやがんな。それともアレか?まさか両刀?)

ククールは、ちょっと顔をしかめました。

愛する兄相手なら良いのですが、いくら金を積まれても、ドンに貞操売る気は…




「あ、ハイハイ、パパ、葉巻チョーダイ。」

女の子は、ドンから葉巻を受け取ると、ちょっとカッコつけて言いました。

「火っ!!」

もちろん、反射的に火をつけるククールです。


「うっわー、スゴいよ、パパ。あたし、コーコーセーになって、なんかオトナの階段上った気分だゾ?」

大はしゃぎです。


「あの、すんません。(言わなきゃ気にしないケド)一応、ウチ、未成年者のタバコは…」

「大丈夫、あたし、タバコなんか吸わないゾ?」

女の子は、事もなげにそう言うと、既に葉巻をくわえたドンの口に、火をつけた葉巻を押し込みました。



「パパが吸うから、平気だゾ。あ、パパ。何飲むー?あのね、アタシおつまみで炙りイカがいいゾー。」

「はっはっは、昔っから、オッサンのツマミが好きだな、ユッケ。おう、バーボン頼む。」




むくむくむく

ユッケと呼ばれた女の子は、ちゃんとノンアルコールのカルピスで、炙りイカを美味しそうに食べました。

取り合わせはともかくとして、法には触れていません…ここがホストクラブなのが何ですが。




「へー、娘さんなんですかー。」

「おう、レコに見えたか?」

「えへへ、パパのカノジョに見えたんだ。それも嬉しいゾー。」

とても仲良し親子のようです…ただ、たいしてモラリストでないククールでも、思います。




(高校生の娘をホストクラブに連れて来てイイのか、ヲイ?)




「この子が、カリスマホストのおめェに会いたいって駄々コネてな。昔っからワガママで困る。でも言いだしたら聞かねえし、かと言って、ホストクラブに女子高生が一人で出入りするのも心配じゃねえか?だからよ、親同伴で来たってワケさ。」

「でも連れてきてくれるパパってば、大好きだゾー。」

(親同伴でも、ちょっとソレはいろいろどうかと思うんスけど?)

ククールは心からツッコミたかったのですが、さすが売上ナンバーワン、もちろんそんな野暮なコトはしませんでした。



「ま、世間勉強ってヤツさ。」

ガッハッハ、ドンは豪快に笑いました。




ユッケは、あたりをキョロキョロと見まわしました。

「ねー、アンジェロさん、あたし、“ボトルキープ”ってやってみたいゾ。」

「マジですかー?」

ユッケが女子高生なのが問題ですが、売上につくから大歓迎です。


「どれにします?」

ただ、女子高生と分かった上で酒呑ませたのがバレたら、ちょっとイロイロ問題ではあるのです。




「ねー、アレ。あのなんかスゴそーなヤツがいいゾー。」

「…アレ?」

ユッケが指さした先には、ホストクラブ名物 ドンペリさま が鎮座ましましていました。




「ドンペリなんですケド…」

いえ、ククールだって伊達にカリスマホストを張っている訳ではありません。

ドンペリボトルくらいでビビりはしないのですが、なにせ注文者は保護者同伴の女子高生です。


「ドンペリ?ああならあたし、シャンパンシャワーってのがしたいゾー。」



シャンパンシャワー

それは、キュヴェ・ドンペリニョン・ロゼ(通称:ピンドンさま)をボトルで入れた時に起こるという奇跡です。

と言っても、 市価で35000円 はするピンドンさまを、ボトルで入れるツワモノは、そうそういません。




「ピンドンですケドー…」

「パパ、いいよね?」

「おう、いいぜ。」

ドンは、ものすごくあっさりとオッケーを出しました。




「ピンドン入りまーす。」

ちょっと今日はスゴいかもしれない…ククールはちょっとワクワクしました。




「ね、パパ。やっぱせっかく世間ベンキョーしにきたからには、もっとスゴいコトしたいゾ。」

「何したいんだ?」

ユッケは、満面の笑顔で言いました。




「シュチニクリンーっ!!」

ククールの脳みそが、「酒池肉林」と変換する前に、ドンは呵呵大笑しました。




「さっすが俺の娘だ。なかなかスケールデカいじゃねえか。」

「えへへ、高校生になったから、むつかしー言葉使えるゾ。もう、お兄ちゃんにも負けないからね。」

微妙にかみ合っていない会話ですが、二人はとても満足そうです。




「おう、兄ちゃん。」

ドンは、


ギロリ

と睨みつけるような瞳でククールを見て、言いました。


「全員、集めな。」

「…誰をでしょう?」

思わず素で問い返してしまったククールに、ユッケが答えてくれました。



「このお店の人ぜーんぶっ!!」














「ようやく見つけたぞっ!!」

その声と共に、黒服のお兄さんを従えた誰かが、血相変えて飛び込んできました。


後ろからは、オロオロする店の従業員です。




(うわヤッベ、このドンへのヒットマンとかじゃねーだろな。ヲイヲイ、オレの今日の売り上げかかってんだから、会計済んでからにしてくれよ。)

ククールは思いましたが、黒服はともかく、叫びながら入って来たのは、どう見ても高校生くらいの少年です。




「ヤホー、お兄ちゃんもホストクラブに遊びに来たの?」

「バカ者っ!!」

少年は一喝すると、すぐにドンに向き直りました。


「どこの世界に、娘を連れてホストクラブに行く父親がいるのだ、父っ!!」

少年は本気で怒っていましたが、ドンは涼しい顔です。


「ったく、視野が小せえなあ、フォーグ。世間勉強だって言ったろ?」

「そーだゾ、お兄ちゃん。ベンキョーだゾ、世間ベンキョー!!お兄ちゃんも、ガッコの勉強だけじゃなくて、こういう勉強もたくさんしなきゃだゾ!!」

「やかましいっ!!そういう台詞は、赤点でない成績を取ってから言えっ!!」

「違うゾー、あたし、赤点超ギリギリではあっても、赤点はとってないゾー。」

「妹、いいから帰るぞっ!!ほら、父もっ!!」



















「…って楽しいお客が…」

「信じられん所業だな。」

マルチェロは、一言の下にはねつけました。




「まったく、金持ちだか何だか知らんが、子供の教育もまともにせんから、阿呆な大人が増えるのだ。」

マルチェロは怒ってしまったようです。

ククールはなんとかなだめようとしましたが、一旦エキサイトしたマルチェロは、お屠蘇も入っているせいで止まりません。




「家庭教育における親の役割とモラルとはなんだっ!!」

かくしてククールは、マルチェロのそんな「ありがたーい家庭教育論」を、正座して暗くなるまで聞かされることになったのでした。




(もう、このお屠蘇買わない…)

心の中で決意するククールの、仕事用の携帯には




やほー、アンジェロさん。ユッケだゾ。また今度遊びに行くからね。次は同伴出勤希望しちゃうゾー

というメールが入っていることを、ククールはまだ気づいていません。


















「ほらフォーグ。そうスネるな。俺が悪かったからよ。」

「…」

「ユッケが駄々コネたら始末悪いのはお前も知ってるだろうが。」

「…じゃあ…」

「おうよ、だから次は俺の行きつけのクラブでな…」

「…?」

「ユッケにばっかボトル入れてやったからスネてんだろ?だからピンドンどころじゃねえ、ゴールド(レゼルヴ・ド ラヴェイ 100000円以上する代物)入れてやるから、男同士で飲みに…」

「父っ!!ぜんぜん分かってないっ!!」

という、和やかな親子の会話が、どこかで交わされていたそうですよ?


2009/1/4


ものすごくユッケが書きたくなったので書いてみた代物。
現代版でも、ギャリングさんはやっぱりカジノをやっていて、そしてものすごくお金持ちで、そしてものすごく剛毅で、そしてものすごく子供たちを愛していて、そして ものすごく世間常識とズレた子育て哲学を持っているといい と思います。

しかしまあ、ギャリングさんのカジノは不況なんてどこ吹く風と儲かってるんでしょうね…羨ましいことです。 inserted by FC2 system