こんな現代版兄貴は…ちょっとイイ

元拍手話の現代版パラレル兄弟話。

ククールはカリスマホストですが、社会的な身分は学生です。
だから、たまには大学にだって来ますよ?




ビニール傘の王さま

《設定》

お兄さまのお名前はマルチェロ(都内某マンモス私大文学部常勤講師)。

弟さまのお名前はククール(一応、そこの学生。一応、学部は経営学部)。


ごく普通の兄弟の二人(弟はし界隈では“源氏名アンジェロ”で通用する、カリスマホストでもあります)、

ごく普通の家(弟が“優しいお客にプレゼントされた”億ション)で、

ごく普通の同居(火事でアパートを焼け出されてしまった兄を、弟がムリヤリ引きずり込んだ)をしました。


しかし、ただ一つ、普通でなかったのは…


弟さまは、お兄さまに“恋”をしていたのです♪









「マジ最悪」

オレは呟く。


だってさ、わざわざ大学にきてやったのに…




雨だぜ?




しかも、オレの愛車の真っ赤なセブンでじゃなくて(車検中だから仕方ねーじゃんな)わっざわざ電車で来てやったのに!!

この超美形のオレが、なにが悲しゅうて雨に打たれて帰んなきゃなんねーの!?



ブチブチ言ってても雨がやんでくれるわけじゃないんで、オレは購買でビニール傘を買う。

いっちばん安い、白ビニールのやつ。




「あーもう…帰っちまおうかな。」

ひさびさに大学に来たのに、すげえやる気なくす。

だいたいさ、オレ、全ての授業で「代返、あーんど、ノート取り係」いるから、テスト以外来る必要ねーんだって。


ほら、女の子はオレがカリスマスマイルで

「お願い♪」

つって、ちょっとしたイベントにプレゼントあげたら一撃だし。


ヤローはちょっと手間かかるけど

「いいコ紹介するから」

って、なんかみつくろってやったらオッケー。

その中の一人なんて、ソレで付き合い始めて今度ようやく「一緒に旅行行くんだ」って、お花飛ばして嬉しがってたっけ。

あいつ、ぜってードーテイだよな。




一人でブチブチ言ってたら(つっても、オレくれーの美青年になると、そんな姿も絵になるんだ)、




「講義は始まったぞ。」

声がした。


艶のあるバリトン。




立っていたのは、ビニール傘をさした王さまだった。




「兄貴…」

言ってから、オレは付け加える。


「オレの受ける講義まで把握してんの、カンゲキ♪」

兄貴は眉を不快そうにひそめた。


「仮にも私の勤務する大学だぞ。」


いやでもフツー、学生ひとりひとりの講義登録状況は把握してないと思う。

兄貴なら分かんねーけど。




「兄貴、今、空きコマ?」

「そうでもなければ、私がこんなところにいるか?」

「ならデートしようぜ♪」

「いいからさっさと講義に出席しろ。学部が違うとはいえ、お前がロクに講義に出ていないのは私の外聞が悪い。」

「単位は全部落してねーぜ。」

オレが笑うと、兄貴はなおさら不快そうな顔になった。


オレはだから、さらに付け加える。


「ところで兄貴、なんでビニール傘なの?」

「…天の機嫌は、人知には量り難い。」

「傘忘れたんだ。兄貴にゃ珍しーね。置き傘とかバッチリっぽいのに。だからって、そんな安っぽい傘じゃなくてもいいじゃん。」


そう、無駄にゴージャスな…王さまみてーなカリスマバリバリの兄貴は、もっとシマった傘さしてて欲しいわけよ。

「どうせ今しか使わんものを、高い金を出して買う必要はなかろう。だいたい、お前も同じ傘だろうが。」




あ、そうだ。

兄貴とおそろいだ。

この白のビニール傘。




にこお

オレは笑う。




「だよなー。つか、いくら安っぽい傘だって、兄貴なら似合わしちまうもんな。ほら、アレよ、お忍び中の王さまみてーに。本人は身をやつしてるつもりだけど、雰囲気でバレバレみてーな。」

「何を言っているのか、全く理解できん。」

「オレとおんなじ。オレだって、むしろ安っぽい傘がむしろ、逆にチャーミングでドキドキ、みたいな…」




そこまで言ったところで、兄貴はオレが「オレと兄貴がおそろいで嬉しい♪」と言いたいと気付いたらしい。




「…いいからさっさと講義に行け。」

そう言い捨てて、さっさと身を翻してしまった。




オレ知ってる。

兄貴の着てるコートは、モノはいいけどノーブランドのバーゲン品だって。

実用一辺倒の兄貴は、おしゃれにはまったくキョーミなくて、デザインとかほとんど気にしないでコートも買ったって。




でも、コートを翻す兄貴の動作は、どんなたっかいブランドを着てる奴より、よっぽどカッコいい。

つかセクシー。

むしろ、萌える。




肩幅広い兄貴の肩は、雨がふりかかってる。

きっと研究室戻ったら、ブツブツ言いながらハンガーとかにかけるんだろうな。

しかも、ストーブの傍に。

思いっきり、所帯じみた動作だよな。




「でも兄貴は、オレの王さま。」

オレは今日、大学に来てよかったと思った。




そして、やっすいビニール傘を買って、良かったと思った。


2009/1/30


現代版シリーズではじめて書く一人称シリーズ。
どこまでお前は兄好きなのかと、ククールに問い詰めたい。

そして、マルチェロはいかに「マルチェロらしくない」、ことをしてても、ものを着てても、「強制的にマルチェロ化」してしまうと思います。 inserted by FC2 system