こんな現代版兄貴は…ちょっとイイ

現代版パラレル兄弟話。

しかし今回は、兄貴は刺身で言ったらツマみたいなもので、他のいろんな人々の方が実はメインだったり。
一体ナニが「自業自得」か分からない方は、拙サイト経験値が足りませぬ。
もっと経験をつんでから、お来し下さりませ。

そして、メノさま、大変お待たせしました。 50000hit記念話でございます。




「自業自得編」

《設定》

お兄さまのお名前はマルチェロ(都内某マンモス私大文学部常勤講師)。

弟さまのお名前はククール(一応、そこの学生。一応、学部は経営学部)。


ごく普通の兄弟の二人(弟はしかし、歌舞伎町で源氏名アンジェロで通用する、カリスマホストでもあります)、

ごく普通の家(弟が“優しいお客にプレゼントされた”億ション)で、

ごく普通の同居(火事でアパートを焼け出されてしまった兄を、弟がムリヤリ引きずり込んだ)をしました。


しかし、ただ一つ、普通でなかったのは…


弟さまは、お兄さまに“恋”をしていたのです♪









マルチェロは、いわゆるオッサン居酒屋 で、焼き鳥なんぞをつまみながら、冷酒で一杯やっていました。

ええ、彼女も女友達もいない、そして人づきあいの悪い彼は、もちろん一人です。



もっとお洒落な居酒屋に行っても良いは良いのですが、彼はあーゆーカップルの多い場所は嫌いでした。




一人酒はとかく深酒になりがちなものですが、自制心が超人レベルに強い彼はもちろん、翌日の勤務に差し支えるような呑み方はしません。




そろそろ、これで帰ろうかな…



マルチェロがそう思った時でした。






!?

強い視線を感じました。




そろっ

と目をやると、どっからどう見ても、カタギでなさそうな人相の悪い男がこっちを睨んでいます。




「…」

マルチェロは、とりあえず冷酒のお代わりをして、様子を窺うことにしました。







マルチェロとて、人相の悪さでは人の事は言えませんが、マルチェロの悪人ヅラは(当人は認めませんが、愚弟ククール曰く)大悪人レベルなので、気品も知性もあります。

ですが、マルチェロを睨んでいる男は、どっからどう見てもチンピラレベルの悪人ヅラです。



ですが、睨まれる理由が分かりません。

マルチェロは品行方正ですから女性関係のトラブルなどあるはずもありませんし、サラ金から金なぞ借りた覚えもありません。

もしあるとすれば、自称カリスマホストの愚弟が、客とトラブルでも起こして、自分が八つ当たりでも受けるくらいのものでしょう。



(迷惑な…)

マルチェロは、元空手部の主将ですので、そこらのチンピラに殴りかかられても、殴り倒す自信はありますが、そんなやっかいごとに巻き込まれたくはありません。





「なァ…」

ついに背後のチンピラは、マルチェロに話しかけてきました。



「…なんでしょう?」

警戒しながら、きちんと敬語で返すマルチェロに、男は言いました。




「メルアド教えてくんねェ?」

「はあ!!??」



マルチェロは、思わずそう返してしまいましたが、男は怯みません。



「怪しいモンじゃねェって!!ただ、アンタと仲良くしたいだけなんだって。なァ、メルアドくれェいいだろ!?」

「いや、困りますっ!!」

終いには、警察手帳まで出してきた男の手を振り払いながら、マルチェロは言いました。



ナンパ…のようです。

そして(マルチェロにとっては不本意なことに)これもまた、マルチェロにはよくある事なのでありました。






かくして、しばらく揉み合っていると、




「エステバンっ!!」

妙に図体の大きな男が、割って入って来ました。



「お前、トイレに行ったまま帰ってこないと思ったら、こんな所で…」

「なんだよ、別にいいじゃねェか。オレァ今、運命の人をみっけたトコで…」

「訳の分からない事を言うんじゃない。すいません、ツレが酔って、ご迷惑をかけたようで…」



頭を下げかけた男と、マルチェロの視線が合いました。





「トマーゾ?」

「マルチェロ!?」




なんと、ナンパ男のツレは、マルチェロの高校時代の同級生のトマーゾでした。

この間、同窓会で会ったばかりなのですが、まさかこんな所で再会するとは…




「なンだよトマーゾ、知り合いなら紹介しろよっ!!」

「いや、俺の部活の主将で…」

言いかけたトマーゾを遮って、男は言いました。



「なら、オレより年上なんスね、マルチェロさん。オレはエステバン、職業は国家コームイン、つーか刑事っス。」

「え゛?」

ということは、このチンピラ臭い男の持っていた警察手帳は本物であったようです。


どこからどう見ても、追うよりも追われる側っぽい容貌なのですが。




「ならトマーゾ、これもウンメーじゃねェか。家に来てもらおーぜ?な?マルチェロさん、別にいーよな!?はい、決定っ!!」






エステバンと名乗る男は、強引にマルチェロを連れて行くことに決定してしまいました。

なんという押しの強さでしょう。さすがのマルチェロも、口を差し挟む隙がありませんでした。








「…アンジェリカ、すまん、その…高校時代の同級生と会ってさ、家に連れて帰ることに…ああ、エステバンも一緒なんだ…本当にすまん、こんな夜中に…」

トマーゾが、こっそり電話をしているのを聞くと、どうやら連れて行く「家」というのは、エステバンのではなく、トマーゾの家であるようでした。



「…」

マルチェロにしては珍しく、彼はトマーゾに同情しました。












「ただいまー、アンジェリカさん、お客を連れてきたぜー。」

台詞だけ聞いていると、自宅に帰宅したような言い草で、エステバンは、靴を脱ぎ散らかして入っていきました。


「…ま、ゆっくりしていってくれ、マルチェロ。」

その靴を揃えながら、トマーゾが言います。


「…お邪魔します。」




トマーゾの家は、非常に彼の家らしく、こざっぱりと片付けられていて、好感の持てるものでした。

きっと彼の奥さんも、彼の奥さんらしく、きれい好きでしっかりした人なのでしょう。


それに、マルチェロの同じ年なのに、またえらく広い家です。


「ま、子どもが五人もいるからな。大きくなったら、それでもきっと狭いよ。」

トマーゾはそう答えましたが。




「いらっしゃい、散らかった家で恐縮ですが、どうぞごゆっくり…」

トマーゾの妻、アンジェリカというらしい小柄な女性は、出てきながらそう言いましたが、マルチェロの顔を見るなり、少し絶句しました。

「…?」

なんだか、彼女の顔がこわばった気がします。


「ええ、簡単なものですが、用意してありますから、どうぞ。」

ですが、それ以上は何もいわず、彼女はマルチェロたちを奥に通しました。




「トマーゾ…やはり、こんな夜中に押しかけたことを、奥方は怒っているのではないのか?」

「いや、アンジェリカは、そのくらいで機嫌の悪さを出す女じゃないぞ…」

そう言いつつも、トマーゾも不安そうです。



なぜか、アンジェリカ夫人は、ものすごく機嫌が悪そうなのです。

マルチェロは知らないことですが、アンジェリカ夫人は、夜中に勝手に人の家に押しかけてこられることにはとうに慣れっこになっているので、そのくらいで機嫌が悪くなるはずはないのですが。


「気のせいっスよ、気のせい!!」

一人上機嫌なエステバンは、マルチェロにぺったりとくっついて、非常にご機嫌です。


「ほら、なんつーの?運命の出会いってヤツっスよ。一目見た瞬間、オレ、ビビっと来たね!!」

「…よく分からないのですが…」

エステバンは、よく見れば薬指に結婚指輪をしているので、れっきとした妻帯者のようですが(トマーゾが言うには、子どももいるそうです)傍目には”そういう趣味の人”と勘違いされそうな台詞を連呼しまくります。一体、ナニが彼をそこまでマルチェロにひきつけるのかは分かりませんが、正直マルチェロは、今すぐにでも帰りたい気持ちで一杯でした。





マルチェロは、時計でかなりいい時間になったのを確認しました。




「いや、大分と楽しんだが、明日も仕事がある。ここで失礼させて頂こうかな。」

「えー、もう帰るんスか?」

エステバンは不満そうでしたが、


「そうだな、仕事に差し支えるしな。」

トマーゾは、うまいこと賛同してくれました。








ぴんぽーん





「いえーい、ソフィーちゃん、さんじょー!!エステバーン♪お酒買って来たよ、アタシってば気が効くでしょー!?エラいー!?」

なんだかアタマの弱そうな台詞と共に、ギャル系キャバクラ嬢まんまな女性が入ってきました。



「エステバンの嫁さんなんだ。」

「…」

マルチェロは、「なんて似たもの夫婦なんだ」とは思いましたが、口には出しませんでした。




「マルチェロさん、ほら、オレのレコも酒買って来たつーし、もうちっと…」

エステバンが言いかけた時でした。




ソフィーの視線が、マルチェロに向きました。








ぶうっんっ!!

風を切るすさまじい轟音と共に、何かが吹っ飛んできました。

とっさに身をよじって避けたマルチェロの後ろで、





どがちゃーん

ガラスの割れる音がしました。






「マルチェロ!?」

マルチェロが後ろを振り向くと、転がっているのは、第三のビールの500ml缶でした。


ええ、マルチェロほどの反射神経がない人間なら、まともに顔面にくらうほどのスピードで投げつけたのはもちろん






「ソフィー!!てめェっ!!いきなりマルチェロさんにナニしやがるっ!!!!」


ですが、ソフィーは再び缶(レモンチューハイでした)を掴むと、ぶん投げて来ました。

なかなか素晴らしいコントロールと威力で、再び、マルチェロの顔面を狙って、です。




「ソフィーさんっ!!一体、ナニが起こったんだ!?止めてくれっ!!」

ですが、ソフィーは、ものすごい怒りの形相で、その手を止めません。





「一体、何事なの?」

その音に驚いたアンジェリカ夫人が飛び出て来ました。


「…とりあえず、アタシ、あのデコい人に酷い目に遇わされた気がするの。止めないで、アンジェちゃん。」



「良かった、アンジェリカ、ソフィーさんを止めてくれっ!!」


その言葉を聞いたアンジェリカ夫人は、夫の言葉はもちろん耳に入ったのでしょうが、ソフィーの言葉に頷きました。



「そうね、わたしもそんな気がするわ。存分にやっちゃって。」

「もちろんっ!!」







「お父さん?お母さん!?なんなの?」

「頼む、トマージアっ!!ママとソフィーさんを止めてくれっ!!」

轟音に起されたトマーゾの長女が起きてきた時には、既にリビングは、空爆でもされたかのような惨状を呈していましたと、さ。
















「たっだいまー、グッモーニンっ!!兄貴ー♪」

カリスマホスト・アンジェロこと、ククールが、仕事を終えて帰宅して目にしたものは、もうすぐ出勤時間だというのに、憔悴しきった兄の姿でした。




「どしたの、兄貴。マワされたみてーに疲れ果てちゃって…」

「…黙れ。」



りろりろりろーん

マルチェロの携帯がメール着信音を放ちます。


マルチェロがのろのろとメールをチェックすると、「エステバン」と登録された宛名からのメールはこうでした。







ちース、グッモーニン!!マルチェロさん。

昨晩はなんつーか、色々あったケド、つまりは”アツい夜”を過ごしたってコトっスよね。

どーぞ、これからも仲良くして下さいっスね。








「兄貴、誰、この男?オレとゆー者がありながら、まさか浮気!?」

「黙れというのが分からんのか、愚弟っ!!」

「ひでー、ひでーよっ!!!」




事実はかなりややこやしいので、今更説明する気力も無いマルチェロでありました。













そして、それからマルチェロの携帯には、愚弟ククールと、エステバンからのメールが、やたらと頻繁に入るようになりましたと、さ。


2008/6/27


メノさまのリク「幸せなトマーゾ」であります。
一体どこがトマーゾが幸せかって?そりゃ、奥さんと子どもたちがいて、みんな健康が家族仲が良く、友達たちとも元気で仲良くって、サイコーに幸せですよね!?
ねっ!?

と、リクに応えたことにして、リクを消化したことにします。


一体なにが自業自得か分からなかった方は、とりあえず童貞聖者シリーズを全編読み返してみると良いかと思われます。
前世?の報いが返ってきただけの話で…つーか、この程度で済んだことに、彼は女神様に感謝しなければなりませんね。

マルチェロは、メールは本当に用件がある時にしか使わない人な気がしますが、ククールは仕事でも活用するし、マルチェロにもかなり頻繁にメールを送って、無視されてるといいと思います。

「毎度毎度、下らんメールを送って寄越して、一体なんのつもりだ?」

「コミュニケーション♪」

とかいう会話が交わされているといい感じ。


そしてエステバン夫婦は、多分、絶対にメールが大好きだと思います。
ソフィーちゃんはヒマな専業主婦なので、無駄にエステバンにメールを送っては

「仕事中なんだよ、このクソ女」

と怒られては

「返事くれないなんて、アタシのコト愛してないんだー」

とケンカしてると思いますが、そんなエステバンも、かなり無駄なメールを送っては、返信がないとスネて怒ってるといいと思います。

いや、エストマニアの皆様「メルアドをマルチェロにねだるエステバン」って、可愛いと思いませんか? inserted by FC2 system