こんな現代版兄貴は…ちょっとイイ
ついにやってしまった、現代版パラレル兄弟話。
とりあえずアホモで、DQ世界よりもちいっとは仲良し?出来る兄弟にしたいなあ…
第十二話 「FROM 愚弟」
《設定》
お兄さまのお名前はマルチェロ(都内某マンモス私大文学部常勤講師)。
弟さまのお名前はククール(一応、そこの学生。一応、学部は経営学部)。
ごく普通の兄弟の二人(弟はしかし、歌舞伎町で源氏名アンジェロで通用する、カリスマホストでもあります)、
ごく普通の家(弟が“優しいお客にプレゼントされた”億ション)で、
ごく普通の同居(火事でアパートを焼け出されてしまった兄を、弟がムリヤリ引きずり込んだ)をしました。
しかし、ただ一つ、普通でなかったのは…
弟さまは、お兄さまに“恋”をしていたのです♪
拙サイト常連の寺田雪乃さまへ幻の10000hit記念作品
でもあります。
「寒いので甘くてあったかくていちゃいちゃ」
とのリクですので…頑張りました
「…」
マルチェロは黙って、ククールの頭に手を伸ばしました。
ククールは、キスを求められたと思い、為すがままにされます。
「ククール…」
甘い囁きに、ククールはうっとりとして、目を閉じました…
ごいんっ!!
「いてえっ!!」
いきなり強烈な頭突きをくらい、ククールは思わず身を起こしました。
即座にマルチェロは身をかわし、ククールの体の下から逃れます。
「まったく…なんで私が自宅で、貴様相手に貞操の危機を感じねばならんのだ…」
即座にズボンを穿くと、マルチェロはシャツの前を塞ぎました。
「な…ちょい、ちょい待ち、兄貴。」
「私には何も待つことなどない!!」
「フツーはここまで来たら、サイゴまでイクのがレイギってモンだろ?」
「そんな珍奇で不道徳な礼儀作法は、この国にはない!!」
「じゃ、オレの充填完了な44マグナムくんの照準は、どこに合わせたらいいのさー!?」
言葉どおり、若いだけあって…そして“夜のプリンス”の異名をとるだけあって、ビンビンな代物を見て、マルチェロは不愉快そうに、黙ってトイレを指差しました。
じゃー
ごぼごぼこぼ
トイレの流す音が響く頃には、マルチェロはとうに完璧に服を調えていました。
「兄貴のバカ…」
“カネになるナイスバディ”を惜しげもなく晒し、元気のなくなった下半身と面持ちで、彼は恨めしげに呟きます。
「バカにバカと言われる筋合いはない。」
冷たく言い放つマルチェロに、ククールは言いました。
「やっぱり兄貴…オレの事嫌いなんだ…だからオレとセックスしたくないんだ…オレが生まれたから、兄貴が親父に捨てられたことで、オレを恨んでるんだ…」
「…」
マルチェロの顔が、とびきり不機嫌な色に染まりました。
「…葬式の後、親戚のおばちゃんに聞いたよ、全部。兄貴と、兄貴のお母さん…もうそん時は亡くなってたんだっけ…は、オレと親父を恨んで当然だって…」
「…」
ククールが話し続けるのを、マルチェロはむっつりと黙り込んで聞き続けます。
二人の間に、当然のように横たわっていたけれども、二人とも怖くて触れられなかった溝が、二人の間に滔々と音を立てて流れていきました。
そして
「いい加減にしろ!!ククール!!」
マルチェロはついに怒鳴りつけて、ククールの言葉を強制的にやめさせました。
「だから兄貴はオレを嫌う…」
「私が貴様を嫌うのは、貴様がバカでロクデナシだからだっ!!」
「…え?」
ククールは思わず、兄の顔を確認しました。
「恨む?貴様の父親の事は確かに骨の髄まで憎いが、貴様を恨む筋合いがどこにある?それとも貴様は、生まれたばかりでもう今のようにぺらぺらとよく動く舌を持っていて、愛人の子の私を追い出すように貴様の父親を唆したとでも言うのか?フン…そうだとしたら、ちゃんと貴様の事を恨んでやるっ!!」
「兄貴…」
ククールは、なんともいいかねる弛緩した表情で、呆然と兄を見上げました。
「兄貴は…兄貴はオレを、だからそんなに邪険にするんだと思ってた…だから嫌うんだと思ってた…オレが兄貴に苦労させたから…」
「やかましい!!貴様はいつから私の人生を左右できるほどの影響力を持ちえたというのだ?確かに私の人生は、なかなか苦難に満ちた半生を持ってはいるが…だからと言って、貴様を恨んだとしたら、それは逆恨みというものだ…」
マルチェロの表情が、ククールに対する感情を無理に押し隠すように、きゅっと引き締められました。
「母子家庭で苛められたのも!学のない母が水商売で生活を支えたのも!そうしてまた、母親がホステスだということで苛められたのも!高校在学中に母親が車に轢かれて死に、しかもそれが客とのトラブルで殺された疑いがあったのも!なのに警察は水商売の女とみるやまともに捜査せずに轢き逃げ事件と軽く処理されたのも!学業の継続すら覚束なくなり、高校中退を本気で覚悟したのもっ!!」
「兄貴…ホントに苦労してんだね…てか、もしかして水商売大嫌いなのって、それが原因?」
「別に貴様のせいではないわっ!!」
言い切ったマルチェロは、そのまま押し黙りました。
ククールも、黙って兄の顔を見つめました。
マルチェロは、弟の視線に耐え切れず、つい、と視線をずらしました。
「確かに仕事でイライラしていたとはいえ、残りものぐらいの事で怒鳴りつけた私も大人気なかった…」
そして、テーブルの上にそのまま放置されていた高菜の煮つけと、筑前煮をレンジに入れ、スタートボタンを押しました。
「だからと言って、こんな悪い冗談を仕掛けた貴様は、もっと悪いと私は思うがな…」
ごうーん
レンジの回る音の中、マルチェロはちょっと気恥ずかしい気持ちを隠しきれない小さな声でククールに言いました。
「まあ私とお前は…兄弟、なのだ。オカズの一品な二品、分けてやってもいいかもしれんな…」
「兄貴…」
ククールは感極まったように兄を呼ぶと、相変わらず素っ裸でマルチェロに近づきました。
「兄貴…」
「…なんだ?」
「オレ、兄貴からその言葉を聞きたくて、前世から待ってた気がするよ…」
マルチェロは、再び黙りました。
ククールは、兄に近づくと、“後家殺し”の異名をとる殺人スマイルを兄に向けました、
「オレと兄貴って、前世からの運命で結ばれ…」
「生憎だが、私は運命も前世も信じん。」
「いや、兄貴。そうクールに切り捨てないでよ。女のコだったら、“運命”とか“前世”とか言い出した瞬間、ぽーってなって、オレの腕の中な寸法…」
「私は貴様の客の女ではない。貴様との因縁など、よしんばあったしても今生だけでたくさんだ。」
ククールは、つまらなさそうな顔になると、言いました。
「オレ、そこで兄貴をぽーっとさせて、ガバっとイッて、今座こそ兄貴に、痛くないどころか快楽エクスタシーな処女喪失をプレゼントするつもりで、下半身がいっぱい…」
言葉どおり、さすが若いだけあって回復の早い下半身を、マルチェロは微妙にひきつった顔で見て、そして、言いました。
「ククール…私が空手の有段者だと言うことを、その顔面で確認したいのか?」
「…商売道具だから…」
ククールは、丁重にお断りして、そして
チーン
という音がして温めなおされたオカズを取り出しました。
「いいから先に服を着ろ!!」
相変わらず鋭い舌鋒ながら、マルチェロはご飯をよそってくれました。
公民館の一室で、マルチェロは、手書きの紙芝居を並べなおしながらニコニコしている小柄な老人と相対していました。
「ご盛況のようでなによりです、オディロ教授。」
「おうおうマルチェロ、ワシはもう教授ではないよ。」
「しかし、本学の名誉教授でいらっしゃいますから。」
「まったく、アカデミズムの世界に住んどる奴らは、肩書きにうるさくていかんのう…その点、子どもたちは良いぞ。“ただのジジイ”として対してくれるからの。面白ければ面白い、つまらなければつまらない、反応が分かりやすくて良いもんじゃ。」
「ご専門の御伽草子を生かされて、子どもたちに昔話を説き、日本の文化に対する関心を深めんとする、そのお志、まことに頭が下がります。」
「そんな立派なものではないよ、マルチェロ。単に、小難しい論文を書くよりは、子どもたちに紙芝居を見せてやって、嬉しそうな顔をしてもらうのが楽しいだけじゃ。昨今の子どもはテレビばっか見て、昔話の一つも知らんとよく言われるが…なあに、聞かせてやれば、面白いモンは面白いのじゃよ。」
「いずれその子どもたちの中から、研究者が育ってくれると良いですね。」
「うむうむ…残念ながら、お前ほど先行き楽しみな子はおらんがのう…この間の大学紀要の論文読んだぞ。ワシの退官論文集より、さらに進歩しておる。えらいえらい。」
「オディロ教授にお褒めいただけるとは…恐縮です。」
「お前は本当に出来の良い弟子じゃったからの。これならワシも安心して、あの世に旅立てるというものじゃ。」
オディロの言葉に、マルチェロは本気で色を為しました。
「不吉な仰せです。オディロ教授には、喜寿論文集も、傘寿論文集も、白寿論文集も出して頂かなくては。私の論文など、載せる場所がございません!!」
「やれやれ…ワシはまだ働かされるのか…」
とんとん
紙芝居をそろえ終わり、オディロはにこにこと笑いながら、話題を変えました。
「で?ククールとは仲良くしておるか?」
「…まずまずです…」
「おやおや、まずまずとはいかんのう…お前はお兄ちゃんなのじゃ。弟には優しくしてやらねばならんよ。」
「ヤツがバカでロクデナシでなければ、もっと兄らしく振舞います!」
少し駄々っ子のような口調のマルチェロに、オディロは答えました。
「いいじゃないかのう、マルチェロ。弟なんて、そのくらいが一番可愛いモンじゃ。そもそも、あの子は昔から可愛らしかったし、今も可愛らしかろう?」
「…見た目は、確かに。」
オディロは、照れ隠しなのか、スネたような表情を見せるマルチェロにか、それとも違うのか、呟くようにいいました。
「良かったのう…良かったのう…今度こそ兄弟が仲良く出来て、本当に良かったのう…」
オディロ教授に別れを告げ、外に出たマルチェロがメールを確認すると、受信メールがありました。
FROM 愚弟 |
マイラバーの兄貴ー♪お仕事頑張ってるー?
オレさ、兄貴が朝飯作ってくれたのが嬉しくてさ…だって、兄貴ってば、いっつも一人分しか作んなかったじゃん。オレいっつも一人でパン齧っててさ…ま、朝飯食わねー時も多かったけど、コレってオレが夜勤だから仕方なくない?
でも、確かに朝ごはん食べると仕事カイチョーだわ。
ほら、オレがあんまり爽やかな笑顔ふりまくからさ、お客さんが聞く訳よ。
「もしかしてアンジェロ、彼女とか出来たの?」
いやー、商売上
「いませーん♪募集中でーす」
って言うのがレイギなんだけどさ、オレ、ついつい口滑らしそうになるんだって。
「オレさー、実はご飯作ってくれるヒトとドーセーしてんだー♪」
いやー、言っちまったら大変だね。
オレ、人気ありすぎるから、血の雨が降るね。
夜道でうっかり刺されたりしたら、兄貴ってば泣いちゃうから、愛する兄貴を泣かさないために、オレ、防弾チョッキでも買おうかな。アレってやっぱ、アメ村とかで売ってんのかな?こんど、休みの日に行って来ようっと。
じゃ、今晩もご飯楽しみにしてまーす♪
んで、その後にはで・ざ・あ・と☆がついてきたら嬉しいな♪
もちろん、兄貴のバージンね♪
可愛い弟の、ささやかにかーいーおねだりでした♪ |
「どこまでバカなんだ、あのアホはっ!!」
マルチェロは思わず携帯電話に向かって怒鳴ると、返信ボタンを押してメールを打ち始めました。
TO 愚弟 |
学生の身として、芳しからぬ副業に精を出しているらしき愚弟へ。
お前は“痴情のもつれ”というものをあまりに軽く考えているようだが、アレは冗談抜きで殺伐とするものなのだ。
お前は、日本の殺人事件の八割が、金銭かまたは痴情が原因によって為されていると知らんな?
だいたい、防弾チョッキを着ても、あのケプラー素材は弾は防いでも、刃物は防がん。そして、女性が凶器に用いることが一番多いのは、手軽入手可能であり、かつ殺傷能力の高い包丁であることがほとんどだ。自己防衛を図るなら、ちゃんとデータを入手してからにしろ。
そもそも、うっかり身内が不慮の死を遂げようものなら、残されたものがどれだけ迷惑するか分かっているのか?日本の警察など、ホストの一人や二人の死など、なにほどの捜査もかけんぞ?水商売に従事するとは、公権力からの保護が削減されるということを意味するのだ。
お前の死体を確認させられた上に、葬式の手配という手間と、金まで出させる気か、愚か者!
食事は残しておいてやるから、とっとと帰って来い!!
それと、わが国の風習に、食後のデザートなどというものはそもそも存在しない。
欲しくば、自分で買って帰れ!! |
送信して、そしてマルチェロは思いました。
「…ククールのメールに返信するなど、もしかして初めてか…?」
送信完了
の文字が浮かんだ携帯の画面を見て、そしてマルチェロは思いました。
健康で、定職があり、貯金も出来、住む場所もあり、彼女はいないけれども、まあだからと言って耐え難いほど苦痛というわけでもなく、
そして
家族がいる
「…まあ…幸せ…か、な。」
そして、一応、ささやかな不平不満を付け加えました。
「バカでロクデナシの弟だがな…」
でも、フォローも自分で加えました。
「ま、家族には違いない…」
終り
2006/12/17
という訳で、一応10001hit記念作品は終わり…です、雪乃さま。
おそらく「ゑろ」というリクからご期待であった代物はナシですが、その代わり、DQ世界の兄弟には有得ないくらい甘あまにしてみました。
はい、「弱い兄貴」とは「弟に意外と弱い兄貴」のコトだったんですね(笑)
いくらモラルハザードの激しい昨今の情勢とはいえ、兄を押し倒しにかかった弟の行為を「冗談」で済ませていいものかとか、いろいろと大きな疑問は残りますが、きっとオディロ教授の望むとおり、二人仲良くケンカしつつ過ごしてくれるんじゃないかなー…ソレって、本当に倫理上許される範囲で収まるのか?ってカンジも残りますが。
この世界では、彼女を持つことも、結婚することも望んでるらしき兄貴…でも、ククールがいる限り無理だと思うよ?
現代版兄貴の職業設定は、割といろいろ悩みました。
よそさまではビジネスマン兄貴が多いようでしたが、ビジネス分かんないし…
つーワケで、割と最後まで候補に残ったのが「防衛大学校教官マルチェロと、大学校生ククール」
兄貴はまあOK範囲だったんですが、現代ククはどう考えても、そんなトコ入学しなさそうなのでボツにしました。
が、今思えば、ククールなら兄貴がいるトコなら、下水処理場だって入っていくだろうな…ううん、ちょいと惜しい