斬撃。
あたしは愛用のブロードソードでそれを受け止め、その勢いを借りて同じ位置に斬撃を返す。
ひゅっ。
口笛のような、音。
受けられた。
そう思った直後に、ジョカが僅かに腰を低めた。
「ちいいいっ!!」
ギリギリ、払い落すのが間に合う。
「いい剣ね。」
「シュヴァイツァってんだ。俺くらいの腕でねえと、この剣も映えねえだろ?」
全く、ホントいい剣だわ。
まともに食らってたら、気持ちよく潮風が吹き抜ける大きな穴が体に空いてたわよ。
あたしも腰を下げる。
じりじりと間合いを詰めると、ジョカもそれに応じて後退する。
ああクソ、クソッタレのくせに腕は確かだわ。場数も踏んでる。
でも、このレベッカ・ガートランドさまを甘く見ないで欲しいわね。
足でいっきに反動をつけると、あたしは真上からブロードソードをジョカに叩きつけた。
ジョカはシュヴァイツァを払ったけど、よける間はなかった。
「…クソっ!!」
ホントなら真っ二つパターンなのに。これだからいい剣ってヤなのよね。
ジョカが小さな付きを繰り出す。
あたしは払い続けようとするけど、最後を避けそこなった。
けど、そのまま今度は斬撃を命中させてやったわよ。
「どうよ、クソったれ!」
ジョカは返答の代わりに低く笑う。
「興奮させてくれるぜ…」
「なに…」
「女ってのは、こうでなきゃいけねえなっ!!」
大きな一撃。
よけた先の雨どいがスッ飛んだ。
「チッ、なんて切れ味…」
ムカつくけど、強いわ、こいつ。
まあいいわ、だったらシュヴァイツァを振り回せない狭い場所に移動するだけの話よ。
あたしは防ぎながら、馬小屋らしい場所まで後退する。
チラチラと頼りない灯りの中、ブロードソードを鞘に収め、代わりにダガーを手にする。
「てめえから袋小路に入り込むたぁな!!」
酒の勢いか戦闘の興奮かなんかで、そのままシュヴァイツァ振り回してくんないかと一瞬期待したけど、残念ながらそこまでバカじゃなかった。
ジョカはシュヴァイツァを鞘に収めると、あたしと同じくダガーを抜き放つ。
クソったれ、状況判断的確じゃないのよ。
しばらく、チラチラする灯りを頼りにダガーでのやり取りが続いたけど、ちょいと勝負を焦った隙に、あたしはダガーを弾き飛ばされた。
根性でジョカのダガーも弾いてやったけど、その間隙を縫って上背のあるこいつの上からの攻撃を避け損ねた。
薄い敷藁のお陰で後頭部直撃は免れたものの、気付きゃ目の前にションベン色の髪が目の前にあったって寸法よ。
サイアクっ!!
「ようやく『お楽しみの時間』と洒落込めたな、クソ女。」
「…」
一旦マウントポジション取られると、よっぽどの力の差がない限り撥ね退けられない。
クソったれ、村じゃ千年に一度の怪力娘と名を取ったあたしだってのに!!
「…大人しく、あんたのお楽しみの時間に『付き合』ったら、満足してくれる?」
フッ
頼りない灯りで、ジョカが口の端で笑ったのが見えた。
ガッ!!
あたしの視界で火花がいくつかトんだ。
「今更、遅ぇよっ!!」
今度は、叩きつけられる拳がはっきり見えた。
そして、あたしの股の間に膝が入ってくんのも。
「大人しくしてろたぁ言わねえよ。いや、全力で抵抗しろっ!!」
べりっ!!
ジョカの左手が、あたしの服を引き裂いた。
「さもなきゃ犯す楽しみがねえってもんだっ!!」
そのまま左手がズボンを押し下げようとする。
「…ひどい…」
「は?」
「…そんなひどいこと、しないで…」
「何を今更。」
ジョカの手は止まらない。
あたしは左手を顔に当てる。
「せめて、あんまり痛いこと、しないで。優しくして。」
「へえ…そうかい、じゃあ…」
ジョカの腰が、僅かに浮いた。
クソったれの蒼灰色の瞳が、間抜けに見開かれた。
ホント、男ってここの一撃でカタが付くわね。
「ホント、男ってバカねっ!あたしのタマ潰しは天下一品なのよっ!!」
あたしはお返しに、ジョカの顔面に拳を叩きいれてやった。
さて、こうしちゃいられないわ。
とりあえず、この場は撤退しないと。
「覚えときなっ!!女は嘘が男より巧いのよっ!!」
意趣返しに叫ぶと、あたしは馬小屋を駆け出た。
2010/8/10
意外とガチの戦闘シーンになった。
誰かを悪役にするには、女を殴らせリゃいいと言いますが、確かにその通りです。ジョカが立派な悪役になりました。
ラストがちと間抜けですが。
意外とジョカは女に殊勝に出られると弱いのかもしれません。
二人の武器
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目次
レベッカ ブロードソード 攻撃力20(Aランク)
ジョカ シュヴァイツァ 攻撃力30(☆ランク)
レベッカが武器武器言うほど違いすぎる訳でもないです。(まあ1.5倍あったら十分だという意見もありますが)
ついでに
ダカー 攻撃力5(Dランク)
近接戦闘用の武器なので、攻撃力は低いです。ただ、狭いところで戦うには便利。ついでに寝技を使う時にも便利です。