救世主の名を持つ悪魔殺しの物語

10-5 オランの娼婦 ヴェロニカが語る話









「あぁら、リオーノ。ご無沙汰じゃなぁい?」

私に気付きもしなかったくせに、オレンジ頭の洒落オトコは私の声を聞くなり、気安い笑みを浮かべる。


「会いたかったぜ、ヴェロニカ。」

大袈裟な抱擁。


「ここで出会えたのも運命ってモンだ。」

で、キス。


「ええ、私、信心深いから神さまのお引き合わせは信じるのよぉ。」

「愛してるぜ、敬虔なカワい子ちゃん。今はどこの店にいるんだい?」

「ちょっとランクアップしたのよ。店も、お値段もね。」

私はリオーノの服と、ついでに金の入ってそうな懐に指を這わせる。


「まっ、ステキ♪」

リオーノの呆れたような笑いがする。


「相変わらず抜け目ねえな、ヴェロニカ。いいぜ、今日は懐あったかいんでね。言い値でアガってやるよ。」

「まぁん、私も愛してるわ、オレンジの髪の色男。今日は今までの人生で一番アツい夜にしたげるわ。」

そして私は、アッツいキスをしてやった。

そりゃもう、ぶちゅっと。




そして、私とリオーノが店にシケ込もうとしたその時だった。

ズカズカズカっ!!

早足で何かが近づいた。


!!

リオーノの手が乱暴に動いて、私をその背の後ろにする。

庇われたんだと気付いた時にゃ、人影がリオーノの前にあった。


「やあお兄さん、ちょっとだけお久しぶりね。」

てっきり物盗りかと思ったら、女の声だった。


「…あんた、こないだの賞金稼ぎ。」

リオーノの声は意外そうではあったけど、警戒の色はあんまりない。

顔見知り?

そう声をかけようとしたけど、その女の方が早かった。


「今からお楽しみのようね。姉さん、そこの店の女?悪いけど、『あたしもまぜて』もらうわね。」

「…は?」

リオーノがマヌケな声を上げた時には、その女はリオーノの引きずって店に入っちまってた。


「正規料金は払うんだから、持ち込みもオッケーでしょ?」

強引な女だわ。何者かしら。




「…で、オレの顔知ってたから、とりあえずの避難先に選ばれたってワケかい?よくやるぜ。」

超強引な銀髪の賞金稼ぎレベッカからの事情を聞いて、リオーノは呆れたように天を仰いだ。


「仕方ないじゃない、引き裂かれた服のまんまこの街の夜にうろつけって言うの?か弱い女に向かってよく言えたものね。」

「『か弱い女』は、ウルグ・アリ狩ろうとしねえし、ジョカとタイマンしねえし、ましてやその顔面に拳を入れないと思うね。」

レベッカは大きく舌打ちした。


「ったく、今日は体調悪かったのよ。これだからあの日ってキライよ…こっちの話よ。ところでヴェロニカ姉さん?」

レベッカは、リオーノに対するのより少し改まった顔と口調になった。


「あなたの商売の邪魔する気はないのよ、でも結果的に邪魔しちゃってゴメンなさいね。ところでこの店、服の一つも置いてない?良ければ売って欲しいんだけど、支払いは後日で。ゴメンね、今オケラなのよ。」

なんだ、強引だけど意外と礼儀知ってるじゃない。


「男モノの古いで良かったらあるわ。いいのよ、金なんて。」

私はリオーノを見た。


「リオーノが払ってくれるわ。」

「なんでオレなんだよ?」

レベッカがすかさず言葉を入れる。


「あらあんた見かけによらずいい人ね。いいわ、ウルグ・アリの件はこれでチャラにしたげる。」

「だから、ウルグ・アリにオレは関係ないっての!」

リオーノはお約束のようにそう言ってから、一呼吸置いた。


「って言いたいトコだがね、ヴェロニカ、勘定に付けといてくんな。」

レベッカは意外そうな顔をした。


「あらリオーノ、本当に親切ね。」

「女には親切にすることにしてんのさ…あんたみたいなのでもね。」

「後半は聞かなかったことにしといたげるわ。」

私が服を取ってくると、レベッカは手早く着替えて剣を取った。


「おや、行っちまうのかい?ここからは『3人でお楽しみ』の時間だと思ったけどね。」

レベッカは悠然と無視して、私に声をかけた。


「ヴェロニカ姉さん、じゃあ後はお仕事がんばってね。」

「もう行っちゃうのね。女にしとくには勿体ない『いい男』だったのに。また寄ってね。」

「そうね、私が男だったら姉さんを馴染みにしてるわ。じゃあまた。」

「おいおい、男一人に女二人の環境で女どうしでイチャつかないで欲しいね。」

「悪いけど、あたし、そんじょそこらの男より女にモテるのよ。」

レベッカは立ち去りかけて、振り向いた。


「おっといけない。」

マントがリオーノに投げられた。


「それ、あんたの提督に返しといて。借りっぱなしはキライなの。」

「これ、提督のマントかい?なんであんたが…」

「じゃあね、あんたたちが高額の賞金首にならないことを祈ってるわ。」




「面白い知り合いが増えたのね、リオーノ。」

もう商売口調に今更戻すのもバカらしいから、いつも通りの口調でそう聞く。


「はは、確かにな。愉快な知り合いは大分と増えたぜ。」

リオーノはそのまま沈黙する。

私はそんなリオーノをそのままにしておいてやる。

昔からそう。

いくらでも調子の良い言葉は出てくるくせに、リオーノは私みたいな商売女相手でもうっかりと口を滑らさない。


リオーノが、そんな私の様子に気付いたように悪戯っぽく笑う。


「ま、しかし、ジョカの野郎が女に顔殴られたってのはお笑い草だ。」

「お仲間じゃないの?同じアルジェ海賊なんでしょ?」

ふ。

リオーノは一笑みだけを漏らした。


「でも、私としては嬉しくない話ね。」

私はそれとなく話題を変える。

「どうしてだい?」

リオーノも私に同調する。


「そんな顔じゃ、今回は来てくれなさそうだもの。」

「まったく、オレ、あいつと穴兄弟にもなっちまったのかよ。やめてくれよ、萎えちまうよ。」

リオーノは仰々しいまでに大袈裟に絶望を表現して見せた。




そう。

「も」ね。




「じゃ、今晩は何もしない?」

「そこを燃やしてくれんだよな?」

「そうね、昔とは違うわよ。腰立たなくなっても知らないから。」


リオーノは、返事代わりに上手なキスで返した。





2010/8/17



リオーノは「女好き」と書かれている割に、アンナ以外の女が出てこないから本当に女好きなのかよく分かりませんが、とりあえずエッチは上手です!!(太字で強調してみた)
口説き台詞や、巧みなピロートークがとても上手だと思ってます。(の割に、レベッカは動じてないね。口説く気がそもそもなかったから?)
ジョカは派手には遊んでそうですが、そういうのは上手なのかどうか…攻撃衝動が強すぎる人なので、自分が満足すりゃそれでいいような気もするし、でも意外と美人にゃ優しいのでそうじゃない気もするし…すいません、もう少し考えます。

そして、遊ぶ場所が同じだと、そういう「兄弟」もたくさんいるでしょうね。
ええ、「も」です。




リオーノとレベッカはどこまで知り合いか?(ややネタバレ)

   

目次









































ゲームの中で直接ことばを交わしてるのは、ウルグ・アリ戦後のセウタの

リオーノ「ははーん、こいつ賞金稼ぎか。」
レベッカ「『ははーん』じゃないわよ。あんたらね、しらばっくれるのもいいかげんにしなさいよ!」

のみです。直後にアンナが「レベッカ」と呼びかけているし、そもそもリオーノとアンナは古馴染みなので名前くらいは聞いたでしょうが、この程度の知り合いです。

が、シナリオ後半で
レベッカ「あの男の言ったとおりね、やっぱりここに来た。」

サルヴァドル「…さっき『あの男』と言っていたな。あんた、オレがここに来るのを知ってたな。いったい誰に聞いた?」

とあるので、やっぱりその後もどこで会って、依頼してるんですよね。
ううん、このあとサルヴァドルはさらっと行ってしまいますが、せっかくの機会だったんだからレベッカに詳しい話聞けば良かったのに。

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