俺たちビゴール兄弟は、金にかけちゃ右に出る者はない。
そうだからこそ赤髭の旦那に会計を任されてるんで、その信頼に背いたことは一度もない。
「これはこれはサルヴァドルさん、お元気そうで。」
その台詞に「またか」という顔をされるのは慣れてる。
「まずは上納金を頂きやしょう。」
この間のオスマン艦隊戦で、赤髭の旦那からは金塊20枚って大盤振る舞いを受けてるからには、今回の上納金はたんまり頂けるだろう、そういう目算だが。
「金ならない。」
サルヴァドルさんはそう言った。
「そう言う奴らは多いですがね。サルヴァドルさん、こないだ赤髭の旦那から貰った金があるのは、アッシらが一番よぉく知ってやすぜ。まさか、この短期間で使っちまったとは言わねえでしょう…」
「使った。」
サルヴァドルさんは、平然と答えた。
さすがの俺も言葉を失っちまったが、それを受けてゴンザレスが言う。
「サルヴァドルさん、冗談言ってもらっちゃ困りやすね。ガレオン買ったってまだまだ残る金額ですぜ。見たところ船も乗り換えてない…」
ホーレスが割って入る。
「ロドリゲス、そしてゴンザレス。海賊の信義に賭けて嘘はつきはせん。若、じゃなくて提督は『本当にすっからかんに使っちまった』んだ。」
「…」
俺は思わず、ゴンザレスと顔を見合わせた。
俺たちもこの道のプロだ、人の面でものの真偽は見分けられる。
サルヴァドルさんもホーレスも、本当に嘘をついていない。
「心配するな。今は払えないけど、次はたんまり払ってやるさ。」
金塊20をすっからかんに使っちまったというのに、サルヴァドルさんはみじんも心配している顔じゃなかった。
「…はは、そうですかい。じゃあ、次はよろしくお願いしやすぜ。」
俺は皮肉を言うのも忘れてそう言った。
「しっかしまあ、アッシらも赤髭の旦那から会計任されて大分と長いですが、サルヴァドルさんほど気持ちよくスッカラカンになっちまった上に、平然としてる海賊は見たことありやせんぜ。」
ゴンザレスが、皮肉なんだが本気で感心したんだか、双子の俺でも判断しにくい口調で言う。
まったくだ。さすがお頭の息子、大物だ。
世間知らずかもしれねえが、下手にみみっちくまとまってない辺り、やっぱりこのお人はとんでもねえ英雄におなりになるかもしれねえ。
「それは提督を褒めてるのか?さもなきゃ嫌味か?」
ホーレスが苦渋に満ちた顔をしている。
サルヴァドルさんは大物かもしれねえが、俺はこの船の御目付にだけはなりたくねえな。
「もちろん褒めているんでさ。サルヴァドルさんはとんでもねえ器だと、ね。」
おっと、一番の目的を忘れそうだ。
「そんな大物のサルヴァドルさんに、今回はいい話を持ってきたんですよ。」
俺が言うと、ホーレスが顔をしかめる。
「生憎だが、今は地道に金を稼ぎ直さなきゃならん時だ。浮ついた『いい話』に乗ってる暇はねえ。」
「おっとそうですかい?海賊にゃ確かに金は必要だが、『悪名』ってのも大事なもんですぜ。あーあ、それにしても残念でしたねぇ、サルヴァドルさん。ウルグ・アリを倒しておけば、サルヴァドルさんの名前は一躍、有名になってたものを…」
サルヴァドルさんの目が変わった。
「何だと?」
喰いついたな。
「今回の『いい話』ってのは、そこを一気に名誉挽回できるいい話って事ですよ。」
ゴンザレスが言い終わると同時に、俺はかぶせた。
「女海賊カタリーナを、ご存じですかね?」
「…カタリーナ・エランツォか?極悪非道の赤毛の女海賊。」
「ええ、そいつです。ポルトガルを目の仇にしてる、ね。そして、西地中海をショバにしてるって点じゃ、我々にとっちゃあ商売敵だ。目障りで仕方がねえから何度も追い払おうとしたんですが、やけに強くて手に負えねえ。こいつのお陰でアッシらもずいぶん仕事しづらくなっちまった。」
「分かった、カタリーナだな。そいつはどこにいる?」
「提督、話に乗る気ですかい?」
「何だホーレス、ウルグ・アリで後れを取った悪名を取り戻すためだ。不満か?」
「…アルジェの旦那方がカタリーナと正面きって戦いやなさらねえのは、相手が女海賊だからって話でしてね。」
ホーレスは、俺とゴンザレスを見る。
「勝って当然、下手に苦戦したり、ましてや負けちまったりしたら、男が下がるにも程があるからな。で、何だ?そういう面倒を俺の若に押し付ける気か?」
やれやれ、本音を見抜かれちまったか。
確かにな、目障りじゃああるがシャルーク程本格的な敵でもねえ。そんな「女」と戦いたくねえってのは、旦那方の本音だろう。
「オレが負けるか!」
運の良いことに、サルヴァドルさんの方はまんまとひっかかってくれたらしい。
若いのは血気盛んでいいこった。
「ええ、サルヴァドルさんは負けやせんよ。でそのカタリーナですがね、プレット・ペローってケチな海賊をブチのめしてから、新大陸に向かったって話でさ。」
「カタリーナは、元イスパニアの海軍士官だったって話ですが、新大陸航路の美味さに元故国への義理は捨てる事にしたのかもしれやせんね。」
「とにかく、サルヴァドルさんにヤツを退治していただけるなら、アッシらも大助かりだ。お願いしやすぜ。」
「ああ、勿論だ。」
アルジェに戻り、オズワルドの旦那に事の経緯を報告すると、オズワルドの旦那も鼻白んだ。
「確かに大物だよ、サルヴァドルは。お頭も太っ腹でいらっしゃるから、血筋のようだね。」
「で、カタリーナの件もちゃんと。」
「ああご苦労、下がってくれ給え。」
「へえ。」
さって、サルヴァドルさんはカタリーナに勝てるかね?
2010/8/18
だから、新展開ですってば。
このゲームやってると、アメリカ大陸を「新大陸」と連呼する癖がついて困ります。
上納金のお話
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目次
サルヴァドル編では、ビゴール兄弟に上納金を納めると階級が上がります。
ゾルダード(兵士):初期
ゲレロ(戦士):金塊30
ベテラーノ(猛者):金塊60
バリエンテ(英雄):金塊120
バリエンテにならないと中盤のアレが起こらないのでせっせと金を吸い上げられることになりますが、ゲームになれてくると
金がすぐ溜まり過ぎて
名声競争のあたりでもうバリエンテになっていてしまいます。
気分的には、中盤のあいつ戦直前くらいになるのが盛り上がるんですが。
なので、名声競争後のジョカの台詞(「オレはバリエンテになってシャルーク戦に行く」サルヴァドルがバリエンテだとジョカもそうなる)の、非バリエンテVerの台詞が聞けません!!
確か「オレもバリエンテになって…」とか、そういう中身だったと思いますが。
誰か、教えてー!!