救世主の名を持つ悪魔殺しの物語

16-5 カミーロ・ステファーノが語る話









「オッス、俺があの有名なジェノヴァの大冒険家ピエトロ・コンティーだ。」

ピエトロが、相変わらずのアタマの悪い自己紹介をすると、金髪の男がたじろいだ。


「あ、あんた本物のピエトロかッ?」

青と茶、左右で色の違う目がせわしげにピエトロを見つめる。


「何だよ、アルの野郎から聞いてねえのか?しっかたねえなあ、あの銭ゲバオスマン人め。」

「ピエトロ、俺たちがスッ飛ばして来すぎたんだ。」

俺だって、詳しい話は聞いてないと俺はピエトロに言いたかった。

が、ここまで来てしまっては仕方がない。ピエトロが考えるより先に行動しちまう、典型的ラテン気質なのは今さらだ。

ともかく俺は、まだ目を白黒ならぬ青茶で点滅させてるオッドアイの金髪の男より、ターバンのムスリムの方が話が通じそうだと踏んでそいつに話しかけた。


「私は、カミーロ・ステファーノ。ピエトロ・コンティーの相棒であり、会計長も務めています。貴方がワルウェイクさん、ではなさそうですね。」

ターバンの男は、にっこりと頷き、金髪の男の方を示した。


「ええ、ウチのワルウェイク商会の取締役はこちら。オレは、営業部長兼、会計元締め兼…まあ、ここのナンバー2を勤めてます、アル・ファシと言います。以後よろしく。」

アル・ファシは、ヨーロッパ人のように握手を求めて来たんで俺は応じたが、どうも胡散臭さが拭えない。

リューベックにドイツ系の男が商会構えてるのは、まあいい。

なんでそいつと、オスマン人が仲良く経営してるんだ?

俺は、ヤコブ・ワルウェイクとアル・ファシがピエトロと礼儀会話してる間に、ワルウェイク商会の建物を見回す。

金があるのは事実みたいだが…


「で、俺の冒険家としての腕に用事があるのはあんたらかい?」

虚礼が大嫌いなピエトロは、一瞬で飽きたらしくそう言った。

まったくこのオヤジときたら、そろそろ礼儀作法の大切さくらい学べよ。

俺はピエトロに説教くれてやろうとしたが、アル・ファシはにこやかな笑みのまま、すぐにその「依頼人」とやらを呼び寄せた。




「提督、何と、かの有名な冒険家、ピエトロ・コンティー氏をお連れしやしたぜ。」

アル・ファシが「提督」と呼んだのは、貴公子のような顔立ちをした黒髪の男だった。青年、と言うべき年なんだろうが、それにしちゃまだまとった雰囲気が無垢だ。


「へえ、あの有名なピエトロ・コンティーさん…本物ですかい?」

黒い肌をした巨漢が、驚いた顔で問う。


「ああ、『超モノホン』の、ピエトロだ。驚いたかい?」

有名人になるのは鬱陶しいっていうくせに、それはそれとして冒険家として名高いことは嬉しいらしい単純なピエトロに、黒髪の少年が言った。


「ホーレス、こいつはそんなに有名人なのか?」

「…」

ピエトロが一気に不機嫌になった。


「提督…ピエトロ・コンティーですよ、ピエトロ。世界を踏破したって評判の…」

「評判じゃねえ、事実だ。ついでに言うと、2周は世界を回ってら!」

負けず嫌いのピエトロが言い返し、ついでに付け加える。


「俺の名を知らねえなんて、よっぽど世間知らずの坊ちゃんらしいな、あんた!」

「ピエトロ…」

何でお前はまた、そんなガキんちょ相手にムキになるんだと俺が言おうとした瞬間、


「オレは世間知らずなんかじゃないぞ!ましてや坊ちゃんじゃない!お前こそ、オレが誰だか知らないな。聞いて驚け…」

「若!」

「提督!」

黒い肌の男と、ド派手なオレンジの髪をした男が、二人がかりで黒髪の少年の口を押さえた。


「ウチの提督が大変失礼したね。いやあ、提督は大変立派な方なんだが、人の名前を覚えるのが大変苦手なお方でね。申し遅れました、オレはリオーノ。この提督の補佐役をしてる男さ。」

「アッシはホーレスでさ。この船の副長を務めておりやす。」


「こちらこそ、相棒が大変大人げない事を。改めまして、私はカミーロ・ステファーノ。ピエトロ・コンティーの相棒であり、会計長も務めています…」

「長ぇ話はキライなんだ、手っ取り早く行こうや。で、オレを雇いたいって話だが、何を探しに行けばいいんだ?黒髪の坊主。」

「サルヴァドルだっ!」

「提督。実はだね、あんたたちの腕を見込んで、セリカまで行って高性能の火薬を探してきてほしいんだ。もちろん、報酬は弾む…」

「…雇う?」

俺は、即座にピエトロの腕をひっつかむと、「ちょっと失礼」と、ドアの外まで引きずって行った。




「おいピエトロ!何の話だ!?俺は聞いてないぞ。」

「あ?話さなかったっけ?俺の腕を見込んで雇いたいヤツがいるから、リューベックに行くって。」

「聞いてねえよっ!!てかお前、フェレロ家との契約はどうするんだっ!?」

「えー、あー…ま、バイトってことで、ダメか?」

「駄目に決まってるだろ、このトリ頭!!フェレロ家から受けた大恩を忘れたかっ!!」


このバカオヤジピエトロは、冒険道楽の揚句に、父親が借金を残して死んでしまい、首が回らずのたれ死にかけてた所を、フェレロ家のクリス公爵夫人に救われて今に至ってる。フェレロ家がピエトロに、あり得ないくらい寛大な条件と破格の報酬を払ってくれていたからこそ、今のこいつの冒険家としての名声があるんだ。


「それなのに、お前さんってヤツぁ…」

俺がピエトロの喉首を締め上げようとすると、ピエトロは呻くような声をあげた。


「まあ待てよ、カミーロ。だって俺たちゃ金がねえんだから、仕方ねえだろ。」

「どこの誰が使いきったと思ってんだ!!」

「冒険家が、宵越しの金なんて持てるかよ…うっ、苦しい!!だって、公爵夫人から借金しようとしたらお前、烈火のごとく怒ったじゃねえか!でもよ、冒険する金がなきゃどうしようもねえだろ!!」

俺が、ピエトロをもう一段階締め上げてやろうとしたところで、手が割って入った。


「お取り込み中、大変申し訳ないんですがね。」

アル・ファシだった。


「ま、そちらにはそちらの事情ってモンがあるでしょうが、こちらもあなた方みてェな超一流の冒険家の手は是非欲しい!!というわけで、とりあえず契約うんぬんは置いといて、こっちの話を聞いて頂けやせんかね?」

「ああ、いいぜ。聞くだけならな。酒くらい出るだろ?こちとら、最近スカンピンで酒もロクに飲んでなくてよ。」

ピエトロは、俺の手からするりと抜け出すと、ぬけぬけとした表情で戻って行った。




「セリカに出来るだけ速く着きたい?なら、ルートはここだ!!」

ピエトロは、アイスランド、グリーンランド、新大陸北端を抜け、南西に下るルートを海図で一気に示して見せた。


「そんな航路があるのか!?」

サルヴァドルが目を輝かせる。


「あーあ、もちろんさ。世の船乗りたちがまだ通り抜けたことのねえ、セリカ・ジパング行きの最速ルートだ。」

ピエトロは自信満々に言うが、つまりはそれは俺たちもまだ通ったことがないという話だ。

確かに新大陸の北には海があるし、セリカとジパングの北東からは新大陸につながる海がある。とはいえ、その海たちが本当に繋がっているかは、「多分」としか言えない。

ピエトロ、なんでお前さんはそう自信満々に「最速ルート」なんて言いきれるんだ!?


「アイスランドにグリーンランドなら俺も行ったことはあるが、あそこらへんですらとんでもねえ寒さだ。それよりなお北に行けるなんて…」

熟練した船乗りらしいホーレスは、相当不審の目で、ピエトロの海図をためつ眺めつしている。


「あんたたちはセリカやジパングに行ったことがあるのか?」

サルヴァドルが、紺色の瞳をキラキラ輝かせて聞いてくる。

ピエトロは、さっき知らない呼ばわりされたことなんて忘れたみたいに、ガキんちょみてえに得意顔でそれに応える。


「で、本当にそんな火薬はあるのかい、カミーロ?」

リオーノが聞く。


「…私たちも、火薬を探しに行ったんじゃないんでね。ただ、火薬は元はセリカで発明されたって話です。ですから、そんな高性能な火薬があっても不思議じゃない。」


「ホーレス、リオーノ。オレもセリカに行くぞ!」

サルヴァドルが叫んだ。


「はあ!?」

ホーレスも叫ぶ。サルヴァドルとは違う語調で。


「おっ、そりゃいいな。カミーロ、雇われるんなら仁義に反するかもしれねえが、一緒に行くんなら別に構やしねえよな?」

「はあ!?」

俺も叫んだ。


「オレは北極海も見てみたい。いろいろ珍しいものがあるんだろ?」

「ああ、真っ白なクマとかいるぜ。一面白く広がる氷河の中の白いクマってのもオツなもんだぜ。」

「ジパングは本当に建物が金で出来てるのか?」

「それがなあ、別にンなこたねえんだよ。でも、ウワサでは全部金ぴかで出来てる建物が、ミヤコって場所にはあるらしくてな…」


「ちょっと待って下せえ!若!!そんな無茶な船旅、アッシは認めやせんよ!?」

「なんだ怖気づいたのか、ホーレス。ならホーレスは来なくていいぞ。」


「待て、ピエトロ!!お前、そんなヤバい航路に人連れてく気か!?」

「バカ言えよ、他に手段ねえんだ。それに、これなら契約違反にゃならねえよ。ちょーいと、同行者に案内料を頂くだけだ。」


「提督、オッサンが行かなくても、このリオーノ・アバンチュラがお伴しますよ。ご心配なく♪」

「誰がオッサンだ、このオレンジ頭!!…いえね、若。若が行く所なら、たとえ地獄の底だろうが、このホーレスはどこまでも付いて行きやすけどね、でもですよ、若、だからってセリカに行くのは…」


俺と、そしてホーレスが必死で説得したものの、結局はピエトロとサルヴァドルの


「でも、行く。」

を打ち破れやしなかった。


俺が、ホーレスというこの熟練した船乗りに、同じ匂いをかぎ取って好意を感じだしたころには、ハタ目で見ていたアル・ファシが冒険費用をはじき出し、ヤコブ・ワルウェイクがその手形を振り出していた。





2011/12/19



今回の語り手:カミーロ・ステファーノ
…大航海時代2の主人公の一人ピエトロ・コンティーの専用航海士。2開始時31。外伝の時は34。ジェノヴァの海商の息子で、会計技能持ち。ピエトロとは元からの知り合い。
PS版攻略本では3歳上設定だが、ゲームでは2つ下(やる気あんのか)。しかし、確かにゲーム上での言動では、カミーロの方が年上に見える…というより、ピエトロがガキすぎるだけなんだけど。
ダークブラウンだろう髪の色に、青系の瞳(たぶん)の持ち主。PS版攻略本には「ピエトロより美形」と書かれている。美形かどうかはアレだが、喉仏の張ったしっかりした顔の美男子には違いない。
借金で首の回らない悪友のピエトロのために、借金チャラ&船と航海用具と冒険資金完全給与という破格のスポンサーを探しだしてきた上に、ポルトガル商船隊勤務なんて地道な職をほっぽり出してまでピエトロのアブない冒険生活に付き合ってくれる、問答無用の良友。横紙破りのピエトロのツッコミ役。
彼は会計技能持ちなので、スループ一隻で冒険するなら、他に誰も雇う必要がない。心行くまで、ピエトロと二人きりの大冒険を楽しめる
…なんて美味しい設定のキャラなのを嫉妬されたのか、なんと外伝には登場しない!!
ううう…なぜだ…スタッテンすら登場するというのに、 どうしてカミーロが出てこないんだー!!
おのれ、ミランダ編めっ!!(どうやら、ミランダシナリオといろいろ矛盾するかららしい)

どうしても納得がいかないので、ぺにいもの話では出すことにした。
ちなみに、彼の家族の話はゲームでは登場しないが、『小説 大航海時代』では男やもめ(奥さんに先立たれた)。当時の30台男性は妻帯経験はある方が普通だろう(とはいえ、ピエトロに家庭を持った経験があるとは思えない。設定読んでも、仕事もせずにフラフラした揚句、借金で首が回らなかった時代も長かったので、きっとそんな酔狂な女はいなかったのだろうと想像)。






2&外伝の専用航海士

   

目次









































ジョアン・フェレロ

ロッコ・アレムケル
エンリコ・マリョーニ
ドミンゴ・マニャーナ

初期用キャラなので、3人も専用がいる(2人は途中で抜けるが)
ロッコは、ジョアンの父の代でももう「老航海士」と呼ばれていたにもかかわらず、古希を目前にして現役航海士(しかも超有能)という化け物。ゲームを終了ギリギリまですると、四捨五入して90でも、元気に勤めてくれる…さすが豪傑ロッコ。ロッコ好き♪
エンリコは、カタリーナとの絡みの中でのセリフが味わい深くて好きです。さすがお坊さま。
ドミンゴは…まあ、すぐ抜けちゃうしね。「王太子」は苗字かい!!?とツッコミたくなります。


カタリーナ・エランツォ

フランコ・サヌード
アンドレア・ギージ

フランコは前にアツく語ったのでパス。ギージは航海術が低すぎるということさえなければ、セリフ、キャラクターともに大好き♪カタリーナより10近く年上のイスパニア海軍士官で、元「大尉」だから、カタリーナの上官に当たるにもかかわらず、 どこからどう見ても海賊にしか見えない ガラの悪さが大好きです。マッサワ王宮でのイベントは必見!


オットー・スピノーラ

マシューロイ

チャキチャキのロンドン下町っこ。OP一騎討ちは、やっぱり勝たないとカタ無しかと思われ。


ピエトロ・コンティー

カミーロ・ステファーノ

さっきアツく語ったのでパス。でも繰り返す。 カミーロ大好き♪


エルネスト・ロペス

ロイド・スタッテン

もっともイベント&他キャラとの絡みの少ない主人公に、もっともキャラの薄い航海士。 どうしてパウラちゃんが航海士じゃないんだ!!


アル・ヴェザス

ジャハーン・サリム

結構いろんなところでアツく語ってるけど、こういう「友達だけど相手を立てて配下になりましたよ」キャラには弱い。サヌードは人前では絶対にカタリーナに敬語(年下なのに)、時に少しだけフランクになるのが胸キュン♪でも、サリムやカミーロのように、基本タメ口もそれはそれでいい感じ。



外伝からは、各航海士に個性付けがされて、会話が楽しくなっている。

サルヴァドル・レイス

ホーレス・デスタルデ
リオーノ・アバンチュラ

いたるところで語ってるからパス。でも、ホーレスはどこでもサルヴァドルを「(かわいい)ご主人」扱いなのに、リオーノは、タメ口だったり敬語だったりと割と無礼。サルヴァドルはまったく気にしてないけど(サルヴァドルはそもそも、ゲーム内で誰にも敬語を使っていない。さすが王子さま)。
「オレのレベルが上がったよ」は、でも好きだけどね、あの口調。例のイベントで「サルヴァドル」と呼び捨てられると、あれはあれで胸キュンだったりする。


ミランダ・ヴェルテ

トニオ・ロッシ

言わずと知れた幼馴染同士。気心は知れすぎてるけど恋愛感情なんてまったくない2人の男女が、長い苦難を乗り越えるに従って愛をはぐくむ…というのは、恋愛モノの基本だと思うのですが。ですが!
ミランダはもちろん、トニオの言動も最初から最後までミランダを「大事な友だち」としか扱ってません。なんだろう…トニオにとってミランダは 最初から完全に恋愛対象外なのか!?

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