救世主の名を持つ悪魔殺しの物語

3-4 リオーノ・アバンチュラが語る話









「さあて、とりあえずは潜入成功ってモンか。」

オレは、オレの新しい「主人」である、サルヴァドルの旗艦ガナドール号の甲板で呟いた。


「ふふ、ワクワクしちまうな。」

ついつい笑いがこみあげて来ちまう。

なぜって?

そりゃあ、色々と「楽しそう」な艦隊だからさ。


お頭がくれてやったっていうフランダースのガナドール号には、元は設置されてたはずの大砲がなく、白兵戦専用にカスタマイズされてる。

中途半端に大砲撃って、斬り込んでってことをせずに、最初から白兵戦一本で戦略を組み立てようとしてる証拠だ。

つまり、航海に出て数か月で、曲がりなりにも「自分のやり方」ってヤツを編み出してる。


更に、紹介された航海士たちの個性的な顔。

必要な能力の持ち主を、前歴や出身に拘らずに集めてきてる。

ゴッタ煮にも似たそいつらが、海賊としてはまだまだトーシロのサルヴァドルを、それなりに「提督」って認めてるのがまた、やるね。

もしかしたら、意外とやるのかもしれない…そう思わせといて、


「聞きしに勝る『可愛らしさ』って来たよ。」

オレは、長い黒髪に濃紺の瞳をした、そこらのご令嬢よりはるかにベッピンな「海賊王子」の顔を思い出す。

「キスされたくらいで目を白黒させちまって…まったく。あれで『地中海一の海賊になる』なんて、ね。」


まったく、いろんな意味でアンバランスな王子さまだ。

そして、王子さま率いる、楽しそうな海賊艦隊だ。


「間諜、なんて存在が似合う艦隊じゃあないね。お頭はサルヴァドルの何をそんなに警戒してんだか。」

海賊王ハイレディンに息子は一人しかいない。確かに副首領として弟のアイディンのダンナがいるが、サルヴァドルと親子ほど年が離れていることは一緒だ。跡目相続でゴタゴタするワケじゃあない。


「まさか、息子が父親に反逆して、海賊王の座を追い落されるのを心配してる…わけじゃあ、ないよな。」

自分で言ってみて、有り得なさい過ぎて笑っちゃうね。

あの可愛らしい王子さまが、地獄の魔王よりおっかないお頭に反逆!?

「有り得ないね、てかムリだね、有り得ない。」

想像するだけで笑いが止まらないぜ、ったく。


「ま、おシゴトはおシゴトできちんとこなすさ。お頭がオレに与えた命令だからな。でも同時に、オレはサルヴァドルの『補佐役』でもある。」

オレの表向きのシゴトは、サルヴァドルの「補佐役」。

あの王子さまを補佐して、立派な一人前の海賊に仕立て上げること。


「そうさ、あのナマイキなパッキン野郎より、立派な。」

オレは、いけすかないジョカ・ダ・シルバのツラを思い浮かべる。


若手で随一か、しかもお頭からの信用も厚い。 「あの」お頭に「信頼」されてる。

海賊ってのは腕が命で、そしてジョカは若手じゃ飛び抜けて腕が立つ。

そして、てめえでもその事を分かり過ぎるくらい分かってる男だ。あの蒼灰色の目には、自負と自信が漲ってる。


「…どうも信用できないんだよな、あの手の目したヤツはさ。」

お頭も若くはない。

お頭に何かあった時、アルジェ海賊を継ぐのが、もし、サルヴァドルでないのだとしたら…




オレは頭を横に振る。

サルヴァドルがいけすかねえガキなら間諜一本で行くつもりだったが、オレはあの王子さまが気にいっちまったようだ。

幸か、不幸か。

いや、オレの手にかかりゃ、すぐにサルヴァドルをジョカの競争相手に、いやそれ以上の存在に仕上げてやるよ。

「腕が鳴るな。」


オレは自分の言葉通り、自分の指をポキポキと鳴らしてみた。





2010/3/28



今回の語り手:リオーノ・アバンチュラ
…この話の主要人物の一人。アルジェ海賊の一員。取説では「レイス一味のちんぴら」というひどい書かれ方をしている。ゲーム開始時21歳(サルヴァドルより4つ上)。オレンジ色の髪と、常人にはビミョーに理解しがたいファッションセンスの持ち主(洒落者と言うべきか、道化くさい)、イケメン設定。ハイレディンにサルヴァドルを「補佐するため」に派遣される。測量に砲術と副官基本セット所持、でもなぜか義理がない(あのストーリー展開だから?)。おしゃべりで女好き(という割に、アンナくらいしか女を相手にしてない気がする)、常に陽気にふるまうお調子者。属性(このゲームでは登場キャラに「善」「中立」「悪」の性格づけがある)は「悪」。
以上が公式設定。ちなみにリオーノの服装はゲームでは見えないが、最初公式設定見て吹きそうになった。個人的には、おしゃべりはともかく、「陽気なお調子者」という性格は、かなり仮面的に用いている気がする。あと、相当な切れ者。性格は「悪」だが、それに徹しきれないところが彼の魅力であり、サルヴァドル編をプレイしたご婦人は、一度は彼の虜になる…ハズ。
ゲーム後半での行動原則が理解しがたい人物の一人(一位はジョカ、僅差で次点ハイレディン)。だから、彼の過去に何があったのか、とても知りたい。




ネタバレプレイ日記&感想

   

目次









































大航海時代2&外伝は基本、 大砲なんて必要ない ゲームです。特に2は、砲撃戦しない方が早く確実にクリア出来ます。ミランダで海賊するのでも、聖騎士シリーズでも入手すりゃ、か弱いジェノヴァの少女もすぐに(リアル時間で4時間もあれば)地中海1の海賊に成りあがることが出来ます。(アイディン叔父や、アルジェ四人衆を仲間にする事も可能です。ハイレディンは艦隊として登場しないので無理だけど。)
だから、入手した中古船を使用するつもりなら すぐに大砲を撤去する のが基本動作になります。
まあ、当時の大砲はまだそんなに性能が良くないので、史実のバルバリア海賊も、半世紀後の
レパントの海戦 も基本白兵戦みたいですし、アルジェ海賊(バルバリア海賊)のサルヴァドルが白兵戦を好んでも良かろう。
…と言いつつ、サルヴァドル編は アレ があるため、嫌でも砲撃戦の訓練を積まねばなりませんが。

めんどいんだもん、大砲、やっぱりキライ。

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