救世主の名を持つ悪魔殺しの物語

5-6 アンソニー・ジェンソンが語る話









ま、順当な結果ってヤツだ。

オレは、提督の剣を喉元に突きつけられている海賊ヤコブを見ながら思っていた。


「…」

海賊ヤコブ・ワルウェイクは涙目で、ぶざまに転げちまってるってのに膝が笑ってる。

提督との一騎打ちを拒まなかったのは勇気を認めてやっても良かったが、あんまりに提督が強すぎたんで怖かったんだろう。


「言い残すことはあるか?」

提督は余裕綽々の態度でヤコブに聞いた。


「ぼ、僕は…」

「おっと、ちょいと待ちなよ、提督。」

アル・ファシが割り込んできた。


「船倉を探したらよ、見ておくれなせえよ、このお宝っ!!」

アル・ファシが無造作に床に転がした代物に、みんなの目が釘付けになる。


ぴかぴかでキラキラで、紛うことのねえ、金だ。純金だ。


「アッラーに讃えあれっ!!なんと、まだまだあるんだぜ。」

船員たちがどよめいた。

てか、オレも腹の底から驚いた。

こんだけ実入りのいい船は今までなかった。


「随分、手が早いじゃないか、アル・ファシ。まさか、てめえの懐に入れちゃあ居ねえだろうな?」

ホーレスのダンナが、低い声でゆっくりとアル・ファシに聞く。


「はは、まさか。何ならオレを逆さに振ってくれたっていい。」

「よし、ヤコブが片づいたらそうしてやる。」

ホーレスのダンナの発言は、多分冗談だったんだろうが、アル・ファシの表情がひきつった。


「ふうん、弱い割に金持ちだったんだな、お前。」

サルヴァドル提督は、ヤコブに剣をつきつけたまま言った。

ヤコブは、さっきとは少し違った表情を浮かべた。


「おっと提督、せっかくだからそいつ、見逃してやりやせんか?」

アル・ファシが意外なことを言った。


「なぜだ?」

提督の問いに、アル・ファシは答える。


「こんだけオレたちを稼がせてくれたんだ。次会う時があったら、もっとオレたちに貢いでくれるかもしれないぜ?」

アル・ファシの言葉に、みんな笑った。提督もだ。


「そうだな。」

提督は剣を下ろし、ヤコブに言った。


「じゃあ、命だけはくれてやる。次会う時までにたっぷり稼いで、オレに貢いでくれよっ。」

そして、小舟をヤコブにくれてやるよう、命じた。


「いつか見返してやるッ、おぼえてろッ!」

そう言いながら、笑った膝で這うように逃げていくヤコブを、みんなが笑いながら見送った。




「やれやれ、ウチの提督はお甘いねえ。」

リオーノ・アバンチュラが大袈裟に手を上げて嘆いてみせた。


「提督、ヤコブに襲われてた船がまだ居やすぜ。」

ホーレスのダンナの言葉に、提督は答える。


「商船にも見えないな。ただのカラベル・ラティーナだろ?見逃してやれ。」

そう言いながら、船端に歩み寄る。


「安心しろ、お前たちを襲うつもりはない。」

提督の声に、


「あっ。」

という若い女の声が応えた。


「あ、あの人、出港所であたしにぶつかった人だ!」

「…ミランダにぶつかったんじゃなくて、ミランダがぶつかったんじゃないか。」

どうやらミランダというらしい女の声に、若い男の声が続いた。


「げっ…」

提督は、ヤコブと戦ってた時にゃしなかった、嫌なものを見ちまったって顔になった。


「あの、やかましい女…」

そして、なぜか動かなくなっちまった。


「提督、提督っ、あーぁ、すっかり固まっちまって。」

ホーレスのダンナが、やれやれって表情で手を上げる。

オレも船べりに行った。金髪の若い嬢ちゃんと、茶色の髪をした若いやつだ。

若い娘が、カラベルなんて乗って何の用なんだろうか。


「アンソニー、なかなか可愛いと思わないか?」

リオーノが言う。


「ああ、確かに可愛いな。」

リオーノは続けた。


「なあ、ホーレスさん。儲かり次いでだ、あの女も頂こうぜ。」

リオーノの言葉に、ホーレスのダンナが露骨にいやな顔をしたが、リオーノはうすら笑った顔のまま続ける。


「ウチの提督は『清純派』と来たもんだが、オレたちだってそうでなきゃなんないとは思わないけどね。あ、そんな顔で睨むなよ。別にみんなでマワそうとは言っちゃいねえよ。ただな、せっかく高く売れそうな『エモノ』を見逃す手はないって…」

「さっきの嬢ちゃんだな?すまねえな、うちの提督はこうなんだ。襲わねえから、さっさと行ってくれねえか?」

ホーレスのダンナは大声で叫んでから、リオーノを睨みつけた。


リオーノはもう一度大袈裟に手を上げる。

「やれやれ、ウチの艦隊は副長まで大甘でいらっしゃるってよ。」

オレたちの船で何が話されていたか知りもしないのだろう、


「それじゃ、お言葉に甘えて。ありがとう、ホーレスさん。」

って明るい嬢ちゃんの声と、


「急ごうよ、ミランダ。」

って男の声がし、船はオレたちから遠ざかって行った。





2010/4/24



ミランダ編ではあっさりと見逃してくれるサルヴァドルですが、よく考えれば、「可愛い女の子」はホンモノの海賊なら見逃してはくれない「美味しいエモノ」のはずだと思います。
あのシーンでリオーノは喋りませんが(そういやミランダ編にはリオーノは出てこない)、リオーノならこのくらい言う筈。
属性悪だものっ!!(サルヴァドルもだけど)




付けたり話

   

目次









































ヤコブイベントでの戦利品

キャラック9隻(ちゃんと拿捕すれば) 現金換算 金塊18個。
金200 現金換算(北欧で売りさばけば) 金塊22個。
ヤコブの装備:豪華な剣 D 剣 宝石や貴金属で、ごてごてと飾りつけられた剣。高価だが、斬れ味は鈍い。
派手な鎧 D 金銀を大胆に使用し、目にも鮮やかな鎧。防御効果はなきに等しい。
現金換算 金塊5個程度(店での売り値にもよる)。

金塊50個程度が(しかもあんなちょろい戦闘で)手に入るイベントは、この戦闘以降はありません。ボーナス度高すぎます。
で、弱いくせにこんだけの財産持ってたヤコブについての説明(過去バナとか)が入るのかとおもいきや、結局、これ以降ヤコブは出て来ない…

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