救世主の名を持つ悪魔殺しの物語

7-3 リオーノ・アバンチュラが語る話









「ホーレスは?」

サルヴァドルは目を開けるなり、母親を求める子どもみたいにそう言った。


「オッサンはシゴトですよ、提督。」

オレが答えると、サルヴァドルの表情にうっすらともの寂しそうな色が翳る。


「確かにな。海賊稼業を続けないと、飢えちまうからな。」

すぐに強情な口調でそう続けて、サルヴァドルは体を起こした。

だからオレは、それを止める。


「いつまでけが人扱いする気だ?オレはとうに治ってるっ!」

そして、砲撃で傷ついた腕をオレに示したが、立派に包帯がぐるぐる巻かれたその腕を出す時に、サルヴァドルが顔をしかめたのはしっかりと目に入った。


「はいはい、分かってるよ提督。だから、もう少しだけ大人しくしてような。」

「何だよ、ホーレスみたいにっ!」

ベッドから下りようとする提督をオレは再び制する。


「ジョカとの艦隊襲撃競争期限中なんだぞ!?このままじゃジョカに負けちまう…」

言ってる当人も分かってることだが、もう負けは確定だ。

そもそも、万全の状態でも勝てるか五分、どころか二分くらいの相手に、途中で負傷して寝込んじまって、勝てる筈がない。


「提督、まずは傷を治すことを最優先にしようぜ。この勝負が終わったって、海賊稼業は続くんだ。無理して怪我を悪くしちまったら、最悪、腕ごと切らなきゃなんない羽目になっちまうぜ?ゾッとしないだろ?」

「…」

この稼業やってると、腕だの足だのをダメにしちまう例にゃ事欠かない。

良くてラム酒を景気づけに、悪けりゃ完全にシラフで、斧だの鋸だので骨をブッた切られるってのは、見てるだけでもまったくゾッとしない光景だ。

ましてや、てめえがそんな目に遭うなんて、な。


ぼふっ

サルヴァドルは勢いよくベッドに倒れ込んだ。


「クソっ!!」

動く方の腕で顔を覆うとそう叫ぶ。


「オレが負けるなんて…」

続いた、勢いと力のないその声を発した口元は、今にも泣き出しそうなほど歪んでいた。




まったく、仕方のないお人だ。

海賊船の提督だってのに。

まあ、だからなんだろうな、オレが続きの言葉を口に出しちまったのは。




「負けるのがそんなにお嫌いかい、提督?」

サルヴァドルは顔を覆っていた手のひらを顔から下すと、オレを不思議そうに見つめた。


「好きなヤツなんているのか?」

その顔は、あんまり子どもじみてた。


「いや…そりゃま、いやしないでしょうけどね。提督はやたらと目先の勝ち負けにこだわるなって…」

サルヴァドルは、怒りすらこめた目でオレを見つめた。


「オレは海賊だぞ!?戦って、勝つのが商売だ。」

そして、続けた。


「弱いヤツに、存在価値なんてあるか!」

そして、自分のその言葉に傷ついたような顔になって、もう一度手のひらで顔を覆った。




ああ、まったく、この人はなんてハイレディン・レイスの息子なんだろうな。

そしてあのお人は、息子だってのにちいともこの人に容赦しないんだ。




「なあ提督、あなたは確かにちょいとドジ踏んだかもしれねえが、そこまで致命的なことをしでかしたわけじゃあない。五体は満足だし、傷だってしばらく養生してりゃ治る程度さ。船だって残ってるし、航海士だって古参に見限られたわけじゃない。だろ?」

「…」

サルヴァドルは、もう一度、顔を覆っていた手のひらを外し、オレの顔を見た。


「あなたは、最後に勝ってりゃいいのさ。」

「…」

紺色の瞳が、和んだ。


「だろ、提督?」

「…だな。」

サルヴァドルの口元も、わずかに緩んだ。

まったく、このお人は。

海賊船の提督だってのに、なんて可愛らしいお人だろう。


「よっしゃ、それでいいんですよ、提督。じゃ、まずは養生することだね。精のつくものを食べて、さっさと傷を治さねえとな。何か食いたいものでもあるかい?オレがひとっ走り買いに行って…おっと、オレは提督の護衛なのに、側を離れちゃいけねえな。」

「なんだ、そんなの。ガキじゃないんだ、自分の身くらい自分で守れる。」

って、ガキみたいな口調でスネるサルヴァドルにオレは答える。


「あのですね、提督。オレはホーレスのオッサン、じゃなくて提督代理に、提督を護衛するよう命令されてんです。何度も言うけど、提督は今、療養中なんだ。もし万が一、提督に何かのことがあってみて下さいよ。」

「ホーレスが怒るか?」

「怒るなんてもんじゃない。提督に髪一筋ほどの傷でも負わせてみてご覧なさいよ…オレ、あのオッサンに簀巻きにして海に投げ込まれちまう。」

サルヴァドルは考え込む。そして、納得したように頷いた。


「あのオッサンは、過保護ですからねえ。」

「ホーレスはいつまでもオレをガキだと思ってるんだ。そりゃ赤ん坊の頃からオレを育ててるかもしれないけど、オレはもう提督なのに。」

サルヴァドルは膨れる。


「はは、まあそれじゃ提督は息子みたいなもんなんでしょ…」

ま、あのオッサンはどっちかっていうと、提督の「オフクロ」なんでしょうけど。

言いかけて、オレは止める。


そういや、サルヴァドルの母親は誰なんだろう?

このアルジェ海賊に「姐さん」はいねえ、ってか、お頭には女っ気がまるでねえ。


「ま、だからオレが今こうしてここにいるワケだけどな。」

思ってみてついつい笑っちまったら、サルヴァドルが不思議そうな顔をした。


「何のことだ?」

「いえね、こっちの話です。で、食いたいものとかありませんか?ああ、特に思いつかなけりゃオレが適当に見つくろいますよ。あ、今、アクビしたね?ま、ずっと寝てるのは退屈なもんだからね。退屈なら、オレが旅してた時の話でも聞くかい?そうそう、そう来なくちゃ。あれはオレがまだイスパニアにいた時の話だ…」

オレはサルヴァドルを多弁でごまかした。




まったく、このアルジェ海賊と、お頭と、そしてこのサルヴァドルは、いろいろと不思議なことだらけだぜ。





2010/8/2



リオーノが大好きなサルヴァドルですが、ゲーム本編ではどうして二人が仲良しなのか窺わせるエピソードがあまりありません。(ま、2のエルネストシナリオのパウラちゃんよりマシですが)
なので、いろいろとねつ造していきたいと思います、はい。




名声競争の稼ぎ方

   

目次









































このサルヴァドルとジョカの海賊名声競争は、サルヴァドルがいかに2か月でジョカの6600を超えるかが勝負になります。
ま、慣れてくれば戦艦隊をのべつまくなしに沈めまくれるので勝つことはチョロいのですが、なかなか戦艦隊に遭遇できないことがあります。
そういう時、個人的にオススメの場所としてニコシアがあります。あそこはニコシア海賊の本拠地なので、数日おきに海賊が出港してきます。特にランダム海賊は、ランダムのくせして、ガレオン10隻だの、ガレアス10隻だので出て来てくれるので、遠慮なく狩りまくりましょう。(でも、ガレアスとかは逆にフクロにされないように気をつけましょう。ランダムのくせに強いですから)
こんな明らかなショバ荒しをしても、シャルークが出てきたりはしませんので。

ちなみに、べにいもはギルドで海賊退治を請け負ってから狩っていた(海賊名声が+されるから)のですが、どうやら、名声競争の名声に、ギルドの仕事で上昇した分は換算されないようです。(どうして?)
あ、期限の2か月を超えると、ジョカの名声が1日110ずつ上がっていっちゃうので気をつけましょう。ニコシアでホーレスに「期限です」と言われてからアルジェに戻ると、下手すると1週間くらいかかるので、あらかじめ期限にはアルジェについているよう、心掛けて下さい。

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