七つの大罪ー邪淫編

聖堂騎士団長マルチェロが犯した邪淫の罪とは!?
今、聖堂騎士団員ククールの衝撃の告白が始まる!!
ちなみに、みんな大好きトロデ王とミーティア姫も本サイト初登場です。











茨に覆われし、呪われた城トロデーン。

エイタス一行は、荒野の船を復活させるよすがを求め、この城へと踏み入っていた。



「…………。 (祈る動作をする)別に 祈ったからってこいつらが助かるわけでもねえよなあ。オレの 気休めさ。 」

珍しく真面目で殊勝なコトをしでかした ククールに、一同はとっても驚いた。

トロデ王に至っては、涙までこぼして 感激してくれた。


「よーしよしよし、そんなにワシの城の惨状を傷んでくれるのか。」

緑色をした魔物の外見をした中年のオッサンに頭をなでくりされた ククールは、それでもとっても嬉しそうに答える。


「だって、呪われるのってすげえ苦しいだろ?気休めでも、女神さまに祈ってやんないと気の毒じゃん 。」

「なに?呪われたことがあるの?ククール。」

ゼシカの問いに、ククールは答える。


「あのさ、兄貴がさ…」


お前、兄貴のネタ以外にネタないのかよ!?

一同はうっかりそうツッコミそうになった。

なにせ、この一見クールそうな銀髪の美青年は、 見た目の秀麗さに反比例して頭の中身と精神構造がかわいそうな 人間だった。マイエラ修道院という閉鎖空間と、そこに君臨する電波な聖堂騎士団長の兄くらいしか世界を知らないせいとはいえ、一同はそろそろククールの兄貴ネタに食傷気味だった。



「そうなんだ、君のお兄さんは呪われたことがあるんだ。」

それでもリーダーのエイタスは、ヤンガスを心服させた慈愛の微笑 で、ちゃんと会話を続けてあげた。それでも、彼でもそろそろ我慢の限界だったのか、

「ある意味、今でも精神構造が呪われまくってるみたいだけ どね、君のお兄さん。」

というツッコミは付け加えたが、ククールには通じなかったらしい。



「うん、兄貴ってば昔、すげえ呪いにかかってさ。 うっかりオレと邪淫戒を犯してしまって そのあと半年は毎朝、女神さまに贖罪の祈りを捧げてたもんな。」













「ジャインカイ?アニキトジャインカイヲオカシタ?」














一同は、あまりにさらっと発せられた単語にアタマが真っ白になった。































がしいっ!!































そして、エイタスとヤンガスとトロデ王がまだショックから冷めやらぬうちに、ゼシカがククールの 肩をがっしりと掴んだ。

「それは…ぜひ!!詳しい話を聞かせてほしいわっ!!

「ヒヒーン!!」


なぜかやたらとエキサイトする女性陣にきょとんとした表情 を向けたククールだが、

「君と馬姫様が聞きたいなら。なんせオレはすべての女性のナイト だからな♪」

と、可哀想な子のクセにくさい台詞を言って、ククールは話し始めた。








「兄貴ってばさ。精神的にも肉体的にももんのすごく丈夫な人だからさ。風邪一つひいたコトない人 だったんだけど。」

「そりゃ、 あんな電波野郎には、風邪菌だって近づきたくない わよ。」

「ある朝、いつも院内でいっちばん早起きの兄貴が起きてこないから、騎士団員が見に行ったんだ。 そしたら、ベッドの上で激しくもだえ苦しんでたんだ。」

「…それが呪い?」

ようやくショックから回復したエイタスが言う。


「一体、なにに呪われたんでヤス?うっかり悪魔のしっぽでも装備しちゃったんでガスか?」

「そんなことしなくたって、天然でついてるよきっと。」

「おおっと、アニキのご明察、恐れ入りやした。」

慈悲深いエイタスにすら罵倒されるようになってしまったマルチェロだが、当然、当人はそんなこと とは露知らない。



「んー…ともかく、みんな大騒ぎになってさ。しかも、オディロ院長は遠出してていなかったし。と りあえず医者とか呼んだけど、原因不明だって言うし。でも、兄貴はめちゃめちゃ苦しんでるし…あの兄貴がだよ!?あ の!!生きながら火刑に処されたって、多分顔色も変えないだろう兄貴が 苦しんでんだよ!?どんだけ痛かったか…可哀想な兄貴。」

ククールはそう言って、心底かわいそうな兄貴を悼む顔 になったので、一同は



お前の方がよっぽどかわいそうな目に会わされてんじゃん!?


とは言えなくなった。








「しかし、それはエラい呪いじゃの。一体なにが原因だったんじゃ?」

トロデ王の問いに、ククールは答える。

「そんでさ、あたりにいる、なんかものの役に立ちそうな奴等みーんな呼び集めて…何日後だったか な。通りすがりの呪術師かなんかに見せたら、そいつが言ったんだ。

『憎悪の呪いじゃ!!ああ、おそろしや。よく生きておったな。』」


「『憎悪の呪い』?なんなんじゃ、それは。ワシもけっこう呪いには詳しい方じゃが、初めて聞いたぞい。」

「うん、オレも騎士団のみんなも初耳だったけど。なんでもその呪いにかかると、 全身の臓器という臓器が猛烈な痛みを発しだして、しまいにはそれが全身の痛覚に至り、適切な処置を二日以内にとらないと、良くて痛みで完全発狂、普通なら、痛みに耐え切れずに衰弱死しちまう、とっても恐ろしい呪い なんだってさ。」

「…その呪術師が来たのは、団長が発症してから何日後ですかい?」

「んー…たしか一週間くらい。だから、呪術師はすげえ感心してたよ? 化け物並みの体力と精神力 ですな、って。」

兄を褒められて嬉しいといった顔のククールに、一同は



それって褒め言葉じゃないよ、多分



と、心の中でツッコんだ。



「…ともかく、それで処置方法は分かったワケじゃな?」

「うん、簡単は簡単だよ…その…憎悪の呪いっていうのは、 その人が渾身で憎んでる奴 に…その… 恥ずかしいコトをすると治るんだって。」


「聞きたいのはソコよっ!!」

ゼシカの瞳が妖しく光った。





ククールは微妙にもぢもぢしたが、続ける。





「でもさ、このままだったら兄貴死んじまうじゃん。んでもってオレはみんなに聞いたんだ。

『兄貴の憎んでる奴って誰っ!?』

そしたらなぜかみんな、 オレをびしって指差す んだ。」


「気付いてないんだね…そろそろ自覚したら?」

エイタスが優しい目でククールを見ながら言う。


「オレは違うって言いたかったけど、みんな無言で首振るし。仕方ないから、オレは兄貴の前に進み出て

『オレはいいよ、兄貴』

って言ったんだ。」


「ヒヒーン!!」

「おお、ミーティアや。どうしてそんなにエキサイトしておる んじゃ?」


「でも呪術師に治療法を耳打ちされた兄貴は、苦痛と疲労でへろへろのはずなのに、あの緑色の目を カッと見開いて

『断固拒否する!!』

って叫んだんだ。」


「ゼシカ、どうしてそんなに爛々と目を輝かせてる のか…なんて、いや、僕は聞かないよ。 聞いてはいけない事だと知ってるからね。」


女性二人のアツい期待の眼差しの中で、ククールは続ける。

「オレは言ったんだ。

『でも兄貴!!このままだと間違いなく死ぬか発狂しちまうよ!?』

でも、兄貴は言うんだ。

『貴様とそんな忌まわしい事をするくらいなら、死んだほうがマシだっ!!』

どうして一週間はまともに食べてなくてやつれてるのに、あんだけデカい声が出せたのか不思議なくらいの力一杯の拒絶だったね。」


「可哀想でガスなあ。」

「だろだろ、兄貴ってばかわいそうだろ?ヤンガス。」

「いや、ククールあんたが…」

いいさして、ヤンガスはほろりと涙をこぼした。

エイタスがそっとハンカチを差し出す。



「…あの男が今は元気一杯で生きておるということは、その “恥ずかしいこと”とやらをおぬしとした んじゃろ?ククールよ。これ、ミーティア。レイディがはしたないぞ。」


「…オレと他の騎士団員で説得しまくったんだけど、兄貴はガンとしてうなずかないんだ。そりゃ、確かに 邪淫戒を犯すのはよくないことだろうけど、命に関わってんだから、女神さまだって許してくれる と思ったんだけど、兄貴は の一点張り。」


「そうよっ!!命がかかってんだから仕方ないわよっ♪いいからさっさとしなさい!!」

エキサイトが加速するゼシカ。

「ヒヒヒーン!!」

同じく、馬姫様。




「どうっしようもなくて、日にちばっかすぎて、いくら兄貴でも本気で生死の淵をさまよいはじめた時に、オレたちはようやく、オディロ院長を発見して連れ戻すことに成功したんだ。もうこうなったら、院長の説得にかけるしかねーじゃん?」

「嫌な説得だねえ。いくら人の命がかかってるとはいえ…」

「でもアニキ、人の命には代えられませんぜ。」






「院長の姿を見ると、兄貴はうっすらと目を開けて…あんなに力のない目をした兄貴は初めてだった、言ったんだ。

『死ぬ前に一目お会いできて嬉しゅうございます、院長。不肖マルチェロは女神の御元に召されますが、どうぞ終油の秘蹟を行っていただけたら、思い残すことはありません…』

院長は、いつもとおんなじ優しい目をして答えた。

『マルチェロよ、女神は天寿をまっとうしてからの死をお望みじゃ。助かる方法があるのじゃろう?なぜそうしようとせん?』

オレもそーだそーだっつったんだけど、兄貴はオレの事は完全にムシして、院長だけを見て答えたんだ。

『ククールと あんな淫らな事 をするくらいなら、私は死を選びます』

激しく断言だった。」





「いいじゃない、しなさいよデコ団長!!」

「ヒーン!!」





「院長は厳しい言葉になった。

『自ら死を選ぶ者は、女神の御許には行けん。地獄の業火に焼かれる ことになるが、それでもよいのか、マルチェロよ。』

兄貴はすげえハッキリ答えた。

『それでも私は 地獄の業火に永劫に焼かれる ことを望みます。』」



ククールは、思い出したのか、涙声になってきた。

「なんで苦しいのに、 あんなにチカラ一杯オレを拒絶した んだろ、兄貴ってば。」




「…」
「…」
エイタスとヤンガスは黙って微笑みあった。


「…よーしよしよし、人生そんなコトがいっぱいじゃ。ワシだって、 51回連続でフラれた ぞい。それでも元気で生きるのじゃ。人生にはそれでも楽しいことがたっくさんあるからの。」

トロデ王の慰めに、ククールは少し元気をだした。


「そーだよな。 オッサンみたいなカエル面でも元気に生きてる んだから、絶世の美青年のオレが元気なくしちゃだめだよなっ♪」


「…」

足元の小石をけっていじけるトロデ王を、エイタスはなんとか慰めた。




「続きはっ!? 結局ヤったんでしょっ!?いいから早くそこまで話しなさい!!」

「ヒヒヒーン!!」

ゼシカとミーティアの殺気すらこもった言葉に、ククールはちょっとビビりながらつづける。




「院長は、とっても哀しそうな顔になって言ったよ。

『分かった、お前がそこまで言うならワシは止めまい。じゃがマルチェロよ。お前の葬式を出した後、ワシが三日と生きておれると思わんでくれ。ワシもすぐさまお前を追いかけることになろう。…地獄への。』

兄貴は驚いて言ったさ。

『なぜ、院長が地獄に…あなたは聖者ではありませんか!?』

院長は続けたよ。

『マルチェロ、ワシの愛し子よ。子どもの一人の魂も救えないワシになんの生きがいがあろうか。なんの女神のお慈悲があろうか。じゃから、おぬしが地獄へ赴くというのなら、ワシもまた選ぼう、地獄への道を。…それでも…よいかの?』」




「うっうっ、素晴らしい方でやすな、オディロ院長って方は。」

「本当じゃのう。なんであんな素晴らしい方が育てたのが、 あんなのやこんなの になるのか不思議で仕方がないわい。」



「…兄貴は…あの兄貴がだぜ。院長の言葉を聞いて、 うっすらと涙を浮かべた んだ。

『院長…わが父よ。あなたがそこまでおっしゃるのなら、愚息のマルチェロがなぜに生を拒みましょう。 たとえそれが死を選ぶより数万倍も耐え難く、惨めで、そして罪深い生だとしても!!ええ、そこの出来損ないと、 口にするのも忌まわしいような淫らな行為をして得た生 だとしても!!私は貴方の魂のために!!貴方の慈悲のために!!耐え忍ぶ覚悟は出来ています!!オディロ院長!!』

瀕死なのに絶叫して、涙までこぼした兄貴のその涙を、院長はやさしくぬぐったんだ。」




「いい話ですなあ…アッシはこんな話に弱いんでさ。えっぐえっぐ…」

「うん、この話に オチさえつかなきゃ、いい話だと思うんだ、僕も。」

エイタスは黙って、 ギラギラした目でククールを睨むゼシカとミーティア を見て、ため息をついた。


「女の子って、どうしてこんな話が好きなんだろう…」

「なんか言った?エイタス!?」

「…ううん、なんにも…」




「兄貴は、 全てを諦観したような目 でオレを見ると、今度は 絶望のため息 をついて、そして院長と他の騎士団員に言ったんだ。

『すべての恥を忍ぶとは誓いましたが……こんな姿を見られたくはありません…お願いですから、場を外してください』

みんな、うなずいて去っていった。そして、 オレと兄貴だけが残ったんだ。」


女性二人のギラギラ目は、真夏のアスファルトよりも熱くなった。




「オレは兄貴の横たわるベッドに座って言ったんだ。

『兄貴…いい?』

って。兄貴はもう目をそむける気力もなかったのか、目を閉じて答えた。

『ああ…』

オレは兄貴の半身を抱き起こした。ほとんど食べてないから、なんか別人みたいに軽くなっちまってて…その…うん、 まあいいや。オレは兄貴の頭に手を回して、やりやすいように頭を近づけた。兄貴はようやくその緑の目を開けると、オ レに囁くように言ったんだ。

『目を、閉じてくれ…見られていると…』

オレは、兄貴が最後まで言う前に、目を閉じた。」






「さあっ!!これからがホンバンよ!!ミーティア姫!!」

「ヒヒヒーン!!」

エキサイト最高潮な女性二人に、男性陣は困惑の眼差しを向けるしかなかった。


「オレは、兄貴の吐息が近づいてくるのを感じた。そして…」



「て!?!?」

「ヒンっ!?」





















「ちゅって」


















ハ?
















「そしたら、兄貴が急に生気のこもった声で

『痛みが消えた』

つって、元気よくオレを突き飛ばしたんだ。」

















ハ!?


































「音を聞きつけて、みんなが入ってきたんだ。そして、まあ後は兄貴は痛みが消えたから、元気なもんでさ。しっかり食べて、しっかり寝たら、一週間くらいでいつもの兄貴に戻ったんだ。やっぱ、元が丈夫な人って違うよな…あれ?みんなどうしたんだ?」


「ククールぅ♪あのね、あなたの言う 恥ずかしいこと ?てゆーか、あなたのお兄様のおっしゃる 口にするのも忌まわしいような淫らな行為 って、具体的にはどーゆーコトだったのか、もっぺん教えて♪」

ゼシカの笑顔がふるふると怒りで震えている のに、ククール以外のみんなが気付いていた。


「えー、ゼシカのえっちぃ…そんな恥ずかしいこと…」

「いいからはやく言え!!」

「んー………ほっぺにちゅ…うわー、オレすげえ恥ずかしい…」


















どぐわっ!!

ミーティア姫の、馬脚キックがククールのどタマにまともにヒットした。































「い…痛…」

起き上がろうとしたククールに今度は、 ゼシカ渾身の双竜打ちが連続ヒットする。



























「な、なにさオレがなにを…」

「邪淫戒ナメてんのか、てめえッ!!」

「ぶひひひひひーん!!」

女性二人は、 地獄の悪鬼もかくや とばかりの形相で、ククールを囲む。






「え、だって…邪淫ってえっちなことってイミ…」

「邪淫戒とは何!?」

「ヒヒーン!!」


びくうっ!!


「女犯を許されないエリート騎士団員の団長と部下でイケメンで初顔合わせが拷問室で異母兄弟の二人が犯すべき邪淫戒とはっ!?」

「ヒヒヒヒヒーン!!」





かくして、ククールと巻き添えくった男性三人は、呪われた城(もちろん魔物が徘徊している)の中、正座させられ、た っぷり三時間は

“正しい♂×♂の邪淫戒のあり方とはっ!?”

というゼシカとミーティアの大演説を拝聴させられることになったそうな。



巻き添えくった三人は、正座のしびれと話の生々しさに半泣きであったそうだが、ククールは大演説を聞きながら

(ゼシカって、デコが魅力的だし、 ムチさばきも華麗でステキだと思ってたけど、 演説まで得意なんだまるで兄貴みたいっ♪)

と、ゼシカに対する恋心をはぐくむ事が出来た…のは、不幸中の幸いということにしておきたい。







終る


2006/7/22




えへへ、なんだかスゴい事を期待なさったお嬢様方へ。
「ノーマルアホ駄文」で、そんな皆様が期待なさるコトが起こるワケないじゃないですかっ!?というワケで、ノーマルアホ駄文では、「小学生OK」なえっちいてなコトしか書かないと明言してありますので、
ほっぺにちゅどまりでした。しかし、弟のほっぺにちゅーするのが嫌さに、 発狂必至の苦痛に一週間以上も耐え忍んだ兄の弟キライっぷりには、アタマが下がり ます。これで、呪いの解除方法が(ゼシカとミーティアが期待したように)裏行きのようなコトだったら、院長が何を言おうが間違いなく 腹かっさばいていた ことでしょう。
えー…、ゼシカと姫を腐女子にしてしまいましたけど、でもさ、やっぱ女の子ってここでは期待してナンボの職業だと思うわけですよ、ねっ!?
「邪淫編」は、いろいろとネタを考えては没にしました。たとえば

・フンドシ兄貴
・ゲイグラビアな兄貴
・勝手にせりにかけられた兄貴

などなど。でも、結局「小学生的にオッケー」な形にまとまらなかったのでボツです。もし「それ見てー」というものがあったら、リクエストしてください。アホモにのっけるかもです。




強欲編

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