世界一の美女




DQ8世界7不思議の一つ「七賢者の末裔のうち、一番はっきりと『汝、子作りに励め』と言われたギャリングさんが、どうして未婚で拾った子を育てていたのか」について考えてみたいと思います。
え?なのにどうして「幼少期」にカテゴライズされてるのかって?そりゃ…ベルガラックきょうだいと、もう一組の「兄弟の父」が出てくるからです(母Sも)






















よう、神父さん。おはようさん。


え?この夜遅くに「おはよう」はねえだろう、って?


はっはっは、こんなカジノオーナーなんて商売先祖代々やってっとよ、世間様とは昼夜が逆転するのさ。

てか神父さん、あんた、この快楽の街ベルガラックの教会の神父のクセに、まぁだ、そんなコト言ってちゃいけねえぜ?

だからお坊様ってのは…よっしゃ、このギャリングが神父さんに、カジノと夜更かしの楽しさって奴を教えてやるよ。どんと遊んでいきな。会計は俺がもってやるからよ…




あ?いい?いらない

ったく、固ぇなあ。




え?まさか子ども達にもそんな生活させてるんじゃねえかって?



はっはっは、痩せても枯れても、男ギャリング、まだ片言のガキにお天道さま拝ませねえような真似はしやしねえよ。

フォーグもユッケも、もうとうにおねむだ、安心したかい?







片言…か


早ぇモンだな。

あんたの教会の前で拾って来た赤ん坊が、もういっちょ前にしゃらくせえ口効くようになってんだぜ?

特にユッケ!

女の子は口が早ぇって言うが、またよく喋ること、よく喋ること







あ?

なんだい、神父さん。何か言いたいことでもあんのか?




は!?結婚はしないのか、って!?

おいおい、神父さん。あんたまでその話かよ、もういい加減にしてくれ。耳タコなんだよ。

だいたいなあ、無敵の男ギャリングの末裔、熊殺しのギャリングだって、人の子なんだ。子育てで手一杯で、嫁さん探しまで手が回らねえよ。



あ?だったら、子ども達の良い母親にもなれそうな女を紹介する?


おいおい、俺だけじゃ頼りねぇとでも言うのか?








ん?

だったら聞かせろ、ってか?


あれだけ派手に遊びまわってた俺が、ぷっつりと女遊びやめて、拾った子ども相手にいいパパやるようになったのは、なんでかって…




ふん、仕方ねえなあ。


他の奴には話せねえが、まあ他でもない、あんただ。告解代わりに話してやるよ。




ただ、素面じゃ話せねえな、神父さん、そこのバーボンのボトルとってくれ。

は?もう随分呑んでるんじゃねえか、って?


バカ言え、バーも経営してるカジノのオーナーが、ワインごときで酔えてるようで、商売成り立つかよ。



そら、神父さん、あんたも飲みな。固いコト言うんじゃねえよ…バーボンは強すぎる?仕方ねえな、そら、白か赤かロゼか、どれがいい?


















俺はよ、“世界一の美女”を嫁さんにしようと思ってた。




そら、いきなり説教始めようとすんなよ、神父さん。


“た”って言ってるじゃねえか、“た”って。




だいたいよ、皮膚一枚の美しさより、魂の美しさを愛せよ、って言われたって、男が美女が好きなのは、女神さまが定めたもうた本能みてえな奴さ。


だからよ、ともかく俺はそう思ってたのさ。




快楽の街ベルガラックにゃ、世界中から山ほど美女が集まる。

なにせ俺は“熊殺し”だから、女コロすくれえお手のモンさ。

そんな中から、バニーだの踊り子だの選び抜いてた俺だ、目が肥えて目が肥えて、そんじょそこらの美女じゃ納得出来なくてよ。



けど、女は山ほど寄ってくる、だか俺はそんな中から、いつか“世界一の美女”を探し出してやると、決めてたのさ。











なあ神父さん、この街に通いつめてたロクデナシを覚えてるかい?



ああ、そう。背の高い、こげ茶の髪をした、マイエラの領主だよ。



傲慢で無礼で我侭で女癖が悪くて口も悪くて、酔ったら暴れ出す、酔わなくても質が悪い、人間としちゃ最悪の部類の男だったが、落としていく金は破格だったからな、カジノとしちゃ上得意さまだったさ。

なに?カジノってのは罪深い所業だって?


はは、人間、何したって、堕落する奴は堕落するさ。カジノだけが悪いんじゃねえよ。






ともかくよ、カジノで盛大に散財して、ホテルの地下の酒場で高い酒を浴びるように呑んで、金貨バラまいては踊り子を食い散らかしていくのが、あの男の基本行動パターンだったからな。



そういや、あの男に身請けされたあの踊り子はどうしてっかな?あの、黒髪の。

踊りは下手だし頭も悪かったが悪い娘じゃなかったのに、何の因果であんな男に付いてく気になったんだろうな。




ああ、そんな事はどうでもいい。

ともかくあのロクデナシはよ、酔うとクダまいて言ってたさ。




「おれの女房は、世界一の美女だ。ゴルドの女神にだって、負けてねえ。」

ってよ。




世界一の美女のカミさんがいるなら、なんでこんな所で人間としての道を踏み外しかけて遊びしてんだ?

俺はどうせ、酔っ払いの戯言だと思って、まともに信じてなかったさ。




ただ一度、あんまりしつこく絡まれたんで


「ぜひいっぺんお会いしたいもんですね。」

ってた言ったらよ、そいつ、ニヤリと笑って…そういやあのロクデナシ、面は割と良かったな。まともにしてりゃ、きっと男前だったんだろう…


「ああ、見せてやる。驚け。」

って言ったのさ。









しばらくして


俺はそんな会話をした事をすっかり忘れてたある日のこと、そいつがまた、ベルガラックにやって来た。




まあ、上得意には違いないからよ、挨拶しとこうと思って、俺はカジノルームに入ったんだ。

そしたら













銀髪の、女神が立ってた。














オーバーじゃねえ、オーバーじゃねえさ!!



男なら誰でも、間違いなくそう思ったさ、アレはよ。

つーかあんたそん時、ベルガラックにいなかったのか?ああ、いなかった…残念だな、生身の女神さまを見れなかったなんてよ。

見てたらよ、神父さんあんた間違いなく、その場で十字切ってひれ伏したくなるくれえの、カンペキな美貌だった。







カジノの照明を浴びてたのに、月光を弾いたように光る銀色の長い髪。

するりと高ぇ、百合の花みてえな長身。

ただ歩くだけで、舞踏会でメヌエットでも舞っているような、優美な挙措。

最上のブルーダイヤモンドみてえな二つの瞳。

それが、リブルアーチの名工だって一生に一度彫れるか、彫れねえかみてぇな、整いすぎた顔に嵌まってるんだ。








シビれたね



いや、マジで痺れた。




俺が捜し求めていた“世界一の美女”が、目の前に存在してんだからよ。





俺がよっぽど不自然に止まってたんだろ、ウチの従業員が心配そうに声かけてきて、俺はようやく正気に返った。



そしてよ、それと同時に、あのロクデナシ領主が“世界一の美女”の手をひいて、俺の前に来るじゃねえか。


ロクデナシのくせに、何“世界一の美女”に触ってやがる、この野郎、俺の拳に力が入ったその時だった。








「ギャリング、約束どおり連れてきてやったぜ。おれの女房の“世界一の美女”だ。」


ガキがとっておきの宝物を見せびらかすような笑顔で、ロクデナシ領主は


にんまり

と笑った。




“世界一の美女”は、心から興味がなさそうに俺とそいつを見てたが、ロクデナシに促されて



「ヴィルジニーですわ。主人がいつも、こちらにはお世話になっております。」

ミスリルの鈴を鳴らしたような声。


天上の音楽みてえな…でも、無機的な声だったな。




それでも俺は、理想の女を前にして震えが来ててよ。

この熊殺しのギャリング様がだぜ?


「カジノオーナーのギャリングです…ヴィルジニー奥様。ご主人にはこちらこそ、いつもご愛顧頂き…」

って、言って、差し出された手に手袋の上からキスするだけで、精一杯だった。


そしてロクデナシ領主はそれを、心から得意げな顔して、眺めてた。










しばらく、“世界一の美女”とロクデナシの亭主はホテルの最高級の部屋に泊まってた。



俺はホテルの従業員に、下にねおかねぇもてなしを言いつけて、用もねえのに“ご機嫌伺い”に行った。



このギャリング様がだぜ?どんだけの美女か分かるだろ!?




“世界一の美女”は、何を出しても、何を言っても、興味なさそうな顔しかしねえ。


だが、その興味なさそうな顔すら、また、絵みてぇに美女なんだ。






ロクデナシはまた、“世界一の美女”がカジノに興味ねえと見るや、ベルガラック中を連れ歩いた。




どこ行っても、“世界一の美女”が現れるたびに、男も女も、みんな彼女に注目する。


そんたびにロクデナシの顔にゃ、心から得意そうな表情が浮かぶ。


そして、そうしても何しても、“世界一の美女”には、得意げな表情すらうかばねえ。むしろ、うんざりした表情がちらりと顔を出す。

それもまた、とびきりの美しさなんだけどな。



そして、“世界一の美女”なてめえの女房のそんな顔を見るたびに、ロクデナシの顔には怒りの表情が浮かぶんだ。







え?そんなに付いて回ってたのかって?

たりめーだろ。俺の理想の女がこの世に存在したんだぜ?そりゃ、付いて回るさ…俺は男だからよ。





ただな、そこで気付いたのさ。



この夫婦にゃ、“感情の交流”って奴が一切ねえな、

って。



愛情込めた仕草はもちろん、怒りすら、“世界一の美女”は亭主に向けやしねえんだ。


ただただ“無関心”さ。












ホテルの予約は翌日の午前までだってぇ、晩。



ロクデナシは“一人で”いつもみてぇにホテルの地下で呑んだくれてた。


そして俺は、そこへ行った。




「ギャリング、おれの女房は世界一の美女だったろ?」

バーテンですら視線合わせねぇくれぇのヤバい酔い方だったな。


おれが頷くと、ロクデナシ領主は満足げに頷いた。

「そうだ、ヴィルジニーは世界一の美女だ。ゴルドの女神と同じ…いや、それ以上の美女だ。最初に会った時からそうだった…」

ロクデナシは俺に、“世界一の美女”がいかに美しいかを弾けるように語り…いや、叫び始めた。




そして

「そしてあいつはおれの女だっ!!あいつを女房にするために、おれは家産を傾けたんだっ!!強欲なあの実家め、結納金をふんだくりやがって…だが、あいつはおれの女だ。おれが“買い取った”んだからなっ!!!」








俺はよ、神父さん。

酒飲んでクダ巻くあのロクデナシが可哀相になってきちまったんだ。




多分、どっかの貧乏貴族の令嬢かなんかだったあの“世界一の美女”に一目惚れしちまったあいつは、向うの貧乏さに付け込んで、莫大な結納金を払って“世界一の美女”を嫁に取ったんだろう。

だけど、恋焦がれたはずの“世界一の美女”は、金で“手に入れる”ことは出来ても、いっこうに自分に興味を示さねえんだ。

何をしても、何をしても、全く!!






俺は、“世界一の美女”に一目惚れした仲間として、ロクデナシに初めて共感感じてな。

部屋によ、“世界一の美女”を迎えにいったんだ。



泥酔してる亭主を、迎えに来てやって欲しい、ってな。






「そう。」

ミスリルの鈴のような麗しくも無機質な声は、てめえの亭主が地下のバーで呑んだくれてるって聞いても、興味の素振りも見せなかった。ああもちろん「主人がご迷惑をかけて」なんて台詞もナシさ。


俺は言った。

いや、説得した。


最後にゃこう言ったさ。




「奥さん、あなたのご亭主でしょう!?」

“世界一の美女”は答えたね。





「それを私がいつ、望んだと言うの?」




腹立ちまぎれの声じゃなかった。

絶望的に、無関心の極みの、でも、女神さまのような綺麗な声だった。















あの夫婦がマイエラに戻って行った時、俺の心から「世界一の美女を嫁さんにしたい」って思いは、消し飛んでた。







俺はよ、“世界一の美女”を手に入れるために、金積むのが悪いたあ思わねえよ。

美女にゃ、そんだけの価値はある…怒るなよ、神父さん。




ただよ。

そうして“手に入れ”た後で、あんな態度とられたら、たまねえな…と。




“手に入れ”て、


愛の言葉を囁くことも

贈り物を贈ることも

共に生活を送ることも

よそに女や子ども作ることも

破産せんぱかりに散財することも

いっそ、殴りつけることも



女に、なんの影響も与えらんねえんだとしたら…こんなにたまんねえ事はねえよな。




そりゃあよ、そこできっぱりと諦めをつけて、叩き出せるんなら、それはそれでいいさ。


ただ、男ってのはバカだからよ、そんな勿体ねえことは、なかなか出来ねえのさ。

ましてや相手は“世界一の美女”だ、手放して、他所の男に取られたら…そう思うと、“俺の女房”ってえ場所から出すのも怖え。








あのロクデナシはよ、だからこのカジノに来てたんだろうな。


カジノで散財して、酒飲んで、女抱いて…でも、あいつはちいとも楽しくなかったのかもしんねえ。




あのロクデナシはよ、ただ、あの“世界一の美女”の関心を、少しでも引きたいだけだったのかも…な…

“このロクデナシめ”って関心ででもいいから、よ。
















なんて気分でいたときに、あの子らが教会の前に捨てられてたんだ。




え?それとこれとが、どうして繋がるのかって?



へへ…これが照れくさいんだがよ、一言で言うと「愛」が欲しかったのさ。



それは立派な心がけです

って神父さん、ソコは笑うトコだぜ?大真面目にコメントすんなよ。




ほらよ、いい加減に女遊びにも飽きが来てたってのもあるしよ。


何より、あんだけどうしようもねえ…腐ってるとはいえ…「愛」を見た後なんでな、無条件で愛したかったのさ。

俺がカジノオーナーで財産家だとか、そんな事はまったくわからねえ“無垢な赤ん坊”相手によ。








あ?だったらやっぱり家庭を持て?

しつけーな、神父さん。だから俺は愛に破れたって…なに?普通の女は、愛情を注いだら、ちゃんと俺を愛するって?

おいおい、俺の気持ちはどうなるよ。



あんたは口が固ぇし、俺も酒入ってるからバラすがな、俺の手のこの火傷傷…こりゃあよ、ギャリング家を継ぐための儀式でついたモンでな。まあ、儀式の試練で怪物を二匹ばかしブチのめした後に、俺のご先祖…七賢者ギャリングだと思うがよ、そいつからのメッセージを聞いたんだ。

なんて言ったと思う?








子孫を絶やすな







だぜ?






ご先祖の仰ることは尤もです

おいおい神父さん、あんたはそう言うがよ…そりゃな、俺だって造る気になりゃあ、十人でも百人でもこさえてやるがよ…あんた、“血族を絶やさない為”だけに、子どもつくんのは、女神さまのご意志に叶うと思うのかい?




ほーら詰った。


そうさ、子どもには愛情がなきゃいけねえよ、愛情が。




そして、俺の今の愛情は、俺の可愛い可愛い…たまに憎たらしい、フォーグとユッケに向いてんだ。俺の家族はあいつらさ。それで十分、なんか文句あるかい?













おお、大分顔が赤くなってきたな、神父さん。ちよっと飲ませすぎたかな。

それ、責任とって、俺が送ってってやるよ、肩貸しな。













なあ…神父さん…あ、やべえ、相当回ってるな。


まあいいか、独り言で。




あのロクデナシのマイエラの領主に身請けされてった黒髪の踊り子な、あいつ、孕んでたみてえなのよ。



今更なんだがよ、話してて思ったんだ…あのロクデナシ、わざと黒髪の踊り子を孕ませて、連れてったンじゃねえかって。

そして、あの“世界一の美女”に当て付けたんじゃねえかって。



嫉妬したのか、当て付けになったのか…俺は知らねえがよ。















可哀相だよな。


当て付けに孕まされたあの黒髪の踊り子も。

当て付けでこの世に生み出された、その子どもも、な。





まあ、関わることもねえだろうが、よ








2007/ 8/20




一言要約「子育てに最も必要なものは愛です」

兄弟父とククール母とマルチェロ母の話+ギャリングさんとベルガラックきょうだいの話。
とある29歳男性が言いました。
「今までいろんな女性と付き合ってきたけど、30を前にして思うことは、やっぱ女性は、見目形より愛嬌だと思う」
拙サイトのククール母は、見た目の美しさに反比例して「結婚したくない女度」の高い女性です。そして、兄弟父とククール母の関係は、兄弟の関係にクリソツなことクリソツなこと…
“無関心”←“かまってほしくて、悪いこと”
ってあたりが、とっても、ね。
ギャリングさんが結婚しなかった理由はそれに加えて、「血族を絶やすな」というご先祖の遺詔がウザったかった、んじゃないかと思います。でなきゃ、女に不自由しない環境で、捨て子を可愛がってるのにわざわざ実子を作らなかった理由が分からない…

という訳で、また捏造人間関係(ギャリングさんと兄弟父は知り合いだ)をつくってしまった…けどね?あんまどこのサイトも書いてないけどね?カジノのお得意様なんだから、少なくともギャリングさんは兄弟父の事を知っててもいいと思いません?(父の方が存在気にしてたかは分からないけど)
しかし、兄弟父といい、チャゴスといい、客層いいけど悪いなあ、このカジノ。

ちなみに、こうして愛情一杯に育てられた子ども達がどうなったかは、「三ブラコン経綸問答」および「お茶の時間 at 大王イカ」をご覧下さい。
ギャリングさん、子ども達は、強く生きてます!!

ついでに、「愛のない作成」をされてしまった子は、残念ながらギャリングさん、あなたとは“杖”つながりで関わっちゃってるのですよ…ご愁傷様


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