三ブラコン経綸問答




竜骨の迷宮でのギャリング兄妹イベントが終った直後のベルガラックでのお話。
もちろん、DQ8世界でのブラコンと言えば、一にククール、二にゼシカ、三、四がなくて、五に…
ついに、ついにっ!!拙サイトで冷遇され続けた“あの人”の語り話ですッ!!
ちなみに、拙サイトの主人公の名前は“エイタス”です。











「なんだって…!?もっぺんゆってみやがれ、エイタスっ!!」

ククールの兄ちゃんが、血相変えてエイタスのアニキにくってかかる。

美形の怒りの形相ってのは、また違った怖さがあるもんでヤスが、さすがはエイタスのアニキ、腹が据わってらっしゃるんで、小揺るぎもしねえ。



「分った、なら何度でも言うよ。…竜骨の迷宮で、君とゼシカのそれぞれのお兄さんについてのお話は、重々伺いました。だから、宿に戻ってまでお兄さんトークで盛り上がるのはやめてくれないか?僕もヤンガスも、あそこでの探検でクタクタなんだ。」




竜骨の迷宮…

カジノの新オーナーになるのは兄フォーグか、妹のユッケかっていうのを決める儀式の為に、アッシたち一行は、竜骨の迷宮ってぇ、竜の死体がゴロゴロしてる気味悪ぃ迷宮に挑んだんでさ。

ま、エイタスのアニキがいるから、迷宮の魔物どもは、ちょちょいのちょい、でヤしたが、問題は、そこで交わされてたククールとゼシカと、そしてユッケの嬢ちゃんの会話だったんで…



「オレが問題にしてんのはソコじゃねえっ!!その後てめぇ、なんつったっ!?」







いやあ…なにせ、兄と妹の喧嘩だから、そりゃあ、アッシみてえな天涯孤独の奴じゃねえ、兄持ちの奴はそれぞれ思うところもあったんでガシょう…ね。

ユッケの嬢ちゃんも交えて、兄トークで盛り上がりまくってたんでさ。




ま、迷宮での冒険は、結局、兄妹仲良くカジノを経営していこうってぇ、なんとも泣ける、“いい話”で幕を閉じたんでヤスが、問題はその後!!






依頼のお礼にと、カジノのコインを貰って、ベルガラックの宿に戻ってきた…そん時に、ゼシカが言ったんでガスよ。




「やっぱり、ね。どんなに喧嘩したって、きょうだいってやっぱり、仲直りするのよ。」


ククールがそれに答えたんでさ。


「毎度まいど、そんなに上手いコト行くワケねえだろ、ゼシカ。今回のはたまたまだよ、“たまたま”!!」

「何よ!?」

「何だよ!!」






でまあ、それから五時間も延々と“きょうだいとは何だ?”討論が交わされて…とうとう、温和なエイタスの兄貴も怒り心頭に発されたってワケでさ。







「…君たちが、“お兄さんが大好き”なのは、もうよぉく、よぉおおっくっ!!分ったから!!」


「だからっ!なんて君“たち”なんだよっ!!!?兄貴が好きなのは、“ゼシカだけ”だろっ!?オレはオレの兄貴なんて、ちいとも好きじゃねえってのっ!!どうとも思ってねえってのっ!!」


エイタスの兄貴の表情が、“やれやれやれ”と書いたようになる。



そりゃあ、そうでしょうなあ。

あの会話…というか、怒鳴りあい?を聞いて、

“この人って、お兄さんの事なんてどうとも思ってないんだ”

なーんて呑気な感想、アッシだって出来やせんぜ。



「エイタス、ちゃんと訂正しろっ!!」


おおっとぉ…ついに胸倉掴みやがった。

いくら旅の仲間とはいえ、エイタスのアニキに手ェ出したら、タダじゃおかねえぞ…


アッシの目に殺気が浮かびやしたが、さすがエイタスのアニキは冷静でやした。

その瞳でアッシを制されると、ククールに向かって、言ったんでさ。






「ククール…君は子どもかい?子どもみたいな駄々をこねるのも、いい加減にしてくれ。」





「…オレより三つも年下のクセに、エラそうに言うなっ!!」



なんて言いつつ、ククールはアニキの胸倉から手を話すと、代わりにカジノのコインを引っつかんだんでさ。


「オイ、ククール。どこ行く…」

「カジノ!!」


そして足早に、部屋から出て行ってしまったんでガス。






「ちょ、ククール、待ちなさいってば!」

追いかけようとするゼシカに、アニキは声をかけなさる。


「もうほっといたら?」

「何よそんな…そんなコトしたら、あいつ、カジノのコイン一人で使っちゃうわよ!?」

「…もういいよ…どうせ僕、カジノ行くつもりないし。」

「よくないわよっ!!みんなで稼いだモンなんだから、みんなで使うべきでしょっ!?」


そしてゼシカも、だだだ、とククールをおっかけた。








「ふう…」

エイタスのアニキは、心底疲れたって感じで、ベッドに横になられる。


「いやあアニキ、しかし見事な一喝でげしたね?」

アニキは、疲れた笑みを浮かべた。


「ホント…ボクより三つも年上なのに、お兄さんの事になると途端に子どもになるのは、そろそろ勘弁して欲しいなあ…」

「まったくでガスなあ…アッシはきょうだいなんていたコトぁねえから、よく分りやせんが…」

「…僕も分かんないんだけどね…」


でも、ちょっと度外れ過ぎると思う…あのお兄さんへのこだわりっぷりは。


アニキはそう言って、布団を掛けた。


「ゴメン、ちょっとしんどくて機嫌悪いかも。」

「いえいえ、アニキは迷宮内で鬼神のごとき大活躍でいらしたから…」

「だから、もう寝るよ。ヤンガスも…あの二人の事はほっといて、休んだほうがいいよ?…体力と気力の尽きるまで語り合ったら、きっと仲直りすると思うから。」


カジノの他のお客さんには迷惑かもしんないけど…




アニキはほとんど独り言のようにおっしゃって、眠りに就かれましたが…


すいやせん、アニキっ!!

アニキのご眼力が正しいコトは重々承知いたしておりヤスが、男ヤンガス、やっぱり仲間の喧嘩をほっぽって一人安らかに眠りにつくワケにゃあ、いかねえんでさっ!!




というワケでアッシも、エイタスのアニキの安らかなお休みを邪魔しねえように、忍び足で部屋を出たって寸法なんでさ。
















闇の衣を着てカジノに潜り込むと、ククールはスロットでぼちぼち儲けていたようでガシた。


「ちょっと…聞いてるの、ククール!!」

ククールはゼシカの言葉は無視して、儲けたコインで100コインスロットに移っちまいヤシた。


「ちぇ…」

はずれて舌打ちするククールに、ゼシカはついに怒鳴りつけやした。


「ちょっとぉっ!!100コインスロットなんてやったら、あっ!という間にスッちゃうじゃない!!何考えてんのよ!?」

「…当たるとデカいだろ?」

「外したらどうしてくれんのよ!!このコインは、パーティーのみんなの血と汗の結晶なんだからねっ!」


「コインの五百や六百でうるせぇなあ…もし全部スッたとしても、オレが“カラダで”稼いでやるさ…どうせ、修道院にいた頃はいっつもやってた…」




ぱしぃんっ!!


空を切る音すらした、それはそれは痛そうなビンタでやした。

なんせ、他のお客がみんな注目しやしたからね。




「どうしてそんなコトばっか言うのッ!!」


赤毛とおんなじ色に顔を染めたゼシカに、


「うるせえよっ!!じゃあもう、好きにしろよっ!!」

最後のコインを入れ、回転させたまま、ククールはまたヘソを曲げてカジノを出ちまいやした。



しっかし…ガキでヤスなあ…言い草が。

ま、若いから仕方ありやせんが。




そして、それと入れ違えるようにして、


「ヤッホー、さっそく遊んでくれてるのね♪…ん?表情が暗いゾ?」

ユッケの嬢ちゃんが入って来やした。


「カジノって、楽しみに来るトコだよ?なんでそんなに仏頂面なのさ?」

「…あんたにはカンケーないでしょっ!!」


だむっ!

世界とれそうな拳が、100コインスロットに入りやした。



「ちょっとぉ、その機械高いんだからねっ?壊れたらどーしてくれんのよっ!」

「うーるーさーいーわーねっ!こんなか弱い乙女の拳で壊れるような機械なのが悪いんでしょっ!?」


ゼシカの姉ちゃん…素手で魔物を倒せるお人が、ナニを言いヤスかい?



なーんて言ってるウチにスロットは止まり…




ぴろぴろぴろぴろぴろー…きららん♪




じゃらららららららららららららららららららららら…!!






ゼシカとユッケはしばし顔を見合わせやした。




「ちょぉっとぉー!!やっぱ壊れたわよ、これーっ!!無効よ、むこー!!」

じたばたと怒りまくるユッケの嬢ちゃん。




「…そうだわ、こんなコトしてる場合じゃないっ!!」

ゼシカは立ち上がり、カジノの出口へと走り出しやしたが、ふと気付いたように立ち止まり、


「でも、コレは有効だからねっ!!」

びしいっ!!

と音が出そうにユッケに突きつけて、また走り去りやした。




「うわーん、バカー!!ばかー!!新オーナーになって最初の週の収支が赤字になっちゃうー!!待てー!!」

ユッケも半泣きで追っかけやした。




アッシは仕方ねえので、呆気にとられる受付のバニーの姉ちゃんに言いやした。

「すいやせん、ウチのツレが迷惑おかけしやして…」

「いえ…その…ああ、大当たりが出ましたらですね…その、一応、申告書にサインを…」

「代表者名がいいでヤスかねえ…あの、エイタスのアニキで…」

「いやあ、本当は自筆のサインが宜しいんですけれど、他ならぬあなた方ですから…」



アッシは何枚かの書類にサインをし、ついでに何枚かの書類を受け取らされ、ついでにカジノの他のお客がたにお詫びをしてから、二人…三人でヤスかね?の行方を探したんでさ。


やれやれ…こりゃあ本気で寝てた方が良かった気がマンマンでガスよ。



















行く先はすぐに分かりやした。




「何度も言ってんだろ!!オレはブラコンじゃあねえってばっ!!」

「なによー!!迷宮の時だって、『兄貴が兄貴がー』ってゆってたクセにー、キミ、ほんとヤバいくらいのブラコンだゾ?」

「そーよっ!!ゴルドでもサヴェッラでも、あのどこでも嫌味に遭遇するたびに『兄貴が兄貴が』って言ってたクセにっ!」

「アレは…向こうが構ってきたから、仕方ねーだろっ!?」

「キミから、構って欲しいオーラとか出てたんじゃないの?」

「そーよそーよ!!…ったく、ククール、あんたって、あのどこでも嫌味の話以外のネタ無いワケっ!?」

「いつでもどこでも『サーベルト兄さんが』しか言わねえゼシカに言われたくねえっ!!!!」




あー…ダメだ。ダメダメでガスなあ。

宿の地下の酒場で、例のブラコン三人衆は輪になって激論の最中でやした。

足元には酒瓶がひいふうみい…アッシはもう、数えるのが嫌になってきやしたよ。


酒入ったこの人らに付ける薬なんて…もはやどこにもないんでがしょな。














アッシは、アニキのご忠告を聞かなかったコトを反省しきりでしたが、闇の衣のおかげか…まあ、このお人らはアッシがステテコパンツいっちょでも同じだったかもしれやせんが、まるで気付かれやせんでした。


ブラコンのお三人は続けやす。




「なによー、だってサーベルト兄さんは、世界一、カッコいい人だもんっ!!あんなカッコいい人他にいないわよッ!!」

「…フツー、実の兄にそこまで言う?」

「だって本当よ!サーベルト兄さんは、カッコよくて、アタマが良くて、剣の腕が立って、優しくて…やっぱ他にいないわよ、あんな人!!」

「ほらアレでしょ、ゼシカ。ちっちゃい頃、『あたし、お兄ちゃんのお嫁さんになる』って言ったクチでしょ?」

「当たり前じゃない!?実の兄さんでなかったら、絶対!!他の人なんかに渡さないわ!」

「…ゼシカ、ずっと思ってたんだけどよ。もしかして、君があの…ラグザット?みてえな変なのと結婚させられかけてたのって…よ。」

「なによー、今更あんなののコト、思い出させないでよ!!」

「アレだろ?君の“大好きなサーベルト兄さん”に縁談が入るたびに、邪魔したからだろ?」

「なによっ、ジャマなんてしてないもん!ただ、お母さんってばシュミ悪くて、サーベルト兄さんとは到底釣り合わないような人ばっかりと兄さんの見合い持ち込むから、“正当なハンタイ”をしただけよ!!そしたらお母さんてば、

『仕方ありません。先にゼシカを片付けることにしましょう』

って…人を粗大ゴミみたいにっ!!」

「…強度のブラコン…」

「そうだっ、ゼシカだって充分ブラコンじゃねえか!」


いやはや、兄さん大好きな妹を持った兄貴も大変でがすな。

不謹慎な話でやすが、あのままサーベルトの兄さんが生きてたら、そりゃあ壮大な小姑と嫁の大戦争が勃発して、神経すり減らしてやっぱり若死にする羽目になったかもしれやせん。



「なによー!!あたしはサーベルト兄さんが大好きなコトは否定しないわよっ!!否定したのは、あんたでしょっ!?」

あーあー、またこの話になっちまった。



「だからオレは、兄貴なんて好きじゃねえよ。だいたい修道院にいた時に、どんだけあの人に虐待されたか…そんな奴、例え血が繋がってたって、好きになれるわきゃねぇっだろっ!?」

「あたしも、お兄ちゃんにはよくいじわるされたわ…だから、そん時は嫌いになったけど…」

「いじわる?ハンっ、そんな生易しいモンと一緒にして欲しくないね!!文字通り“虐待”だよ!!背骨へし折られかけるわ、鞭打ちを食らうわ…さもなかったら無視だよ。オレの存在なんて、認めたくもねえんだよ、あの人はっ!!」

「うわっ、そりゃ酷いわ。そりゃあ、好きになんてなれないわね。最悪だよ!!」

「そうよ、どんだけ嫌味な奴か…ユッケ、一目会ってみたらいいわ。あんな“どこでもイヤミ”、一撃で嫌いになれるからッ!!」

「あたしのお兄ちゃんは、そりゃ強さはからっきしだけど、アタマはいいし、たまには優しかったりするもん。…そりゃ、いやな人の時も多いけどさっ!」

「ふふん、サーベルト兄さんなんて、いっつも優しくて、アタマは良くて、でも強いモンねー!!しかも美形だし♪」

「あたしのお兄ちゃんも、わりかし美形だゾ?」

「サーベルト兄さんの方が美形よ!!」



「…なんだよっ!!オレの兄貴だって、アタマはとびっきり切れるし、有り得ねーほど強ぇし、爆裂した体力と精神力持ってるし、何でもできるよッ!!」




あーあー…

なんつーか…もう、聞いてられやせんな、恥ずかしくて。




「しかも、男前だよっ!!」

「何言ってんの、デコ広いじゃない。」

「デコ広くたって男前だもん!だってオレの兄貴だもんっ!!」




アッシは、必死すぎるククールの訴えに、うっかり涙が滲むのを感じやしたが、それはそれとして恥ずかしさの余り、穴があったら入りたくなりやした。




「兄貴は…兄貴は…オレに優しくないだけだよ…」




ああ…もう、なんつーか…アタマ撫でたくなっちまうでガスよ。

だが、

女の子ってのは、残酷でヤスねえ。




「それが最悪なんじゃないっ!!」×2




あーあー…可哀想に…




「クソっ!!そーだよ、だから最悪なんだよ!!だから、オレは兄貴なんか好きじゃないし、ブラコンでもないやいっ!!」





かくして、また延々と続くブラコン問答。

酒瓶はどんどんカラになって地面に投げられ、酒が入ってますます感情的に、ますますワケ分かんないまま、三人の声だけがどんどんでっかくなっていきやした。








んで








「おいおい、地下の酒場の酔っ払いをなんとかしてくれという依頼があったので来てみれば…妹よ、これはどういう事だね?」


「あ、おにいひゃーん…なんでもないよー…ちょっと、かぞくというものについて、もんどーしてただけだぞー…」


フォーグは、へろへろに酔っ払った妹を見て、びっくらこいたようでがした。


「諸君、一体妹に何杯飲ませ…うわっ、この酒瓶の山はなんだねっ?」


「いやぁね、お酒呑んだ残り以外のなにものだって言うのよ。」

顔を真っ赤にしたゼシカと、


「まあアレだ、フォーグ。ここはトーゼン、“兄として”お前がここの払いは持つべきだよな!?」

表情は変わってねぇが、言ってることが支離滅裂にも程があるククール。




「そーよねー…」

ゼシカは、真っ赤な顔で色っぽく微笑むと、

「じゃ、フォーグ、ごちそーさまー♪」

と軽やかに席を立ちやした。




「ちょ…何を言っているのか皆目見当がつかないぞ…待ちたまえ、諸君!!」

「おにいひゃーん…だいすきー…」

「うわ、ユッケ!!抱きつくんじゃない…」

「あたし、きまえのいいおにいひゃんがだいすきー…」

「気前もなにも…ちょ…諸君らは、上のカジノで大当たりを出したんじゃ…」



ゼシカとククールは、“きょうだい仲よさそうな”二人を見て、真顔と真顔で言い合いやした。



「見せ付けてくれるじゃねえか…」

「そうよねー、だったら、妹の飲み代くらい、ぽーんと払うべきよねー。」

「兄だもんなー。」

「よねー?」

「仲良しだもんなー」

「仲良しできるんだもんねー」



「待て、待てってば…いいからユッケ、離せっ!!だいたい、妹の分の他に、諸君らは飲んでいないとでも…」



うーむ…

フォーグには気の毒でヤスが、こりゃあアッシも、支払いを請求されねえうちに、おサラバした方が賢明みたいでヤスな。




まあ、妹と仲良くカジノを経営してりゃ、痛くも痒くもねえ金額でがしょ。



あんじょう気張るでガス!!


したっ!!

















ククールとゼシカは、酔い覚ましか、街を散歩してやした。


「…結局…さ。フォーグとユッケって、“仲良くケンカ”なんだよな…」

「羨ましいの?」

「…」

「いいじゃない。あんたとマルチェロも、仲直りすればいいのよ。」

「出来るかよ!!そんな生易しい奴じゃねえの知ってんだろっ!?不可能だっての!!」

「不可能なんかじゃないわよ!!…あたしがサーベルト兄さんともっぺん“ケンカ”するより、全然、不可能じゃない…」

「…兄貴がオレと“仲良く”する可能性は、君の“大好きなサーベルト兄さん”が女神のお膝元から戻って来る可能性より低いと思うね。」



ゼシカはしばらく黙り込みやしたが、しばらくたって違う話題をフりやした。



「結局さ…あのスロット、当たってたのよ?…しかも、大当たりッ!!」

「…そう…」

「ほら、みんなで稼いだコインだから、あんたが当てた大当たりでも、“四人で仲良く分けっコ”だからね?」

「…ああ…」

「…なにと交換したい…?ほら、あたし、グリンガムの鞭とか欲しいけど、まだまだ枚数がたんないから、良かったら貸したげてもいいわよ?」

「…はやぶさの剣…」

「あー、いいなー!!アレ、二回攻撃できるのよねっ?ほらあんたってば、ヤンガスはともかくとして、エイタスよりも攻撃力低いから、やっぱ二回攻撃とか出来たら…」

「…強く…なれる…よな?」

「なれるなれるー!」

「ユッケみてえに、一撃入れられる…よな…」

「…ブラコン!!」

「なんだよ?なんで今の台詞が“ブラコン”になるんだよっ!!」



ああ、竜骨の迷宮で、ユッケの嬢ちゃんが兄貴のフォーグに、会心の一撃級の拳を叩き込んで仲直りしやしたからね。

ま、ククールだって兄貴に拳を叩き込んだら、仲直りくらい出来るかもしれやせんな…


一撃で足りるかは、アッシにゃ分りやせんが…




「今のは兄貴となんのカンケーもねーだろッ!!」

「…分った分ったっ、ゴメンゴメン。」

「へっへー、じゃ、お詫びの印にチューしていい?」

「…どこによ?」

「そりゃあ、君のキュートでセクシーな胸…痛っ!!…なんだよ、どこって聞いたから答えたんじゃねーかっ!?聞かれなかったら、大人しく唇にキスしてるよ!!」

「バカッ!!あたしの唇へのキスは“本当に大好きな人”限定なのッ!!チョーシのんないでっ!」

「オレじゃん。」

「メラゾーマくらいたい?」

「なんだよー…」

「で、どこがいいの?」



「んじゃ、キミの知的でセクシーでかつキュートなおデコに…いてえっ!!…なんで殴るんだよ…」


「あんたってホントーにっ!!“兄貴”のコトしかアタマにないのねっ!!」


「なんでだよーっ!!!?」





アッシはもう、ここで本気で!!心底!!体の芯から!!疲れ果てたので、一足先に宿へ帰還するコトにしやした。
















翌日。

アッシは、精神疲労と肉体疲労で、朝飯も五杯しか喉を通らないほどヒロウコンバイしてやした。



「だから言ったのに…」


アニキは同情を込めた目で、優しくアッシをお見つめになると、



「でも、本当にご苦労さま。」

と、優しくも力強いお手で、勿体無くも、アッシの肩を揉んでくれやした。




ああ、エイタスのアニキ…




一生ついていきやすぜっ!!!!






2006/10/23




一言要約「ブラコンする時は、周囲の迷惑にならないよう、よく気をつけてから行いましょう。」
ノリ軽っ!!ヤンガス語りだからかもしれないけど、本気でノリ軽っ!!『童貞聖者』シリーズとは思えん…
分類が「法王警護期」になってるトコからもお分かりのように、兄の精神状態が相当キてる時代のお話なんですが…当の弟達は…まあ、この年頃の青年達だから当然といえば当然なんですけど、めっちゃ青春真っ盛りな模様。
とりあえず、ナニを見ても兄貴に見えて、ナニを喋っても兄貴ネタになるアホククはさておくとしても、ゼシカのブラコンも相当ヤバいですな…こりゃ、最近まで一緒にサーベルト兄さんとお風呂に入ってたに違いありません…アローザ奥様、不健全なので、やめさせて下さい(笑)
自分が言うのは良くても、人に言われるとムカつくのが身内の悪口。気付いたらやってるのが身内自慢。
大丈夫、ククール♪キミの最愛のお兄さんは、 口が裂けても!! キミの自慢話なんかしないゾ♪
ユッケとフォーグを書けて、ちょっと満足です。あの二人はなんだんだ言って、強くしぶとく生きていくと思ってます。
あ、ちなみに壁紙の花はハス。花言葉は「清廉潔白」。ヤンガス的には少し清純すぎる気もしましたが、花言葉が気に入ってはっつけてみました。 元山賊のくせに、彼の心は水洗便所より綺麗だと思います。




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