貴女と女神さまに愛を誓おう




実は長い間タイトルだけ一覧にあったお話。
旅が成長させたククールと、旅によってククールとの愛を育んだゼシカはついに×××…ってお話です。
ククールは、マルチェロとの“関係”(笑)をどう清算させたか!?に注目してお読みください。











前略、あたし、ゼシカ・アルバートは、あたしの恋人…であるらしいククールってスカした美形に、“女の子の一番大切”…であるらしいモノ(カタチはないけど)をあげてしまいました。









「…」

“初めてのケイケン”は、なんか意外とあっさりと、ときめきやロマンチックとも、そして、恐怖やら激痛やらとも割と無関係に、終わってしまった。




だって、その時あたしが一番に思ったコトは


あ、これはお母さんに怒られる。

だったもの。




躾のめっちゃ厳しいお母さん…特に、男の子と喋ったり遊んだりするのには特に目くじらを立てた“あの”お母さんが、

女の子はお嫁に行くまで、例え婚約者であっても、キスをしてもいけません、なーんて古風なコトを口を酸っぱくして言ってたお母さん。

おかげであのラグサットに必要以上に付きまとわれずに済んだけど…



そんなお母さんが、嫁入り前の娘が、婚約者どころか恋人かどーかもビミョーに怪しい男と、最後までいっちゃったなんて知ったら…






怒るより前に、卒倒しちゃうわね、きっと。










あたしは、「まあ、言わなきゃ分かんないことよ…多分」と思うことにして、窓の外を眺める“こいつ”を見た。




ちょっと…何か言いなさいよ。


いつもならその唇は、無駄にぺちゃくちゃ歯の浮きそうなコト言うじゃない。

そーゆーセリフはねえ、女の子相手なら、こーゆー時にこそ山ほど言うべきでしょ?




まさか…今更、


そのカラダが目的だったんだよ、グヘヘヘヘヘ

とか言い出さないでしょうね?



いくらなんでもそれは許さないからね?

確かにあたしのナイスバディは、ボッキュボンのムテキボディだけどもっ!!

あたしのおっぱいに、男ってば、ムダに目がいきまくるって知ってるけどっ!!




あたしはムカムカしながら、窓の外を半身を起して見るこいつを睨む。




長い間旅を一緒にしてきたけど、いっつもあのアホみたいに真っ赤な聖堂騎士の服をきっちり着込んでたから見たことなくて、お互いに素っ裸になって初めて見る、“脱いでもスゴい”白大理石の彫刻みたいにカンペキなヌードを睨んでやる。




ムカツクっ!!


いくらあたしとタメ張るくらいのナイスバディだからって、それで許してやるコトじゃないんだからねッ!!









「…ゼシカ…」

あたしの視線にとうとう気付いたのか、こいつはあたしの方を向いた。



「なによ…」

多分、こーゆー場にはめっちゃくちゃ“ふさわしくない”可愛くない顔で睨み返すあたし。




でも、ちょっとだけ反省して、あたしはも少しだけ優しい口調で続けてやる。


「…ククール。外みて、なんか考えてたみたいだけど…」

ククールは、すぐさま答えた。






「兄貴のことを、考えてた…」









ぷちっ!!

たぶん間違いなく、あたしのキュートなおデコには、怒りマークが浮かびまくっただろう。




この期に及んで、ナニあたしよりあのイヤミのコト気にしてんのよっ!!

ココは一つ…つーか全部っ!!あたしのコトを考えるのがスジってもんでしょうがっ!!


いい加減にしなさいよ、このスーパーブラコンっ!!しまいにゃメラゾーマを0距離で食らわすわよっ!?




…と、そこまで決意したところで、あたしはちょっとだけ冷静になる。



ま、“あんなコト”があった直後だし、そりゃちょっとくらいあの超イヤミの事が気になったって仕方ないかもしんないわ。

なにせあの超タカビーってば、最後まで可愛気0の科白ぶっこいて去ってったんだもの。

そりゃ、ちょっとブルーで切なくて、優しい慰めが欲しいモン…




あたしはただの慰めかいっ!!

あたしは新たな怒りがふつふつと沸いてきたのを感じた。




カラダ目的って言われるよりムカつくわ、それって!!

だってカラダ目的だったら、少なくとも目的はあたしな訳だけど、慰めだったら、ソレってあたしである必要0じゃない!!


こちとら、遊び人とあんたと違って、初めてだったのよっ!?




あたしは、怒りとビミョーな同情を秤にかけて、


やっぱりこいつには、メラゾーマは気の毒でも、0距離メラミくらいには相当すると結論をつけた。



殺気満々でククールを睨みつけてやると、ククールの月明かりに照らされて神秘的な、青い宝石が嵌めこまれた、白大理石を繊細に刻んでつくったような顔が


くしゃっ

って歪んだ。




「ゼシカ…オレは本当は…本当は兄貴が大好きだったんだ。」

夜の海みたいに静かに波打つ瞳。




「オレは、兄貴に愛して欲しかったんだ…」

「…」










何、カノジョ相手に、実の兄への愛を告白してんのよっ!!

カミングアウトするなら、時と場所を弁えなさいよっ!!



時は、その“大好きな兄貴をブチのめしたその夜”っ!!

場所は、“カノジョといるベッド”でしょうがっ!!









俯くククールは、その銀色の髪が月光に照らされて、その白大理石のような皮膚がそれを反射して、


このまま時を凍らせたら、そのまま芸術作品になりそうなくらい美しかった




流れる涙は、このままお話の中のエルフみたいに宝石になってしまいそうなくらい、光り輝いていた…







けどねっ!!








あたしとあんたのこの時のために、みんながどれだけ気を使ってくれたか知ってんのっ!?



「あんたはみじめに生き延びろ。」

なーんてカコいい科白吐いてから、ずうっと無言なあんたを無言で見守って、


あんたは誰にも聞こえてないつもりだったかもしんないけど、

「オレと今晩、一緒にいて欲しいんだ。」

なーんて科白を恥ずかしげもなくあたしに言ったのを、トロデ王含めてみんなバッチリ聞いてて、


せっかく町に着いたのに、

「とっても月の奇麗な番だね。ちょっと宿に泊っちゃうのは勿体ないね。」

「おお、エイタスよ、良い事をいうのぉ。ここは一つ、月見で一杯と洒落込むかのぉ。」

「さすが兄貴でヤス。ですが、ゼシカの嬢ちゃんは女でヤスから、宿に泊れねぇのはツラいガショう?」

「ははは、その通りだねヤンガス。じゃ、ククール。ゼシカを宿まで送ってあげて、そしてちゃんと護衛してあげてよ。」

「そうじゃのう、ククールよ、なにせおぬしは、聖堂“騎士”じゃからのう。レイディをガードする責任があるわい。」

「まったくでガス。ではアッシは、ひとっ走り酒とツマミを買って来るでガス。シタっ!!」




ってミエミエの口実でわざわざ、宿に二人っきりにしてくれてるのよっ!?

この季節、外はヤブ蚊だって多いってのにっ!!










「オレは…両親が死ぬ前…オレは一人っ子だと思ってたけど、その時からずっと、兄貴が欲しかった。すごくかっこよくて、すごくあたまがよくて、そんでもって強くて、なんでもできて、そんなすごくすてきな…お兄ちゃんが欲しい…って…」


アタシの殺意なんててんで無視して、ククールは俯いたまんま続ける。



何がすてきなお兄ちゃんよ、あの一日法王なんて、ぜんぜん素敵じゃないじゃない。


そりゃ、あのデコはともかくとして、全体のスタイルとかはいいかもしんないし、頭はムダに切れるかも知んないし、そりゃ強いし、なんか器用そうだけど…総合して、ちいとも“素敵なお兄ちゃん”じゃないじゃないっ!!




サーベルト兄さんの方が、百万倍も素敵だもんねっ!!




「…オレのカンは当たるからさ。事実、オレの出会った兄貴はその通りだった。けどさ…オレはそん時は、天使のように愛らしいけどバカなガキだったからさ、一番肝心なコトを女神様にお願いしてなかったんだ。

『女神さま、ぼくはお兄ちゃんが欲しいです…“ぼくの事を愛してくれるお兄ちゃん”が欲しいです』

って…さ…」






「…兄貴はオレを、ただただ憎んだ。虐待して、そして無視して、しまいにはオレを存在ごと抹消しようとした…けど、それでもやっぱりオレは、やっぱりオレは兄貴が好きだったんだ…だって兄貴は、オレのたった一人残った家族なんだから。」

「…」




あたしの舌は、「いい加減にしろ、ブラコン」とは動かなかった。


心からそう言ってやりたかったんだけど。








「オレは兄貴に愛されたかった。兄貴に愛してもらうためなら、オレはどんなことだってしただろう。けど…全然だめだった。兄貴は“オレが兄貴の弟だ”ってコトそれ自体を憎んだから、オレが何をしたって無駄だったんだ。だからオレに出来たことは、ただ兄貴が眉を顰めるようなコトをしでかして、兄貴が無視出来ないようにしただけ。兄貴に無視されるよりは、まだ罵声を浴びせられた方がマシだった。憎まれるのは悲しかったけど…それでも、忘れ去られるようはマシだった。」


ククールは、ちょっとだけ顔を上げた。




「だから、サヴェッラで、誰だ、って言われた時は一番腹立ったさ。いつものイヤミだって分かってたけど、ホントに…ホントに弟であることすら忘れられてたらと思って…だからさ、あん時オレ、いつものクールさはどこへやら、ってカンジでキレてたろ?」

「…そうね…」




そういやあん時のククールは、いっそ笑えるくらいマジギレしてた。

あの時はあたしも、何いまさらマジギレしてんだろって思ったもんだったけど…









「愛して欲しい、愛して欲しい。オレは兄貴のたった一人の弟なんだから、兄貴もオレのこと、たった一人の弟として、愛して欲しい…オレはホントはずうっと思ってた…口には出来なかったけど。」




知ってたわよ、そんなの。

あたしは言おうとして、やめた。


そんなの、一緒に旅をしてたみんなが、嫌というほど知ってたことだけれど。

こいつが

「兄貴のことなんて全然気にもならない。」

って言うたびに、みんなに心の中で苦笑してたもの。




「オレは心のどこで信じてた。兄貴もいつか、オレに優しくしてくれるんじゃないかって。だって兄貴は、オレと会った時はあんなに優しかったんだから…そう、兄貴がオレを、煉獄島に送り込もうとするまでは…」




ククールの顔が、“哀しみ”ってタイトルの絵みたいになった。




「煉獄島で考えたよ…考える時間だけは山ほどあったからな。考えて、考えて、考えて…」




そしてククールは、長く沈黙した。











トロデ王「いやあ…せっかくの月見で一杯じゃというのに…」

ヤンガス「気になって、酒の味どころじゃねぇでガス。」

トロデ「うむ。ワシも若い頃は…(ぽっ)いかんいかん、ついつい飲み過ぎてしもうたわい。」

ヤンガス「ホントに飲み過ぎのせいガスかい?」

トロデ「もも、勿論じゃわいっ!!…だいたいワシはトロデーンの王じゃぞ?そんな…そんな、恥ずかしくて赤面するなど…(真っ赤)」

ヤンガス「いい歳したオッサンが、いまさら恋愛の話で赤面するたぁ、あまり見栄えのするモンじゃねぇぜ?」

トロデ「ば、バカモンっ!!恥ずかしいモンは恥ずかしいわいッ!!…だいたい、おぬしだってそんな悪人面してるおぬしだって、その、あのゲルダとかいうおなごとは…」

ヤンガス「ババ、バカヤロウっ!!ゲルダはただの元商売仲間だよ。イロコイなんてカンケーあるかいっ!!(どきどき)」

トロデ「ほっほーん、そうかそうか(ニヤニヤ)」

ヤンガス「なな、なんだよオッサンっ!!クソっ…やるってんなら相手になるぜ!?」

トロデ「ほっほう、このワシ相手に大きく出たなヤンガスよ。老いたりとはいえ、トロデーン流殺法の達人たるワシの腕、とくと見せてくれるわーっ!!」



エイタス「(いい年をして大人げない二人を優しく見守りながら)早く君が元に戻ってくれたら、僕もあの会話に参加出来たかもね。」

ミーティア姫「ヒヒンっ!!(前足で軽く蹴る)」

エイタス「痛いって、姫。そんなに怒らなくていいじゃないか。」










ククールは、ようやく口を開いた。

「『愛して』って言うのは、間違ってたんだよ。」


ククールは、勢い込んで続けた。

「兄だから弟のオレを愛する“べきだ”って言うのは、間違ってたんだ。義務感じゃ人を愛せない。

『愛して』

って言われたって、愛せるものじゃない。だって兄貴にとっちゃ、“オレが弟であること”が憎しみの対象だったんだから。愛情を強制しちゃいけなかった…オディロ院長はいつも言ってた。

『愛しなさい』

けど院長は、

『愛されなさい』

とは一言も言わなかった。だってそれは努力しても、どうもならないことかもしれないから。あの人は誰も彼も心から愛したけれど、一度だってその見返りを求めなかった。

『愛したから、愛して。』

それがどれだけウザったいことか、多分、あの人はよく知ってんだろう…」




サーベルト兄さんもそうだった。

兄さんは誰に対しても優しくて、誰に対しても見返りを求めなかった。

だからみんな兄さんを愛した。

あたしはでも、兄さんを独り占めしたくて、兄さんが優しくする女の子に嫉妬したりして、兄さんに窘められると、あたしは逆ギレした。


「なんであたしがサーベルト兄さんのこと一番好きなのに、あの子にも優しくするのっ!!あたしにだけ、優しくしてっ!!」



兄さん、ホントはウザったかったのかもしんない。






「兄貴が院長にだけは本当の愛情を向けたのは、あの人が兄貴に無私の愛情を注いだからなんだろう。院長は、兄貴がカッコよくなくても、頭が良くなくても、強くなくても、なぁんにも出来なくても、兄貴を愛したろう。兄貴が院長を愛さなくても、兄貴を愛したろう。…ま、でもその愛情に必要以上に応えて努力しちまって、役に立とうしたり、その無私の愛情を独占しようとしちまうのが、兄貴の兄貴たる由縁なんだろうけどな。」




ククールは“寂しい微笑”ってタイトルがつきそうな横顔をあたしに向けた。




「だからオレは決心したんだ。オレが兄貴に勝てたら、もう好きな人に

『愛したから、愛して』

って言うのはやめようって。

『オレを愛するのは義務だ』

って、相手に強制するのはやめようって。」



「なによ、ククール。最初の方は分かるけど、後の方はワケ分かんないわ。“愛するのが義務”って、一体…」




「『健やかなる時も、病める時も、貴女と女神さまに愛を誓います…』

って、結婚式の時に言うだろ?そしたらオレは、君を愛することが“義務”になる。」



「ナニよ…聖堂騎士のくせに、結婚の話だなんて…」

あたしは、少しドギマギする。



そりゃ、こーゆーコトになったから、ちょっとは考えないでもなかったけど、でも無理だわ。こいつは破戒僧とはいえ“聖堂”騎士なんだもの。お坊さんだから、結婚なんてできない…







「結婚しよう、ゼシカ。」

ククールは突然こっちを向いて、そう言った。





「…無理よ、あんた聖堂騎士じゃない。」

あたしはとっさにそう答えてしまう。



「辞めるよ…元々、そのつもりだった。」

「…じゃあ、あんたその…マルチェロから貰った、その聖堂騎士団長の指輪は…」

「…これ?」

ククールは、大事に指に嵌めた指輪に目をやった。




「…兄貴は“自分には不要だから”オレにくれただけさ。別にオレに騎士団長やれとかじゃないさ。つーか、オレがあーゆー堅苦しくて激務三昧なシゴトに向いてないことは、兄貴が誰よりも一番よく知ってる…」

「でも…」



一応、言い訳しとくけど、あたしは「こうなったからには責任とってよ」なーんて科白吐く女の子じゃない。

だって、あたしは別にこいつに押し倒された訳じゃないし、自分で判断が出来ない女の子でもない。


あたしはあたしの判断で、“こいつと寝てもいい”って思ったんだから、そこに責任が発生するなんて、おかしいじゃない?




「嫌ならそれでいいよ。」

「嫌じゃないっ…けど…」

けど…なんだろう?




こいつがアホなのが嫌?


こいつが下手をするとあたしより“美人”なのが嫌?


こいつと結婚すると、もれなくあの“二階からイヤミ”が義兄になるのが嫌?

あ、それは確かに嫌だわ。とびきり最悪な小舅になりそう。



それとも…

こいつがまだ、マルチェロに捉われてるのが、嫌?







「…確かにオレは、それでもやっぱり兄貴のことが好きだよ。」

あたしの心を見透かすように、ククールが言った。



「だって、そりゃいろんな意味で酷い男なのには間違いねーけど、それでもあの人はオレのたった一人の兄貴だもん…あの人がどんなにその事実を否定したってな。」

「ちょっと、プロポーズしたその口で、実の兄への愛を歌い上げないでよ。」

「だからさ。オレは君とも家族になりたいんだ。だって、オレは君のことは“兄貴より”愛してるから。だからさ、ゼシカ。オレとは“互いに嫌になったら辞められる”家族になろう。」

「は?」

あたしは、ククールの顔をまじまじと見つめた。

ナニ言ってんのかしら、コイツ。




「兄弟はいやでも兄弟だけど、夫婦は別れたら他人じゃん。逆にいえば、オレと君は今は恋人だけど、また他人にも戻れるワケじゃないか?だから、永遠の愛情なんて言葉で、互いを縛るのはやめよう。顔も見たくなくなったら、もうそれはそれでいい事にしようぜ?」








なんてビミョーなプロポーズだろう。

あたしは、喜ぶべきなのか、呆れるべきなのか、イマイチ判断出来なかった。



けど、実の兄に

「貴様と血がつながっていると思うとゾッとする」

なーんて言われてた男の言うことだもの。実は、ものすごく思いやりがこもったプロポーズなのかもしれない。




それにあたしは、

『永遠に君のことだけを愛すると、女神様に誓うよ。』

って言われて、素直に

『嬉しい。』

って、頬を赤らめられる女の子じゃないしね。









「それが永遠じゃない誓いなら、立てたっていいかもね。」

あたしは、普通のお坊様が聞いたら絶対怒るだろう言葉を口にした。


「だろ?」

普通でないお坊様は、あっさり肯定した。




「貴女と女神様に愛を誓おう。オレことククールは、貴女、ゼシカを愛しています。オレくれーカコイイ男は、百になっても二百になっても間違いなくカコイくて、君がメロメロな自信はあるけど、別にそれを強制はしません。あと、二人揃って

『もう、家族やめます』

と女神様に再び言うまでは、ちゃんといろいろ自制したり責任とったりすることも誓います。」



「貴方と女神さまに愛を誓います。あたしゼシカは、貴方、ククールを愛しています。あたしくらいチャーミングな女の子は、五百になっても千になっても間違いなくキュートで、あんたがドキドキな自信はあるけど、それを強制したりはしません。そして、二人揃って

『もう、家族やめます』

と女神様に再び言うまでは、貴方がよその女の子にちょっかいを出したりしたら、〇距離べギラゴンを死なない程度にくらわすので、それは最初にご了承ください、女神さま。」

「…死なない程度にしてくれるなら。」

「ちなみに二度目からは、生きてる保証はしないことにします。」

「分かりました、頑張ります。」




二人きりとはいえ、二人とも素っ裸で大真面目で誓いを立ててるのって、傍目から見たら笑える光景なんだろうな。










あたしは最後に、ククールに聞いた。




「マルチェロのことは、どうするの?」

ククールは、虚空を仰いだ。




「なあ、ゼシカ。兄貴はオレに心配してもらって喜ぶ人だと思う?」

あたしは力いっぱい言った。

「ううんっ!!」




ククールは、プチビターな笑顔であたしに答えた。


「なら先に、暗黒神を倒そーぜ。」

そして続けた。







「あの人は“嫌でも”オレの兄貴なんだから。」







2007/6/24




一言感想「お前は本当に兄貴を思い切ったのか!?」

ククマルからククゼシへ。
ククールはそうなることで成長していった…とべにいもは目論んでいたわけですが、どうもイマイチ、微妙ですな。

「親子はいやでも親子だが、夫婦は別れりゃ他人だ」
はべにいも母の口癖ですが、別れたら他人になれるって、実はとても幸せなことかもしれませんね。だって“嫌でも血がつながっている”ことは、おそらくとても不幸なことでしょうから。

ククールが結局、どういう結論に達したかは、実はまだ微妙に謎です。(用意はしてあるので、いずれ書くつもりですが)「あくまのこ」で大風呂敷を広げたので、ちゃんとアレを回収しなきゃなー

みなさん、ゼシカにアドバイスしたい気分でいっぱいだと思いますので、べにいもが代表でアドバイスを叫んでおきます。
「ゼシカッ!!本当にそれでいいのかっ!?」




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