調教願望


全世界、五億三千八百万人のニノ大司教ファンの皆様、大変長らくお待たせしました!!
ようやくこの「童貞聖者」シリーズに、ニノ様の登場です。
べにいもも、ようやく彼を書くことが出来て、嬉しくてなりません♪(ウキウキ)
ちなみにタイトルをご覧になって
「小学生でも読んで平気だよね?」
と思われた方は、まさかいませんよね…?
あちなみに、拙サイトの「元(マルチェロの前の)」聖堂騎士団長の名前はジューリオです。ニノさまの遠縁という設定で。






















「畜生、畜生畜生、俺は甘すぎた。」
儂の目の前の、“元”聖堂騎士団長どのは、酒臭い息をぷんぷんさせながら儂に言う。

いやいや間違いなく、“叫ぶ”といった方が正しかろうな。


「あんな、メイド腹の卑しい小僧などに、栄誉ある聖堂騎士を名乗らせた事自体が間違いだった。」
酒で充血した目を、更に興奮で血走らせながら、儂のハトコは叫ぶ。

やれやれ、同じ話を何度すれば気が済むんだろうなあ。


「あんな下賤な黒髪の小僧は、地面に這い蹲らせておけば良かったんだ!!ああ、そうだ。」
儂の目の前の、今は辺鄙な司教区の“名目上”の司教どのは、憎悪に満ち満ちた目で空を見つめる。

ああ、そこに“黒髪の小僧”がいるとでも言うように。


「ああ、ああ…あんな小僧は…鞭でもくれてやれば良かったんだ。ああ、鎖でつなぎ、栄誉ある聖堂騎士団の制服を剥ぎ取り、あの無駄な肉のない体が血まみれになるまで鞭をくれてやれば良かった…」
儂の目の前の、負け犬そのものの男は、陶然と続ける。

あの倣岸な瞳が慈悲を乞い、あの感情のない冷然とした艶のある声が哀れみを乞うまで、痛めつけてやれば良かった。」

儂は、目の前の男の陶然とした口調に、見たこともない“黒髪の小僧”の姿を思い浮かべてみる。




意志の強い瞳。
怜悧な頭脳。
卓越した剣技。



昂然とした姿。







「ニノ…頼む、どうか、どうか俺の代わりにあの黒髪の小僧…マルチェロを辱めてくれ。」
卑屈な笑みを浮かべる男に、儂は親戚としての親愛のこもった笑みを浮かべる。

「ジューリオ…儂もお前も、女神に仕える身ではないか?人を辱めるとは、穏やかではないなあ。」


予想通り、怒りを表した出来の悪いハトコを子どもをあやすようになだめながら、儂は何気ない口調で言う。




「辱める事などせんよ、ジューリオ。女神に仕える身で為す事は一つ…」













儂のような尊貴の身には、サヴェッラからこんな田舎への船旅はひどく堪えた。
船着き場についた時には、お付きの司祭どもの半数は船酔いで役に立たなくなっていた。


儂は舌打ちし、港を眺める。









穢れない青色












それは、同じ青色の集団を引き連れてはいたが、
ただ一つ、
昂然と、
ただ僅かの濁りにも染まぬ、青色だった。












「ニノ大司教猊下でいらっしゃいますね。」
穢れ無き青色は、大貴族の出のジューリオの気品など足元にも及ばぬ、完璧に優美な挙措で一礼した。



儂が頷くと、それは、完璧なアクセントと口調で

「マイエラ修道院、聖堂騎士団長マルチェロにございます。以後、お見知りおきを…猊下。」

と、口上を述べた。








ああ、女神にかけて儂の正直な感想を述べよう。

儂は、この穢れ無き青色の男に…










ある種の“恋心”を抱いた。
















「おうおう、よういらしたのう。」
マイエラ修道院の奥、呆れるばかりに質素な部屋に、聖者はいた。


「この度、大司教を拝命したしましたニノにございます。オディロ大修道院長猊下。」
儂の言葉に、小さな聖者は目をしばたたかせる。


「老い先短い年寄に、そんな長たらしい呼びかけをするのはやめておくれ。」
さすが聖者だけあって、口先の世辞は通用しないらしい。

「では、なんとお呼びかれば宜しいので?」
「オディロで良いよ。」
「さすがにそうも参りませんとも…では、オディロ院長、三大聖地の一、マイエラ修道院に足を運ぶ事が叶い、このニノ、感激に堪えません。」


オディロ院長は、子供のような目…おそらくこういう“邪気の無い”目を髭だらけの老人となっても維持できるのが、聖者というものなのだろうな…をしばたたかせた。



「そうかそうか。」
そして髭をしごいた。


「大司教就任の挨拶回りも、本当に大変じゃのう。ワシのようなジジイに頭を下げて回らなければならんからの。」
「いえいえ、そのような…高徳の聖者たるオディロ院長に拝謁が叶いまして、感涙に咽びそうな気持ちでございます。」
オディロ院長は機嫌を損ねているのかと思ってその表情を窺うが、その目にはなんの不快の念もなかった。




「マルチェロや。」
「は、御前に。」
院長は、聖堂騎士団長を呼ぶと、儂を示した。


「ニノ大司教を案内して差し上げなさい。」
「承知いたしました、オディロ院長。」
そして院長は儂に向き直る。



「すまんのう…」
本当に“すまない”という口調だった。

「本当はワシが案内すべきなんじゃが、どうも最近腰を悪くしてのう。まあ、マルチェロの方が案内は上手だから、勘弁してくれんかの?」
「どうぞご懸念召されずに。」
というか、むしろそちらの方が儂には望ましい。


「では、大司教猊下。僭越ながら、このマルチェロがご案内申し上げます。」
儂は、そうして頭を下げたマルチェロの、さらりと揺れた後ろ髪を目で追った。







「こちらは、マルケリウス三世時代の様式で立てられた回廊で…」
滔々と述べ立てられる案内説明。
少しの淀みも無い。


だが儂には、学術的には価値があるにせよ芸術的には無味乾燥な彫刻の説明よりも、説明を述べ立てる生身の彫刻の方に興味関心が向く。




「では猊下、続いて中庭に参りましょう。」
儂の先に立ち、身を翻すマルチェロの団長服の裾が、驚くばかりに典雅に翻る。


ある種の舞を見ているような、優美な動きだった。

儂は、それに思わず見惚れた。







「こちらは、旧修道院から移築された、七賢者時代の物とされる…」
相変わらず、少しの淀みもない説明が続く。

そういえば、マルチェロの博学さは法王の耳にも入っているほどだった。

もっともオディロ院長とは親友である法王のこと、院長からの手紙に頻繁に書かれているだけかもしれない。



「やれやれ、オディロも“孫”に甘いもんじゃ…」



法王が、優しい苦笑を漏らしながら、そう呟いていた事もあった。



孫…なあ…

儂は、ジューリオの言葉を思い出す。


「あの小僧、院長を誑かしおって…」


儂は、ジューリオの愚かさを心中でせせら笑いながら、長身のマルチェロを見上げる。




儂は背丈が低いから、ちょうど、視線がマルチェロの背中の半ばから、腰にかけてまでにくる。


確かに、ジューリオの言う相手があの“聖者”オディロ院長でなければ、充分、男色の可能性を疑いたくなるくらいの、魅惑的なラインだ。






少しの弛みもなく、すっくとのばされた背筋。
それは腰までまっすぐに伸びていて、
そして、弾力のありそうな引き締まった臀部に続く。



これが儂の部下なら、いやせめてサヴェッラの人間なら、撫でさすってやりたいくらいの腰だ。
いや、撫で摩るだけでなく…







「…猊下?」
不審そうな顔で、マルチェロが儂を眺めていた。

「おおすまん、ついつい、七賢者の勲に思いを馳せていてのう…」
「は…」


マルチェロはやや不思議そうな面持ちだったが、気を取り直したように次の場所の説明に入った。










一通りの説明を受け、儂は来賓室で茶を飲む。

しかし、粗末な部屋だ。


「猊下におかれましては、法王庁の豪奢な生活に慣れていらっしゃいますので、お見苦しいかとも存じますが…」
そつなく、マルチェロが言う。


「いやいや、女神の使徒の本分は清貧じゃからのう…」
茶だけは、まあ悪くない味だった。


「ご夕食は、近くの大商人の屋敷を借り受けまして、猊下にもご満足いただけるものをお出しするつもりです。その際には、院長も同席いたしますので、しばらくは私の接待でご容赦下さい。」


そいつは悪くない。




「しかしマルチェロよ、貴殿の噂は法王庁にも届いているぞ。」
「悪い噂でなければ、宜しいのですが。」
礼儀正しく、わずかに目を伏せる、その仕草もいい。


「いやいや、もちろん良い噂じゃ。赤字続きのこの修道院の経営を見事立て直したというではないか。」
「オディロ院長の高徳の賜物でございます。」
優等生の回答だった。






そもそも、マイエラ修道院は聖地ゴルド、サヴェッラ大聖堂と並んで、世界三大聖地に数えられてはいるが、衆愚の輩はともかく、法王庁ではその扱いは前者二つと比べてはるかに低い。

なぜか


金にならない、からである。



聖地ゴルドは、女神像目当てに巡礼が来る。
サヴェッラ大聖堂は、大聖堂と法王目当てに巡礼が来る。

では、マイエラ修道院の目玉は?
“聖地である”という事しかない。



もちろん、神学的に見たならば、聖地たる由縁はあった。

だが、そもそもの修道院を疫病によって廃棄せざるを得なかった事から、マイエラ修道院が聖地たる根拠は大分と怪しくなった。
当時の法王庁では、マイエラ修道院を聖地から外そうという議論すらあったのである。


結局、聖地から外すほどの汚点があった訳ではないとか、二大聖地では格好がつかないとかいう、消極的な理由により聖地のままではあるが、やはり巡礼と寄付を惹きつけるには弱い理由でしかなかった。



結果、法王庁ではマイエラ修道院の事を、赤字聖地だの、ド田舎聖地だのと、せせら笑う事となった。


なにせ、信心に凝り固まった“善男善女”の落とす寄付と、聖堂騎士団に子弟を入団させる貴族からの寄付でなんとか経営が成り立っていたような体たらくであったのだ。



「いやいや、優秀な聖堂騎士団長じゃ。貴殿を抜擢した院長のご眼力も素晴らしいというもの。」
ああ、本当に素晴らしい手腕だ。


儂は、マルチェロを眺める。

あの、形の良い頭の中には、博学な知識と、ずば抜けて回転の早い脳が、ちょうどよい具合に同居している。
本当に、本当に…







手に入れたい…















儂は、にこやかな笑みをとりつくろう。
「いやあ、マルチェロよ。貴殿の才能には、名誉ある聖堂騎士団すら狭いかもしれんのう。」
「お褒めに預かり、光栄です、猊下。」


儂は更に愛想の良い笑みをとりつくろい、マルチェロに囁く。
「いずれは、法王直属になることも出来るぞ…?」




マルチェロは、静かに答えた。


「私をお引き立てくださったのは、オディロ院長です。私は聖堂騎士団長として、院長にお仕えする事で満足しております。」



儂は、心中の不快を悟られないように、さらに愛想の度合いを増し、マルチェロに言う。
「だが、院長もご高齢であられる。もし…」

「ならば、生きるも死ぬるも、院長と共に!」
マルチェロは、強い口調で断言した。









“情”とは、拒まれることでより一層燃え上がる。

儂は、濁りないオディロ院長に対する敬愛の念いっぱいに湛えた、マルチェロの翡翠色の瞳をねぶるように眺める。


穢れない、その青い団長服の中身を見通すように眺める。


澄んだ瞳。
己に恥じることのない翡翠色の瞳に、穢れのない青い服。


ああ、これはやはり、こうするしかない。









ジューリオ、儂は辱めることなどしない。
なにせ、腐っても女神に仕える身だからのう。


ただ、ただ儂は望む。












この男の
体に
心に、
法王庁の“現実”を


注ぎ込んでやりたい…















大商人の屋敷での夕食は、確かに満足のいくものだった。


儂はしきりに、院長とマルチェロを誉めそやし、院長も先ほどとはうって変わって愛想よくそれに応じた。


マルチェロは、やはり完璧なテーブルマナーで、会話に慎ましく参加する。



ああ、余人から見れば、和やかな光景であったろう。












翌日、儂はマイエラ修道院を辞した。

あまりに急ぎの出立であるから、もう少し逗留するように…まあ、儀礼上、引き止められたが、あえて儂は急いで旅立つことにした。





「本当にもう行くのかの、ニノ殿よ。」
「はい、行かねばならぬ場所も多く…」
儂は言いながら、その傍らに当然の様に控えるマルチェロを盗み見る。



ああ、出立を急ぐ真の理由はこれだ。

院長に絶対の忠誠を誓う、穢れなき聖堂騎士団長殿を見て、“紳士的”に振舞う自信が儂には既になかった。







あの穢れなき魂に、色をつけたい。

儂の色に染めたい。

多くの汚濁に染まったわが身を当然とする…そんな魂に仕立て上げたい。








まったく、こんな

調教願望

とやらが沸き起こるとは、マルチェロに会うまでは想像だにしなかった。












アスカンタまで警護するというマルチェロの申し出を、儂は何度も断った。


「女神のご加護がありますように。」
最後には諦めて、そう礼をする、その声を、儂は耳に留める。




いつか、この声を、もっとうわずった声にして、儂の名を呼ばせてやろう。

その時までの楽しみとする為に、耳に留める。







小さくなってゆく影を見ながら、儂は先ほどの声を耳で転がす。


「女神は、それほど慈悲深くはあらせられんのだぞ、マルチェロ…」
堕落し、腐敗した法王庁を思い、儂は薄ら笑った。


























馬車の陰が完全に見えなくなった。

「では院長、お部屋に…」
「マルチェロよ。」
院長は、我が愛し子を見上げ、言う。


「あの人に付いていっては、いけないよ。」


「は…?」
院長の発言を理解しかねたマルチェロは、院長の顔をまじまじと眺めたが、院長の顔にはもう、温度のない微笑みしか残っていなかった。






2006/8/26




三言感想。
院長「いいかの、マルチェロ。ニノ大司教に付いて行ってはいけないよ。お嫁に行けなくなってしまうからの。」
マル「…は?そもそも私は聖堂騎士なので、嫁には参れませんが…」
クク「はいはいはーい!!兄貴は俺が貰って、幸せにしまーす!!」
オディロ院長が珍しく愛想が悪いのは、つまりそういう事だと思います。昨今はアブない人が多いので、知り合いといえども気は抜けませんね。

今回は、設定を作ろう話なので、特に面白い展開とかはナシです。ニノ様はキャラを捏ね上げるのが激しく難しい方なので(つーか、ゲームで見たとおりに解釈すると、ただの強欲でいばりんぼでスケベでアホなオッサンになってしまう)、もう、オリジナルばしばしでイキます!!実はまだキャラ固まってないので、かなり書きづらいのですが。

兄を視姦出来機会は、意外と少ないです。

・最初(マイエラ修道院にまだいる時)
・わんこ戦直前(イライラ団長。でも、ククと背くらべとかいろいろ遊べる数少ない全身団長)
・兄戦(とりあえず、一動作ごとに五分は鑑賞しましょう。)
・モンスター(笑)図鑑「マルチェロ一匹」(ひらひらしてますが、小さいです。拡大機能とか、回転機能とか、メガテンみたくつけてほしかった。)

なんで、今回のニノ様の視姦は、資料が少なくてあんまりエロくないんだと納得して下さい。




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