人はそれを“恋または変”と呼ぶか? その三




最近、このシリーズばっか書いてるのは他でもありません。 ネタがないんです!!
ネタがあったらアホモとか、童貞聖者になりますが、ネタがなかったら惰性で書けるこのシリーズになります。
惰性なんだ、このシリーズ…惰性で進んでるんだ…(ちょっと考えてみる)

注)…アンジェロってのは、リーザス村でマルチェロが使っている偽名です。













ククールとゼシカは 仲良くお手てをつないで リーザス村をお散歩していました。


「良かったわね、ククール。」
「うん、ゼシカ。」


今までも、ポルトリンクやらどこやらでは仲良しこよしで歩いていましたが、実は当のリーザス村では、二人はそこまでいちゃいちゃは出来なかったのです…ええ、 アローザ奥様の御眼が光って いらっしゃいましたから。


ところが、トロデ王が帰ったその日に、奥様は突如仰ったのです。




「ククールさん、貴方をゼシカの正式な婚約者 と認めます。」

と。


そして

「わたくしの事は と呼んで下さいな。」


と、まで言われてしまいました。もちろんククールが、

「ら、ラジャーっス、お母さま!!」

と、やや緊張しながらめっちゃ敬語で返答した事は言うまでもありません。




かくしてゼシカとククールは、晴れて 親公認のカップル となり、

村内を手をつないで歩く

ことも

お休みのちゅっをする

ことも

結婚したら子どもは何人欲しいという会話をする

ことも、

全て、公然と行える立場になった のでした。




「でもなんで、いきなりOKが出たのかしらね?」

「んー、トロデ王と奥様がなんか親しげに話してたから、王がなんかいろいろオレにフォローかけてくれたのかも。」

「うっわー、さすがトロデ王、自称・気配りキング なだけのことはあるわー。あのお母さんの心を解きほぐすなんてー。」




二人は呑気に会話しながら、二人の先を マルチェロにエスコートされながら優雅にお散歩なさる奥様 を眺めていました。





「あら、このお野菜は見た事がないものですね。いつから栽培なさっているのですか?」

「ああ奥様、こりゃあ、そこのアンジェロさんがポルトリンクから輸入してくれたものだよ。」

「そうなのですか?アンジェロさま。」

「はいマダム。」

「荒地でも育つっちゅーけど半信半疑だったけんど、確かにええ育ちだわ。おかげで畑が広げられただよ。」

「この植物は荒地に植えると、土地自体を肥やす働きもありまして、救荒作物としても、また土壌改良作物としても優秀な…」




「あのデコ団長って、ホント、博識で勤勉よね。」
「うん。」

「あれで 電波でさえなけりゃいい人なのに…」

「…うん…でもさ、兄貴も フツーに!! なったと思わない?ゼシカ。」

「そうね、こうやって見てたらフツーの人に見えるわ。」



ククールは、

兄貴は元々、 見た目はフツーの人だよ!!

と言いたい気持ちをぐっとこらえました。




でも、ククールは内心ほっとしていました。

トロデ王にも、 マルチェロは改心しているっぽい と言って貰ったし、あれからは

「王とは何だ!!」

とも叫びません。リーザス村の皆からも信頼されているし、 何より、アローザ奥様といさかいを起こしていません!!



実の兄が、彼女のお母さんと諍いを起こす。そんな哀しい…つかむしろ 不幸なことにならなくて、本当にククールは安心していました。
なんせ、兄も奥様もどちらも 限りなく敵に回したくないタイプ の人間だったからです。






「あらゼシカちゃん、ククールくん。」
「おばさーん♪」
宿のおばさんが声をかけてきました。

「ようやく正式に婚約したんだってね、おめでとう。」
「ありがとー、おばさーん。」
ゼシカが、これ見よがしにククールにくっつくのを、おばさんはニコニコと見つめていました。


「いやあ、ほんとにおめでたいねえ。」

「えへへへへー。」

「奥様もお元気になられたしねえ。サーベルトさまがなくなられてしばらくは、見る影も無いくらい萎れていらしたけど。」


おばさんは、アローザ奥様を とびきり優しい眼差しで にこにこと眺めると続けました。




「いやあ、ホントにお元気になられて良かったねえ。」

「そうね、お母さんも元気になってよかったわ。」

「それに若々しくなられたわねえ。」

「そうねー。」

「ついでに一段とおキレイになられたわねえ。」

「そーかしら。」

「旦那さまが亡くなられてからずっと厳しい顔でいらしたけど、 優しい笑顔になられて…」

「ん?そーかしら?」

「まあ、旦那さまが亡くなられて大分になるから、 そーゆーコトになっても 今更、旦那さまも怒りはなさらないでしょうよ。」

「?そーゆーコト?」

「ほっほっほ、でも奥様も意外とやるわねえ。」

「…なにを?」

「でも、まだまだお若いんだし、 とってもお似合いだわ。羨ましいこと。」

「ねえおばさん、一体、なんの話をしているの?お母さんの話じゃないの?」




おばさんは、きょとんとした顔になると、ゼシカに言いました。



「あらやだ、アローザ奥様と アンジェロさんの話ですよ、決まってるでしょう?」

「…なんでお母さんと Mデコがセットになってるの?」




おばさんは、
何を今更この子は
と、いう顔で致命的な一言を発しました。





「あら、アンジェロさんは奥様の恋人 なんでしょう?」













「お母さんと…デコ団長が?」
「兄貴とアローザ奥様が?」

二人は同時に絶句しまくりました。




















先に立ち直ったのはククールでした。

彼は、視線の先にいる奥様と兄の姿を見て、それが 「田園風景の中の、貴婦人と騎士」 と名づけてもいいような、 絵的にとても麗しい 光景であると思い、

オレ的におっけー!!

という結論に割と秒速で達しました。


そもそも彼は 美しいものは良いものだ という考え方の持ち主でした。ええ、三角谷でも言っていましたが、美しければエルフでもなんでもいいのです。なら、 カノジョのお母さんの寡婦の貴婦人 でも、まるきり構いません。

いえ、そもそも 電波の兄貴が、人間らしい感情を獲得するために恋愛をする なら、かなり



「ええー…兄貴ってそーゆーのが趣味なのー?」



という人と付き合っても笑顔で見守ろうという悲壮な覚悟はしていました。その覚悟に比べれば、全然おっけー範囲です。




ククールは、彼的にはオッケーだけれども、やっぱゼシカは ちょっと 腑に落ちないものがあるだろうなー?と思い、声をかけようとしました。


「いやー、兄貴ってば意外と手が早…」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

地の底から響くような、低い音が聞こえました。











「…ゼシカ…?」

ククールは、恐る恐るゼシカの表情を窺いました。

テンションが300 くらいありそうな、凶悪な顔になっています。


















ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

音が 暗黒神ラプソーン 登場時よりも凶悪そうになってきました。




ぴし

ぴし

ゼシカに微妙にヒビが入り、そこから魔力がほの見えるようになるに及び、ククールは

リーザス村を守らなきゃ!!


ととっさに思い、ゼシカを抱えてルーラでどこぞの荒野へすっとびました。



























到着と同時に、ゼシカの体からは



「嫌あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


という声ともつかないものと同時に、全ての魔力が解放されました。




2006/9/6






いや、見た目的にフツーにお似合いだとおもうけどね。奥様と兄貴。
赤と青だし、赤毛と黒髪だし。貴婦人と騎士だし。
自分原則に頑固なまでに忠実だし、人にも自分にも厳しそうだし。やたらと優雅そうだし。
でも、兄にエスコートされてお散歩なんて、羨ましすぎです、奥様!!




絶叫 その一へ

アローザと元法王さま 一覧へ

inserted by FC2 system