ハッテン場@パルミド その二




「前回の話はククールの夢だと思った」
というコメントを頂きました。確かに、あの兄貴の台詞は全部“凍死しかけたククールの夢”っぽいですよね。

実は、あの兄貴の優しい仕草・台詞は全て、ククールの妄想で、どつかれた事だけが事実…
そう思って下さっても結構です。









殺気まんまんで放たれたマルチェロの切っ先 は、相手の喉笛を抉り取らんばかりに放たれました。

ええ、 バケイションに来といていきなり殺人はどうよ? と思わないでもないですが、そのくらい鋭い一撃だったのです。




ガキーン!!

鈍い金属音がして、マルチェロの一撃は受け止められました。



「…何…?」

暗くて見えませんが、間違いなく、 その秀でたデコと眉間に不快な皺を刻んで 言われたであろう、マルチェロの台詞。


「兄貴の攻撃を…止めた…?」

野望半ばにして潰えたとはいえ、マルチェロは腐っても、 一介の庶子の身から、世界を征服しかけた男 です。

単体ならば、人類最強の生物 でしょう。



そんなマルチェロの攻撃を止めるなんて…そんな輩は…






「…やっぱり…アンタでヤしたかいっ!?」

想像通りの人物が、そう言いました。




ヒント@:闇の中に浮かび上がるシルエットが、樽っぽいカレです。


ヒントA:“やみのころも”を装備出来るカレです。









「貴様…」

サーベルも殺気も収めずに対峙するマルチェロに、相手は、 ごっつい斧をやはり振りかざしたまま 言いました。



「覚悟しやがれ、この、 人売り野郎っ!!」






ぶうんっ!!



闇と風を切る斧。


うっかり戦闘が始まってしまいそうなので、ククールも放ってはおけません。

兄にどつかれた顔はまだ痛い ですが、痛みを我慢して、はやぶさの剣・改を手に取ると、二人より唯一まさるすばやさで、二人の間に割り込みました。




「兄貴、剣を止め…」

「ククール…邪魔だ。」

マルチェロは、ククールが間に入ったコトなど気にも留めずに、 殺気満々で攻撃を繰り出し、


「うぎゃあっ!!」

ククールはうっかり、体に風穴が開きそうになりました。




「ククール…オイオイ、大丈夫でヤスかい?」

血の繋がった実の兄は、手加減すらしなかったというのに、赤の他人の方は気遣って、斧を収めてくれました。




「うう……オレ、オレ、今、血には何の意味もない って言葉の真の意味がめっちゃ分った…(泣)」

「なんの事だかアッシにゃよく分りやせんが、ククール、あんたの心の痛みは、このヤンガスにしっかと伝わって来やしたぜ。」

「ヤンガスー(泣)」

ククールは、ヤンガスの 呪われし脂肪のついた腹 に抱きつき、思いっきり泣きました。





「おお、ヨシヨシ、相変わらず虐待されてヤスなあ…」

その太い腕でククールをあやしながら、ヤンガスはマルチェロに向き合いました。


「相変わらず、血も涙も兄弟の情もない奴でヤスな、マルチェロ。」

「失敬な。かつてに比べ、 我ながら有り得んほど、ククールへの対応が柔らかくなったというのに。」

「うう…ウソだよう… 兄貴はオレへの当たりも、腹の肉も カッチカッチに固いようッ!!(泣)」


ヤンガスの ぶよぶよだけれども、彼の心のように柔らかく、そして温かい腹の肉 に顔をうずめながら、ククールはヤンガスに訴えます。




「そいつは酷えなあ…けど、人当たりを固くすると腹の肉が固くなるんなら、アッシもそうしやしょうかねえ…ほれ、アッシもあの旅が済んでから、ますます腕と腹が弛んで…」

「腹の肉の話などどうでもいい!…が、どうやらサウナは贅肉太りに良いらしいぞ。」

「アッシも、あんたにゃ他に聞きたい事が…ちなみにその“さうな”ってヤツは、どこでやってるんでやすかい?」

「それはこちらの台詞だ。私の命を付け狙うからには、それ相応の理由と覚悟が…そこの井戸の中にサウナはあるぞ。パルミドで健康を追求する漢の会 という団体が主催していたから、良ければ顔を出してみてはどうだ?」

「おおうっ!!理由はバッチりあるぜっ!!いいかっ!?…おお、そりゃカラダに良さそうでやすなあ。用事が済んだら行ってみるコトにしやしょう。」




「…いいから、 腹の肉の話は、もういいから!! さっさと話進めろよ、二人とも。つーかヤンガス、人売りってなんだよ?」

さすが同年輩だけあって、 中年太りと健康には共通の興味があるらしい二人 に任せておくと話が進まないので、ククールは口を挟みました。




「うん、そうでガス。…そもそもパルミドってのは、悪徳の町だけあって、悪事にゃ事欠かねえ町なんでガスが、最近…更にろくでもねえ犯罪が出て来たんでヤス。」

「それが貴様が言った、人身売買だと言うのか?」

「おいおい、まさか兄貴が人身売買に関わってるとでも言うのかよ?なんの証拠があって…」

「証拠はありヤスぜ…」

「…何?…言ってみろ。」

不快そうに眉を顰めるマルチェロに、ヤンガスは指をつきつけました。



「顔でガス!!あからさまな悪人顔でヤスっ!!」



















重苦しすぎる沈黙の中、


スカラ

マホカンタ

ほのおの盾

こおりの盾

ふばふばチーズぅ


ククールは、最悪の事態を想定して、とりあえず、出来うる限りの防御の手段を整えました。



















「…確かに私は悪人顔かもしれんが…」




マルチェロは、 かつての彼からは想像もできないような殊勝過ぎる台詞を吐きました。



「そうだよヤンガスっ!!(モグモグ)確かに兄貴は、 どっからどー見ても(モグモグ)善良な市民にゃ見えねーけど…」

「大きなお世話だっ!!」

「ふぐおっ!!…ごふごふごふごふっ!!」

兄に鳩尾に強烈な一撃を、サーベルの柄で叩き込まれ、ククールはふばふばチーズが器官に入り、呼吸困難でのたうちました。


2007/1/3




ヤンガスとマルチェロって、同い年くらいだと思います。
ヤンガスの方が見た目はオッサンですが、マルチェロの方が性格は大人気ないと思います。
つまり、マルチェロの方が“若い”…かな?




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