あばれ牛どりのモモ肉 398G その二

休みって素晴らしい
ちみっこどもが毎日家にいることにうんざりされている世のお母さま方には申し訳ないのですが、あえて叫びます。

夏休み、バンザイ!!!









「やっぱりお邪魔でガシたかねえ… せっかく良い雰囲気でガシた のに。」

「良い雰囲気?…… 一体なんのことだ?」

奥様がお聞きになったら、 最低でもメラミが発動しそうな科白すげえ真顔で発し ながら、マルチェロは焼き肉のたれ(ツインズ味)を手に取り、言いました。




「まだ焼き肉のたれはいるか?、ヤンガス。」

ヤンガスは、

「あ、じゃあちょっとだけ…」

と受け取り、 眼前に山と積まれた焼肉どぼどぼと豪快にかける と、 豪快に口中に放り込み ながら、

「最近、どうも昔ほど体を動かしてないせいか…いや、そろそろ年だからでガスかね、 昔ほど食べられなくなって困るでガス よ。」


「ほう…」

マルチェロは、 なにせマルチェロなので その科白をさらっと流しました。




ククールがこの場にいたら、山ほどツッコミを入れたでしょうに、ね。






超無粋な来客 は、ヤンガスでした。

最も、いくら微妙に鈍感な彼だって、 マルチェロほど鈍くはない ので、自分が 超いい場面 を邪魔してしまったことにはすぐに気付きました。


気付きましたが、時既に遅し。


マダムはすぐに ゴルドでのあの場面でのククールとタメはるくらいの速さ で走り去られ、残されたマルチェロは、


「まあ、食事でも。」

と、言うことになっていたのでした。


いくらヤンガスだって、こんな気まずい場面では あばれ牛どりの全体の四分の一をたいらげるのがせいぜい です。ええ、


彼の胃袋は繊細に出来ている のです。





「ふー、ごっそさんでガス。」

楊枝で歯をしーしーしながら、豪快にげっぷをし、ヤンガスは言いました。


こんな光景をご覧になったら 奥様は間違いなく形の良い眉を顰められた直後にベギラマ でしょうね…幸いなことに、この場にはいらっしゃいませんが。




「いやしっかし、うまい料理でガシた。アンタが作ったんでヤスか?」

「いや、マダム・アローザのお手製だ。」

「ほう、あのゼシカの嬢ちゃんのおふくろさんがねえ…ちょっと意外でガス。」


「ゼシカ嬢の料理の腕は、そんなにひどいのか?」

マルチェロが少し意外そうな顔をします。


「ああ…山賊育ちのアッシはまあ平気なんでガスが…まあ… 人間様の食事というよりは、家畜のエサに分類した方が正しい ような味と外見でガスね。ククールがちいと気の毒でガスよ。」

「なんだ、そんなことか。」

マルチェロは愁眉を開きました

ククールに食わせるのなら、犬の餌でも上等なくらい だ。 なんの心配もいらん」


心から爽やかな口調と表情で言い放つマルチェロ に、ヤンガスは間髪いれずに、


「あんたら兄弟は、本当に仲直りしたんでガスか!?」

とツッコミを入れざるを得ませんでした。










「で、お前は何用でこのリーザス村までわざわざ足を運んだのだ?」

食事もひと段落したので、マルチェロは本題にはいりました。


昔の彼なら、食事などはさておいて、自分が納得するまで来客に訪問理由と訪問意図を語らせていたでしょう。

まったく、彼も 常識を理解するようになったもの です。




「ああ、その事でガスがね。 悪徳の街パルミドで健康を追求する漢の会 のメンバーから手紙を受取ってヤシてね。」

ヤンガスは懐から手紙を出して、マルチェロに渡します。


「ま、アッシは字が読めねェんでアレでガスが、ともかく向こうさんも子供たちが元気に暮らしているか心配しているから、状況報告して欲しいって内容でガス。なにせマルチェロ、アンタは 悪徳の街パルミドで健康を追求する漢の会名誉会員 でガスからね。」

「そうだったな、 光栄なこと だ。」



マルチェロはさらりと手紙に目を通しました。


「とは言っても、特に変わったことはない。 マダムの御好意と、ゼシカ嬢の献身と、村人たちの善意 の元、子どもたちには笑顔も戻りつつある。」

ヤンガスは なんか誰かが省かれた気がする ような気もしましたが、気にしないことにしました。


なぜなら、マルチェロが その形の良い眉目に憂いを浮かべ て、


「もっとも、子どもたちの心の傷がそうそう一息に癒されるわけでもないのだろうがな。」

と口にしたからです。




2007/7/26




パルミドでの経験を通じて…か、いつの間にか仲良くなってるマルチェロとヤンガス。
ククールがいたら、
「血の繋がった弟はオレなのにー!!!」
とダダをこねそうですね。




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