みなさまもご存知の通り、アローザ奥様はとても良識的な方です。
ですから奥様は、今のマルチェロの
間違いなく正気を疑った方がいい発言
を、
ジェントルメンはそんなことはなさらないはずですわ
という、
極めて良心的に受け取り
なさいました。
淑女らしく礼儀正しく硬直なさいながら、奥様は思考を巡らせなさいました。
(子供は何人…ああ、そうですわ。マルチェロさまは、私がまだ娘だった時分には、一体、何人子供が欲しかったかとお尋ねなのですわ。)
国語的には絶対、そんな受け取り方は出来ない問い
でしたが、マダムはそう受け取ることになさい、
レイディな微笑み
をお浮かべになりました。
「まあ、マルチェロさま。わたくしが亡き夫と結婚する前は、一姫二太郎が良いと考えておりましたわ。やっぱり、子供はどちらも欲しいものですものね。でも、やはり女の子の方が育てやすいものですから、先は女の子が良いかと思っていましたのよ。」
マダムのお答えは、レイディとしては完璧なお返事のなさい方でしたが、
視線が微妙に宙をさまよって
おられました。
「でも、サーベルトはとても育てやすい子で…その上、女の子であるはずのゼシカは、対照的に手のかかる子でしたから、言い伝えだって、いつもいつもあてになるとは限りませんでしたわね。」
奥様は、相変わらず微妙に宙に視線を浮かせながら仰り、そして、
レイディはユーモアも忘れてはいけませんわね
とお思いになったのか、にっこり笑って、こう、付け加えなさいました。
「あら、こんな話をしていたら、もう一人くらい子供が欲しい気になってきましたわ。まだ生めるかしら?」
奥様は、
心からレイディに相応しい微笑みと共に
おっしゃり、そしてようやく、宙に浮かせまくった視線をマルチェロに戻す勇気を奥様がお持ちになった、その時でした。
「…」
奥様は、思わず叫びそうにおなりになりました。
奥様に向けたマルチェロの顔が、
悪鬼羅刹のような殺気を撒き散らして
いたからです。
さて、ここでマルチェロを凍りつきながらも見守っていたヤンガスの視点から、このマルチェロの表情の真相を見ていきましょう。
まず、マルチェロは確かにあのような
間違いなく正気を疑った方がいい発言
をしましたが、さすがに頭の回転の速いマルチェロですから、直後に
その発言が意味するところ
を悟りまくったようで、
その顔は、かつて彼がまとった聖堂騎士の制服のように青ざめ
ました。(マダムはごらんになっておられませんが)
あまりに鮮やかな変化に、ヤンガスはいっそ見とれていると、次にマルチェロの顔は、
おのれのあまりにぶしつけな発言に紅潮
し、そして最後に…彼の高すぎる自尊心が、そのような表情の露骨な変化を封じ込めようとしたのでしょう…
悪鬼羅刹のような殺気を撒き散らして始めた
のです。
つまりは、この表情は、シャイ?なマルチェロの
精一杯の照れ隠し
であったのですが、もちろん、そんなことが奥様にお分かりになるはずがありません。
恐怖には卒倒するのがレイディらしい
とお考えになった奥様が、今にも卒倒しようとなさったところで、ついにマルチェロはいたたまれず、失礼の一言もなしに部屋を出て行きました。
「奥様、あぶねえでガスっ!!」
ヤンガスは、自分でもがらにもないと思いつつ、
ナイトのように
貴婦人たる奥様を支えました。
奥様は、寝椅子に横になられると、しばらく沈黙なさった末に、こう仰いました。
「マルチェロさまに、悪魔でも憑かれたのですか?」
ヤンガスは、
マルチェロに対する友情
を重んじて、それに返答はしませんでした。
いくら、つい先ほどから感じ始めた友情とはいえ、
いくら、何を考えているのかまったく読めない男に対する友情とはいえ、
何度か殺されかけた男に対する友情とはいえっ!!
友情は友情、守るべき
それが、
漢ヤンガスの心意気
です。
だから、ヤンガスは決してこうは言いませんでした。
いや、悪魔に憑かれたというか、
元々、あのお人の属性は大魔王でガス
ゼシカとククールと孤児院の子供達が戻ってきました。
子供達は奥様の手料理に舌鼓を打ち、楽しかったピクニックの思い出話に花を咲かせていましたが、ククールはひたすらきょろきょろと、兄の姿を捜し求めていました。
「なーヤンガス、兄貴は?兄貴はどこー?オレ、兄貴と仲良くご飯を食べたいよー」
最初はマルチェロをそっとしておく必要を感じて、ククールの発言を無視していたヤンガスですが、ククールがあんまりうるさく、しかも
「来てくんねーなら、オレが連れてくるー」
などと、
間違いなく、血の雨が降りそうな所業
に出ようとしたため、ついに観念し、ククールを物陰にひっぱってゆくと、ことの次第を手身近に告げようとして…
ククールの無駄によく動く舌の魔術
にひっかかり、結局、全部喋ってしまいました。
もちろん、責められるべきは、騙されやすいヤンガスではなく、
そうだと知りながら、かつての仲間を誑かしたククール
です。
話を聞き終わると、ククールは
美しさだけは絶品な顔をキラキラと輝かせ
ました。
「ようやく兄貴もその気になったんだなっ!!」
彼は、
この世の幸福を一身に備えたかのような笑み
を浮かべると、子供達やゼシカにも聞こえるような、大声で叫びました。
「オレも全身全霊、兄貴を応援するよっ!!!」
「いや…」
さすがに言葉につまったヤンガスが、
まさか、”子孫作成行為”の横で、タンバリンでも叩き続ける気ですかい?
と、自分でもつまらないと思うツッコミを入れようとしたその時でした。
「オレは兄貴の母親違いの兄弟だから、
オレも作成したら、半分はノルマ達成ってワケだっ!!!!」
ククールは、子供たちとゼシカにおもいっきり聞こえるような大声で、そう叫びまくりました。
そしてヤンガスは、
もしかしてアッシは
この兄弟に決して関わってはいけなかったんじゃねえでガスか!?
と、女神さまにお伺いを立てたくなったのでした。
2007/9/16
募集:赤青ブロスの子供の母親になってくれる女性
条件:18歳から閉経までの、健康で良心的で経済的に余裕の有る女性。
赤いのと青いの、好きなほうが選べる上に、今なら、なんとっ!!!好きな場所と体位まで選べますっ!!!
ご希望の方は、健康診断書及び、基礎体温表を添付の上、「赤青ブロスの子供の母親希望」と封筒表に朱書きの上、リーザス村アルバート邸まで。
注)既婚者の方が応募される場合は、必ず、御夫君の同意書をご同封ください。
可愛いベイベエ HIHI! その一へ
アローザと元法王さま 一覧へ