たたかうおとこのこ その二

新年書初め第一作です(新年超早々の今の拍手は、実は旧年中に紅白見ながら書いてたので)
なのに、いきなりエイタスのマルチェロを殺す気満々の攻撃から始まるのが、拙サイト標準です、はい。









ククールは、 美しさは罪!! と思いました。


実の兄と、長い旅を共にした無二の親友が本気で斬り合っている時に、 彼の美貌になんの罪があるのか常人には理解できない のですが、ククール的にはきちんと理屈が通っているのです。




「ああ、オレが兄貴で苦労するのも、兄貴に修道院を追放されるのも、兄貴に煉獄島に突き落とされるのも、兄貴に殺されかけるのも、そんな兄貴がエイタスに食らったら死ぬ攻撃を受けてるのも、 全部オレが美形すぎるのが悪いんだっ!!」






まあ、大人として、ここはスルーしておきましょう、良いですね?








ククールがそんなことで苦悩している間も、エイタスとマルチェロの集中は途切れもしません。




エイタスのギガデインは、静かに、マルチェロを貫く機会を窺っています。









平和に囀っていた鳥たちが、その声を止めました。








草を蹴る音。







「ギガブレイクっ!!」




魔物の一団すら、その一撃でなぎ倒すその一撃を、マルチェロが受けきるのは不可能な筈です。

なにせ、 マルチェロは見た目と内面はどうあれ、もうボスキャラではない ため、二回攻撃は出来ないからです。






「はやぶさ斬りっ!!!」

ククールの声が響きました。




マルチェロは見ました。

赤い旋風 と化したククールが、ギガスラッシュの一撃の前に飛び込んでくるのを。




ククールの愛剣は、二回攻撃可能な はやぶさの剣・改 です。

それで、はやぶさ斬りを行うということはつまり…




四回、剣を振るえるということです。





エイタスのギガブレイクを受ける音が響きます。




1回

2回

3回

4回


「まだ来るのかよ!?」

半分悲鳴を上げながらも、もうククールは 自分の体を張って止めよう と悲壮な決意を決めました。






ぶんっ

ですが、ククールの体は攻撃を食らうことなく、射程範囲外に投げ飛ばされました。


ええ、もちろん、そんな事をしたのは…






剣が、肉に食い込む鈍い音が幾度か響きました。









「兄貴ーっ!!!!!」

ククールは泣きながら、血を流す兄に駆け寄りました。




「兄貴、オレ、オレ、兄貴を庇おうとして…」

マルチェロは、一瞥します。


「お前ごときに庇われるほど落ちぶれてはいない…」

「でも、でも、昔の兄貴だったら、 オレを盾にして攻撃を防いでたっておかしくない…」




ふっ

マルチェロは微笑みました。



「昔の私か…」

そして、青く澄んだ空を眺めます。


「確かに昔の私なら、 お前を盾にして攻撃を防ぐことに、何の躊躇もしなかった だろうな…」

いくら弟を憎んでいたとはいえ、 人間の所業とは思えない言葉 ですが、ククールは大感激です。




「聞いたろ、エイタス。兄貴はこんな風に…」

そして、 ここぞとエイタスにマルチェロがいかに善良になったかをアピール しようとしたところで、マルチェロが言いました。




「で、ククール、一つ言って良いか?」

「なに?兄貴、なんで…」

「誰のデコに髪がないだとっ!?」




ごぐううっ!!




「誰が魔王顔だとっ!?」




ばくぶぐうっ!!!












ぴくぴく

ククールは、反論する暇もなく、 HPがオレンジ になりました。




マルチェロは、剣だのカリスマスキルだのばかりが注目されがちですが、実は格闘スキルも相当高いのです。

御覧なさい、今の コークスクリュー を。

竜神王最終形態すら倒したククールが、HPフルから2撃でこのザマです。









「さすがマルチェロさん。いくらまともには食らってないとはいえ、半分弱くらいは食らっておいて、この攻撃力…」

エイタスも、 思わず感心した ように、見守っています。




「ふん。」

確かにマルチェロは、 立派に血塗れ なのですが、瞳の闘志はいささかも失われていません。




「今の一撃はノーカウントだ。 もう一回来いっ!!」




ふっ

エイタスは微笑み、そして唇に呪文を載せました。












「ベホマズンっ!!」

響いたのは、エイタスのその声でした。




2009/1/3




マルチェロだって気にしてるんですよ、きっと。




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