=(いこーる) その一

恋する男の子は可愛いです。恋する男も可愛いです。さて、では可愛くないのは?
ちなみに今回のタイトル「=イコール)」は、何がイコールかと言うと…









「でも、いざとなるとなかなか勇気ってのは出ないものですね。さすがに結婚式の最中に乱入して

『その結婚はなしだっ!!』

と叫ぶ度胸はありませんでした…というより、 僕よりミーティアの方がよっぽど勇者だった と言った方が適切かな。チャゴス王子が待つ会場に彼女は行かず、僕のところへ来たんですから。」

「…」

「トロデ王は 涙ながらにミーティアを連れて逃げるようかき口説く し…困った王さまですよ、あの人。 そんなところがとても好き なんですけれどね。でも、機先を制されちゃったので、すぐに

『はい』

と言えないでいたら、彼女、なんと言ったと思います?

『そんな、ひどい。』

ですよ?しかも 僕が

『はい』

と言うまでずっと…」



「それは逆に、駆け落ちする気がなくならんか?」

なんとも珍しいことに マルチェロがエイタスにツッコミを入れ ますが、エイタスは涼しい顔です。




「ミーティアですから。」





マルチェロはそこにツッコミを入れるのはやめました。

ちなみに自分だって部下その他の人へ同じようなことをして マルチェロ団長だから と諦められていたのは、言うまでもないことですね… 未だに自分では気付いていないようですが。







「…しかしよくそれでサザンビークとの開戦に至らなかったな。まず、いくらチャゴス王子が 花婿としてもどうしようもないロクデナシ とはいえ、 クラビウス王はかなりどうしようもない親バカ と聞くぞ?そこで怒りだすだろうし。もし仮にそこは堪えたとしても、だ。 国王としての面子は丸つぶれだと思うが。」

「マルチェロさんでも、国王としての面子とか、重んじるんですか?」

「重んじなどせん。ただ、奴らのプライドは 意味もなく阿呆のように高い と思うだけだ。」

エイタスはまたもや 向こうもマルチェロさんにはだけは言われたくないだろうな と思いましたが、口には出しませんでした。




「どうして開戦に至らなかったと思いますか?」

エイタスの少し挑発的な問いに、マルチェロはこともなげに答えました。




「裏工作があったに決まっている。」

「やっぱり分かりますよね。ええ、しましたよ、裏工作。」

「で、何をした?」

「まともに行くと大変なことになるので…」

「で?」

「一人でクラビウス王に会いにいったんです、しかも、夜に。」

「それは正しくは忍び込んだと表現しないかね?」

「そうとも言うかもしれませんね。」

エイタスの答えに、マルチェロはため息をつきました。




「さすが勇者 と言ったところか。」

「え?別に勇気なんて必要ないですよ。 最悪、一人で斬り抜ければ済む話 ですし。まあ、そしたら間違いなく開戦になってしまうのでそれは避けたかったですけど。」

「若いとはいえ無謀なことを…と言いたいところだが、確かに 1:1で剣をちらつかせるのが一番効果的 かもしれんな。」

「この状況で剣をちらつかせたら、 僕って極悪人じゃないですか?」

「そもそもそんな行動に出た時点で、いや、そんな行動に出ざるを得ない原因を作った時点で、立派な極悪人だ。」




エイタスは ほんのり微笑んだ だけで、それにはすぐに返答しませんでした。




「で、まあそんな訳で僕の姿をクラビウス王は見た訳ですが、僕を初めて見たときほど、驚きはしませんでした。むしろ僕の方がそれに驚いて、思わず聞いたんです。

『こんなところに僕がいることに驚かないんですか』

クラビウス王は答えました。

『驚いたら、何か状況が変わるのかね?』

と…というわけで、話の導入は早かったんですよ。」


「エイタス君、君はクラビウス王に何を談判しに行ったのかね?」

「アルゴンリングを見せて、僕が何者かと、そしてエルトリオ王子がどうなったかをクラビウス王に知ってもらいたかった んです。」

「…何のために?」

「だって、 たった二人きりの兄弟 が、突如、行方不明になってるんですよ?やはり、何がどうなったかを知りたいものでしょう?」

「私なら毛ほどもそんなことは思わんがな。」

「マルチェロさんはもう少し、基準を自分以外に置く訓練を積んだ方がいいような気がして仕方がないんですけど。 …まあ、余計なお世話ですね、そんなことは。いや、僕の姿を見てあんなに驚いたということは、クラビウス王もすごくお兄さんのことを気にしていたと思ったんです。」


「気にはかけていただろう。なにせ、 自らの王位の正当性を揺らがしかねん 人物なのだからな。」

「…そうだとしても、生き死にくらいは教えてあげたっていいでしょう。だから僕は、僕の知っている限りの事実をクラビウス王に話しました。そして、クラビウス王も信じてくれたようでした。そしてこう言いました。

『恋で身を滅ぼしたとは…兄上らしいと言うべきか…』

そう、なんだか哀しそうな表情で呟きました。」



2009/1/22




おやー?なんだかクラビウス王話になってきたぞー?




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