蝋燭がひとつ、消えました。
それに気付き、一組のカップルがダンスを止めます。
蝋燭がもうひとつ、消えました。
それに気付いたもう一組のカップルもダンスを止めます。
蝋燭が一つ
止まるダンス。
「…」
ククールがリードするのを止め、ゼシカに目配せします。
「…ロウソクが…消え…」
その言葉と同時に、最後の蝋燭が消えました。
「…どういうこと?」
不安そうなゼシカの声が暗闇に響きます。
いつの間にか、楽隊も音楽を奏でるのを止めています。
辺りは、静寂。
密やかな衣擦れの音と、そしてただ二人だけのステップの音がその代わりに響き渡るのです。
「…何かの呪いじゃねー…よな?」
ククールもゼシカに囁きます。
アローザ奥さまはともかく、彼の兄は呪われる覚えが多すぎて、弟ととしてとても不安です。
まあ、呪いに負けるような人間では決してありませんが。
その不安はお客たちも感じたようです。
ひそひそとした囁きはだんだん拡がり…
さあっ
突如風が舞いこみ、撥ねあげました。
続いて、月の光が風のように舞い込みます。
「あ…」
誰からともなく、声が上がりました。
きらり
マルチェロの身に纏った金色のリボンが暗闇の中、光を受けて輝きます。
きらり
奥さまのお召しの宝石が月光を受けて煌めき、奥さまのステップに合わせてそれが生き物のように撥ね踊っているように見えます。
不安の囁きも、驚きの囁きも、月光の波に押し流されたように消え去ります。
静寂の中、
軽やかな靴音の中、
微かな衣擦れの中、
ただ、光に照らされたほの明るい煌めきだけが、暗闇の中、星のように流れるのです。
するり
金色のリボンの魔法文字がうねるように流れます。
流れた光は奥さまのほの白いお顔を照らし、奥さまの麗しいはしばみ色の瞳を映し出します。
そして、流れた光は奥さまのお口元も照らすのです。
その微笑みも。
奥さまのお召しの首飾りの幾万の小さな恒星のように輝きます。
その輝きはマルチェロの純青の衣服を照らし、マルチェロを優しく包み込みます。
そして奥さまのお召しの耳飾りも連鎖するように輝き、マルチェロの緑の瞳も照らすのです。
そのかつては存在し得なかった愛に溢れた眼差しを。
暗闇の中。
輝くものはそれらだけ。
静寂の中。
響くのはそれらだけ。
一同は感じます。
目を驚かし、心を激しく揺り動かすものではないにせよ、この光景はきっと奇蹟であろうと。
美しいものが、ただ、純粋に美しくある理想を追求して、そしてこの光景になったのであろうと。
これから生きていく幾年月。
いくらでも美しいものを見る事はあるはずですが、それでも、
これほど美しいものは決して見る事はあるまいと。
だから、今、ここに存在する光景は二度とは得難い奇蹟なのだと。
だから一同は、
どんな音楽よりも美しいこの音を、
どんな絵よりも美しいこの光景を、
けっして穢す事のないように、息をつめ、目を凝らして、ただ立ち尽くすのです。
誰が起こした奇蹟なのでしょうって?
さて、どうでしょう、ね。
2009/9/8
文章力以前に、語彙力が足りてない自分に軽く絶望。
なんでお誕生日企画なのに絶望せにゃならんのじゃーっ!!
ほらアレですよ、足りない分は脳内補完
でお願いします。
まあともかく、アロマルのトップにも置いてありますが、結末予測アンケート設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。
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