然れども その三

「本当のエロとは、プラトニックラブの中にある。」
らしいです。理由:コトの結末が 無限大に引き伸ばされる、超ジラしプレイ だから。
そう考えると、この二人って ドエロい?









「それは…」

奥さまは口ごもられます。


「わたくしが

『いやです。』

と申し上げたら、どうなさいますの?」


奥さまの疑問は尤もです。

「好きになってもよいですか?」

「イヤ」

と言われたら、 好きである事そのものを諦めねばならない 訳ですが、そんなことが人の子の身に…



「貴女を愛する事、そのものをすぐさま止めます。」

マルチェロは、 一瞬の躊躇もなく 返答しました。


「…あの…マルチェロさま?好きとかきらいとかいう感情は、そんな 止めると思って止められるものでは…」

「何を仰います、マダム?」

マルチェロは 超心外そうな表情


「私の精神力を甘く見ないで頂きたい。」

と即答しました。




さすがマルチェロです。

人の子の身で、暗黒神の精神支配を拒んだ男の言うことは違いますね。




「人は、他人の感情までは支配出来ないかもしれませんが、自らの心は制御する気になって出来ない事は…」

「あの、マルチェロさま?あなた、ご自分の弟を、ご当人には責任のない理由で憎んでいらしたのでしょう?そこからもお分かりのように、人の愛憎というのは、そうそう自分で制しきれるものでは…」

「何を仰います、マダム。私がククールを憎んでいたのは、憎むのを止められなかったからではありません、 憎むのを止める気がなかっただけの話です。」




なかなか いっそ気持ちのよいくらいの居直り ですね。

まあ、ククールは聞いてないから良いとしましょう。




思わず唖然となさったであろう(暗くてよく分かりませんが)奥さまに、マルチェロは言います。

「貴女を諦める事は可能です。ですが…それはとても辛い事です…」

「…」

奥さまは、マルチェロの肩に手を置かれます。


「…わたくしの気持ちは、先ほど申し上げた通りです。 自分が愛する方に愛されたくない女がどこにおりましょう?

「マダム…」

マルチェロは自分の肩に置かれた奥さまの手を頼りに、奥さまの腕を、そして奥さまの優美な肩を探り当て、抱きすくめました。




「貴女を抱きました。」

「…事後報告ですわね。」

「はい、事前報告ですと、許可頂けないと思いましたので。」

口調も内容も事務的でしたが、奥さまには、 マルチェロのものすごく熱い体と吐息をダイレクトに お感じになりました。




いくら奥さまがレイディとはいえ、 こういう状態の男が、次にナニをしたいか はご存知です、だって、奥さまだって経験者ではありますから。




「マルチェロさま…」

でも奥さまが、 羞恥心とか、その他さまざまな理由 から身じろぎなさると、もう大分と緩んでいた奥さまのまとめ髪が、


はらり

とこぼれ落ちました。




マルチェロの指が、奥さまのこぼれ落ちた髪に差し込まれ、優しく愛撫します。




「マダム…」

灯りが消えていてよかったと、奥さまはお思いになりました。

こんな状況でマルチェロの顔まで見てしまったら、 間違いなく悶絶死する とお思いになったからです。




「マルチェロさま、あの…」

「何でしょう?」

「『思いとどまりなさい』

と申し上げましたら、可能ですか?」


「はい、可能です。」

まったく冷静な口調でマルチェロは答えます。

そしてマルチェロは続けます。


「何度も申し上げますが、 私の精神力を甘く見ないで頂きたい。」

「…」

無理です と言ってほしかった奥さまです。


「私の人生は自制と共にありました。止めろと仰るなら、いつでも。」

「…」

そう断言されると、 何か悔しい 奥さまです。




「…ですが…」

マルチェロの吐息が、言葉の無機質さとは裏腹に 生々しい熱 を帯びています。


「私は今、初めて屈服したいと思っています。そう、この迸り、止め度もない感情に、素直にっ!!」




ぎゅっ。

奥さまは窒息しそうなほど激しく、抱きしめられました。




「…マルチェロさま…」

「…はいっ…」

「…一つだけ、条件があります…」

「…何なりとっ…」

そして奥さまは、マルチェロの耳元に


そっ

と、囁きました。
















「アローザ…」

衣擦れと抱擁の音の中で、

その名前だけは、


何度も

何度も

何度も





2009/10/18




今回はキーボードが進んだ
ともかく、良かったですね、お二人とも

そして結末予測アンケートまだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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