狡猾 その一

うーん…最近こっちのサイトの放置プレイっぷりが上がり過ぎだな。
なんとかせねば…なんとか…









「お祝い頂けて、恐縮ですわ。」

「かほどのご過分なお品を頂戴してしまうなんて。」

「まあ、エステルになり代りまして、お礼申し上げます。」


「…」

エステル姫を抱きながら、産後間もないというのにきちんと正装し、各国の使者のお祝いの言葉をきちんと述べるミーティア姫を見ながら、ククールとゼシカはつつき合いながら会話します。




「…あたし、ほんと、お姫さまに生まれなくていいと思ったわ。」

「だよなー。マジダリィぜ、コレ。」


ゆっくりとミーティアと語り合いたかった2人ですが、どうやら未来の女王陛下はそうもいかないようです。




「この度はミーティア姫におかれましては…」

長々と続く謁見は、まだまだ終わらなさそうです。

退屈した2人は、そっとその場から抜けだしました。




「あら、ククールさんにゼシカさんじゃありませんの。」

にっこり

と微笑んで、ひらひらと手を振る女性がいます。


「……と…」

反応しかねたゼシカに成り代り、ククールが 美青年スマイル を浮かべて、彼女の元へと近づきます。


「これはこれは、麗しのレベッカ。会いたかったよ。」

そして、その手をとって 仰々しくも口付け ました。


「あらいやですわ、相変わらずお上手ですのね。とうにお忘れかと思っていましたのに。」

「何を仰るのだい、君のメガネの似合うその知的な美貌を忘れるはずないじゃないか。」

「ククール… その人いったい、誰カナ?」

笑顔ながら、 明らかに怒りの炎がチラついているゼシカ です。




「うふふ、婚約者さまがお怒りですよ?」

女性は悠然と微笑むと、ゼシカの前でローブの端を掴んで一礼しました。


「とうにお忘れでしょうね。わたし、サザンビーク国王秘書官のレベッカと申します。」

「あ、もしかしてアルゴンハートの時の…」

ようやく何かに合点がいったらしいゼシカに、レベッカは続けます。


「そう、“あの件”では、陛下とチャゴス王子が大変お世話になりました。」

「ああ…こちらこそ失礼しました。ついうっかり…」




ゼシカが「ついうっかり」忘れていたこの女性は、名乗った通りのサザンビーク国王秘書官です。

彼女ことレベッカは、 チャゴス王子がアルゴンハート狩りに行くよ、でもホントは一人でじゃないケドね計画 を知っている、数少ない人間なのです。

サザンビークの国家機密でもあるこの計画を知っているのですから、実は相当VIP…なはずです。




「…だいたいアンタ、なんでそんなちょっとしか関わってない人間覚えてんのよ。」

ゼシカがひそと問います。


「ナニ言ってんだいハニー、 オレはカリスマホスト 聖堂騎士 だぜ? 一度会った女性は忘れないのさ。」


さすが元 マイエラ修道院のお布施集めの切り札 です。

ちなみに、マルチェロは 一度会った人間の顔と名前は忘れない そうです。

まあ怖いですね。




「ああ、そうですわね。お世話になったといえば、先日…」

ぎくうっ!!

ゼシカとククールは同時に冷や汗をかきます。

なにせ、来て欲しいなんて頼んだ覚えはないとはいえ、やって来たチャゴスを

腐ってもサザンビークの王太子を


「ボク ハ ブタ デス。」

とカクカクしながら喋る生物にして帰してしまったワケですから。




知ってか知らずか、レベッカ秘書官は涼しい顔です。


「チャゴス王子が、リーザス村はとても良い所だったとおっしゃっていましたわ。」

「は、ははは…恐縮です。」


「クラビウス王も、チャゴスが何か礼儀正しくなったようだって、お喜びでいらっしゃいましたもの。」

「は、ははははははははは…」


ゼシカとククールは、互いに目配せをしあいました。

コレは何かのワナでしょうか?

いや、ワナに違いないでしょう。


「うふふ、そのうちサザンビークの王宮務めの人間を集めて、リーザス村ツアーでも計画したいものですのよ。」

「…ほほほほ、なぁんにもないトコで恐縮ですわ、ぉほほほほほほほ…」

あり得ないくらい不自然 なゼシカの笑いが空虚にこだまします。












ようやく謁見が終了し、ゼシカとククールがミーティア姫及びエステル姫と語り合えるようになったのは更に後でした。

ひとしきり語った3人(+エステル姫)ですが、


「そういや、今度はトロデ王とエイタスはどうしたの?」

2人がいません。


「お父さまとエイタスは、サザンビークに参りますのよ。」

ミーティアが意外なことを言います。


「…なんで?」

「ああ、今回の答礼訪問?でも、なら大臣でもハケンすりゃいいんじゃねーのか?」

ククールの言葉に、ミーティアが首を横に振ります。


「ええ、普通ならそうしますわ。でもね、このトロデーンとサザンビークはいろいろありますでしょう?ですから、かなり下手に出なければなりませんの。」

「国と国って、ほんっといろいろ大変ね。」

「ええ、本当ならミーティアが行くべきなのでしょうけれど、エステルを生んだばかりですし、何より…ねえ?」

「そーだよな、 あのツラは産後の肥立ちに悪ぃ もんな。」

やっぱり好き勝手言うククールです。




ですが、この訪問があんな事を引き起こすことになるとは、まだまだ誰も想像していないのです。






2009/11/19




という訳で、次回からサザンビーク編です。
アロマルなのにどうして奥さまとマルチェロが出てこないんだ!? と言わずに、しばらくお待ちくださいね。

そして結末予測アンケートまだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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