「ボク ハ レイギタダシク サレ マシタ。ボク ハ ブタ デス。」
カクカクしながら何度も
「ボク ハ ブタ デス。」
を繰り返すチャゴスを目の前にしては、さすがに初孫及び愛娘誕生で浮かれきっていた両名とはいえ、現実を認識しないわけにはいきません。
両名は
チャゴスに負けず劣らずカクカクし
ながら、それでも顔だけはスマイルで
クラビウス王の方に向き直ります。
もちろん脳内では
必死で言い訳を考えて
いますが。
あれだよあれりーざすむらではえきびょうとかはやってて、そのえきびょうはかかったっていのちべつじょうはないけどこんなふうにへんなはつけんとかしちゃうようになるんだいのちにべつじょうはないんだよははは、いやいやふうどびょうだからせかいてきにはしられてないしりかんりつもたかくないからわざわざいうまでもないとおもってちゅうこくしなかったんですけどね、ほら、ちゃごすおうじはけんこうでいらっしゃるからそんなかかるなんてはははは、いやいや、じつはながいぼうけんでわしらがはっけんしたことじゃが、あのむらにはたいこのかいぞくののろいがかかっておってな、むらびととまったくむかんけいのさざんびーくのにんげんがはいるとのろいがかかってこんなふうになっとしまうのじゃよ、いやあ、まさかあんなどいなかのむらにはいりこむさざんびーくのにんげんがいるともおもえずにうっかりしつねんしておったが、いやあもうわけない、しかしたいこのかいぞくにくじょうをいうわけにもいかんしのう、あははははは
なんて、
FC時代の「ふっかつのじゅもん」のごときひらがなの羅列
な言い訳が脳内を駆け巡ったトロデ王とエイタスですが、さすがにそんな言い訳がまかり通ると思うほど阿呆ではありません。
クラビウス王は、
目の全く笑っていない微笑を湛えたまま
しばらくじっとそんな２人の様子を観察し、そして頃合いを見計らったように口を開きました。
「自賛になるが、我がサザンビークは医学も発達しておってな。」
「あはは、そうじゃのう、貴国は豊かな富をきちんと各分野にも配分しておって、まことに偉いのう。」
クラビウス王は微笑みます。
「お褒め頂いて光栄だぞ、トロデ王。何人もの医者にも見せたが、結論は皆同じ。
常人の許容量を遥かに超える苦痛を与えられた
そうじゃ。」
「…」
もちろんトロデ王もエイタスも、実際に何が起こったかは知りません。
知りませんが聡明な２人は、
常人の許容量を遥かに超える苦痛
という単語で、だいたい何が起こったのか理解しました。
「…儂も詳しく知っておる訳ではないがな。」
クラビウス王は続けます。
「何でも
真の拷問
というものは、
肉体の損傷無しに、精神だけに苦痛を与える事
であるとか。世界広しと言えども、
そんな器用な真似が出来る男
はそうはおるまい…と思うのじゃがな…」
ギロリ
クラビウス王はようやく微笑みをその顔から消し、トロデ王とエイタスを一睨みしました。
「そんな真似が出来る人間を、寡聞ながら儂は一人しか知らぬのじゃが。」
バレてるーっ！！
と、２人は思いました。
そして、
全力で青ざめ
ました。
何故って、だってマルチェロは法王庁からお尋ねがかかっている
特級犯罪者
です。
これを匿っただけでも大罪なのに、それに関わっていたのが一国の王族だとしたら、
国の存亡に関わり
ます。
とりあえず２人は、
どんな理由であれ、こんな不用心な事をしでかしてくれたマルチェロを心から恨み
ました。
にっこり
ですがクラビウス王は、また笑顔に戻ります。
「ははは、ご心配召されるな、各々がた。
儂は別に、トロデーンの王族ともあろう方々が特級犯罪者を匿っていると疑っている
訳ではない。」
クラビウス王は再び、
まったく笑っていない瞳
で
にっこり
と笑うと、続けます。
「ま、
あんな事件
はあったものの、
我がサザンビークとトロデーンは友好国
であることに変わりはないし、何より
エイタスは我が最愛の兄の息子
ではないか、あはははははは。」
クラビウス王は、
怖いくらい親しげにエイタスの肩を叩く
と更に続けます。
「聡明な我が兄の息子の君のことだ、言わずとも儂の言いたいことは分かるな?」
クラビウス王は直接は何も言いません。
直接口にしてしまえば、事が公になってしまった時にいろいろと国王として困るからです。
エイタスにもそれは十分分かりましたし、だからエイタスは一瞬の逡巡の後、
「はい。」
と、
ドルマゲスに立ち向かった時よりも更に悲壮な覚悟を決めた表情で頷いた
のです。
２００９／１２／１５
とりあえず、チャゴスとマルチェロに関わると、そのたびにロクなことにならないようです。
そして結末予測アンケートまだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。
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