修羅道とは倒す事と見つけたり その二

結末は決まってるけど、途中の展開がミッシングリングなこのお話です。
でもまあ「書き始めりゃなんとかなるかな」と思ったので、書き始めてみました。

え?
なんともならなかったら?
知らない、そんなの。









「リーザス像の塔に幽霊が出るってウワサがあるの。」

お茶の途中に、ふと思い出したようにゼシカが言いました。


「まあ、それは…」

当然のようにお聞き咎めになった奥さまが、「ある人名」を続けようとなさったのを、ゼシカは慌てて制します。


「ううん、サーベルト兄さんじゃないわ。だいたい、なんでサーベルト兄さんが化けて出なきゃなんないのよ。確かめに行ったポルクとマルクが言うにはね、 長い杖を持った背の高い、多分男 だって…」

「ソレって、 ドルマゲスのおじさんまんま じゃねー?」

ククールの当然予想されたツッコミに、ゼシカは頷きます。


「うん、あたしもそう思った。」

「サーベルトを殺したその道化師は、あなた方が倒したと聞きます。まさかその道化師の亡霊が出たのですか?」

アローザ奥さまがお問いになりますが、ゼシカは首を傾げます。


「だとしたら妙な話だよな。お母さま、オレたちがあいつを倒したのは闇の洞窟って場所で、ここからははるか遠くです。もし亡霊だとしても、今更ここに出る理由がわかりませんよ。」

「でもね、なんでポルクとマルクが気づいたかって言ったら、夜回り中にあの不気味な笑い声が挑発したからですって。

『満月の番に来るべし』

って。でさ、今晩は満月なワケじゃない?だから気になって…」

「は?ヨケー分かんねーし。願いの丘じゃねーんだから。」




カタン

それまで黙って聞いていたマルチェロが、ティーカップを少し大きな音を立てて置きました。


「マルチェロさま?」

「その“亡霊”が出現するようになったのは、いつだ?」

「え?ごく最近。あたしたちがサザンビークから戻って来て、でちょっとしてから…」

「でも気になるな。ちょっくら見に行くか。」

「私が行く。」

マルチェロが、大きくはありませんが有無を言わせぬ声で断言しました。


「まあマルチェロさまお一人で?危険ですわ。」

奥さまがひとく心配なさったお声を発されます。


「マダム、村人が付き添ってくれたとしても、私には無駄なこと。」

「オレオレ、 兄貴の最愛の弟にして、頼りがいのある美青年のオレ が一緒に…」

「一人の方が身軽ですからな。」

マルチェロは、 さくっと軽やかに ククールを無視りました。

どうやらマルチェロは再び、 ククールという生物はこの世に存在しないものと考える方針 でいるようです。

まあ、無駄なストレスを溜めない方針 としては、非常に賢明ですけれど。


「そんなに御心配なさらず、マダム。」

マルチェロは、 蕩けそうな微笑み でマダムに言います。


「ですけれど、マルチェロさま…」

尚も心配そうな奥さまの その滑らかな頬 にマルチェロは手を当てます。


「マルチェロさま…」

マルチェロは、 「こりゃぜってーちゅーの距離だよ、な?ぶちゅって距離♪」 まで自分の顔を近づけましたが、 何故か思いとどまったような距離で止まり ます。


「…マルチェロさま?」

とても不審そうなお顔をなさる奥さまに、マルチェロは再び微笑みました。


「…そう…御心配なく。」

そして、 切なげ にもう一度微笑み、


「本当に、ご心配なく。何があろうとも、 貴女は我が永遠のレイディなれば。」

そして、せっかちな彼らしく足早に支度をしに戻ってしまいました。




「…ヘンな兄貴。」

見ていたククールが先に口を開きます。


「ホントにドルマゲスの亡霊だったとしても、亡霊なんかに負けると思うタマじゃないのにね。」

ゼシカも言います。


「…」

そして奥さまは不安そうに、マルチェロの立ち去ったドアをお見つめなさるのでした。






2010/1/7




『ドラゴンランス英雄伝』のスタームの両親の別れが好きです。永遠の別れになるかもしれないのにキスもせずに抱き合って、
「貴女こそ我がレイディなれば。」
くーっ!!カッコいいよ、ブライトブレイト卿!!

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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