尋問 その二
公式で
主人公大好き
なヤンガスですが、拙サイトでは(でも?)
もっとヤバいくらいに主人公が大好き
です。
ゲルダと結婚して幸せパパになってますが、
「ミーティアも娘も捨てるよ、僕と一緒になってくれないか!?」
って主人公に言われたらどうするんだろう。
って危惧は今回の話とはそれほど関係がありません。
「あ、アニキ!!いきなり拙宅にお邪魔なさるとは、こりゃまったく…」
玄関開けたら即座にエイタス
な状況に、ヤンガスはかなり戸惑った顔を見せました。
「え…
おいゲルダ、お客に茶を…」
「茶ぐらいてめえで入れなっ!!」
そして、
かこんっ!!かこんっ!!(お客さま用お茶碗がヤンガスにぶち当たる音)
ぽすんっ!!ぽすんっ!!(お茶菓子がヤンガスにぶち当たる音)
がすん…「おっとっ!!」(適度な温度になったお湯が入れられたヤカンがヤンガスにぶち当たりそうになったのを、さすがにこりゃ不味いとエイタスが受け止めた音)
という事態が起こりました。
こぽこぽこぽ
平和な湯音が室内に広がります。
「いやあアニキ、お客なのに茶まで淹れさせてしまって…」
「いや、お茶を淹れるのはまったくいいんだけどね…」
こんな優雅なことをしている場合ではないのですが、
急な来客に備えてお茶菓子まできちんと用意出来るステキな主婦になったゲルダの心遣い
を無にするのもどうかという、
入り婿らしい計らい
が働いてしまったエイタスは、自分で自分の行動にやきもきしながら呟きました。
「赤ん坊のウンチ臭い家で申し訳ありやせん。いやあ、よく乳吸って、よくクソたれるガキんこで…」
「ウチも同じだから気にしないでよ。たくさん食べてたくさんウンチするなんて元気な証拠だから。」
だからこんな会話してる場合じゃないんだってば
と思いつつ、ついつい赤ちゃんトークに参加してしまう
新米パパの哀しい性
です。
「いやいや何をおっしゃいヤス、あの馬姫…こりゃ失敬、ミーティア姫とアニキのご令嬢でガショ?
クソというのも申し訳ねえような、フローラルな香りのするウンチが出たり…」
「しないからっ!!」
エイタスは、自分で淹れたお茶を呑み、ゲルダが用意(して投げつけて)くれたお茶菓子を口に入れ、「なかなか美味しいお菓子だけど、どこで売ってるのかな?ミーティアにもお土産で持っていってあげたいなあ。」なーんて
平和な感想
を抱いたところで、我に返りました。
「エステルはフツーの赤ちゃんだよ。いや、その話はいいんだ。子どもとかはどーでも…」
「アニキの大切なご令嬢がどうでもいいたぁ、アッシはこれっぽちも思いやせんぜっ!!」
ヤンガスはみなさまもご存じのとおり
水洗便所のようにピカピカの心を持った善人
ですが、
脳ミソがスライムの経験値程度
であることもまた、みなさまよくご存じのことと思います。
つまり、さっきからエイタスは
子どもより更に大切な話
をしたくてたまらないのに、
それにまったく気づいてくれない
訳です。
困った人ですね。
まあ、マルチェロやククールよりははるかにマシですが。
「いいから黙って聞いてよ!!」
業を煮やしたエイタスが一喝すると、ヤンガスは
思いっきり背筋を伸ばし
ました。
「おうでガス。アニキが喋るなとおっしゃるなら、漢ヤンガス、たとえ腕を引きちぎられようが口なんざ開け…」
「パルミドでのことを聞きたいんだ。」
「はあ、パルミド…」
ヤンガスは、
宇宙の方程式を聞かれたかのような面持ち
になりましたが、
「アッシが山賊ってぇインガな商売に手を染め始めたのは…」
と、
自分の一代記を始めそう
になりました。
「ち、違うんだ、ゴメン、僕の言い方が悪かった。そうじゃなくて、君がこないだパルミドに行って…マルチェロさんと会った時のことを聞きたいんだ。」
気ばかり焦っていたエイタスですが、そういえばヤンガスは今回のことをまるで知らないのです。
エイタスは手短かつ、
ヤンガスにも分かるように
今回の非常事態を説明し、そしてヤンガスからの説明を聞きました。
ものっすごい手間がかかりましたが。
「生き証人がいたのか…」
エイタスは渋い顔で嘆息します。
「いやっ、でも悪の道に染まっちまったとはいえ、あの娘っ子は本当はとても良い子で…」
「ううん、いいんだ。起っちゃったことだし、その…」
「ヤンガス、準備は完了だよっ!!」
ゲルダの大声にヤンガスとエイタスが振り向くと、
空襲警報発令中の中、防空壕に逃げに行くような格好
で赤ん坊を抱き抱えたゲルダと、そして大八車に家財道具を積んだあらくれの姿がありました。
「ゲルダ、おめえ一体…」
「ナニ悠長なこと抜かしてんだよトーヘンボクっ!!あんた、聖堂騎士にとっ捕まるかって瀬戸際なんだ、逃げるんだよっ!!」
「は?なんで俺が捕まるんだ?」
なーんてやりとりを聞きながらエイタスは、
夫婦って本当にきちんとバランスを取るんだなあ
としみじみと感激していました。
「…でも、エイタスのアニキが…」
たんこぶを山ほど作りながら
も、ヤンガスは心配の瞳をエイタスに向けます。
「大丈夫だよ、僕なら。」
エイタスが笑ってみせると、ヤンガスは
き
と怒ったような表情を見せました。
「いーや、この漢ヤンガス、てめえの不始末はてめえでケツ拭きヤスぜっ!!」
いろいろあるとはいえ、漢気の熱さだけは誰にも否定できない漢の中の漢ヤンガス
の叫びに、ゲルダは(多分、見えないと思っているのでしょう)子どもを抱きしめながらとても不安そうな表情になりました。
「僕なら大丈夫。」
エイタスは静かに断言しました。
ヤンガスも、口を閉ざします。
「ほーんと僕は何にも心配ないって、だって僕は直接関係ないもの。」
わざと軽い口調で言って、そして子どもを抱きしめるゲルダの方を向きます。
「僕は大丈夫です。だからヤンガスと一緒に隠れていて下さい。子どもには…親が必要なんです。」
「アニキーっ!!」
泣きながらすがりつこうとするヤンガスを踊るようなステップでさらりとかわし、エイタスはルーラを唱えました。
その後ろでは、再び
ドガスッ!!
という痛そうな音がしましたが、エイタスは微笑んだだけでした。
しばらくして。
ゲルダのアジトに押し入ってきた聖堂騎士の一団が見つけたものは、机の上に置かれていた、
家族でピクニックに行ってきますゾ♪
と
キュートなメモ用紙に丸文字で書かれた置き書き
だけで、後はもぬけのカラでした。
2010/1/19
ヤンガスはとてもいい人だと思いますが、いかにエイタスとはいえ
たまにイラっときてキツく当たりたくなる時もあるんじゃないかな
と思います。リーダーってツラいね。
あとゲルダさんは、ツンデレだけどこういう時の察しはとてもいいと思うのですよ…出来た嫁めっ!!
そして
結末予測アンケート
まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。
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