法王と王と背教者(元法王) その二

展開も鬱ですが、べにいもも鬱です。









「法王聖下には御機嫌よろしゅう。」

小山のような聖堂騎士に劣らぬ長身の、緑の衣装をまとった男性が優美に一礼します。

そのすぐ傍には、同じく緑を基調とした高価な衣装を纏った、 丸い生物 が、 満面の笑みを浮かべ て、


「ゴキゲン ヨウ。 ボク ハ ブタ デス」

と大きな声で元気よく言いました。



「………」

聖堂騎士たちが ものすごく居たたまれない顔 をして、俯きます。

まあそうでしょうね。

常識を少しでも持った大人なら、


「ええ、そうですね。よくご自分の事をご存知です。」

とは言えないものですから。




「よく参られた、クラビウス王、及びチャゴス王子。」

さすがにニノ法王は、動じません。

ただ、


ちら

と何か言いたげな目をチャゴス王子に向けただけでした。



クラビウス王は、 異常事態など何も起こっていないかのような口ぶり で、


「そして、こちらも御機嫌麗しゅう、 元法王聖下。」

と、マルチェロに挨拶しました。



「…」

マルチェロが ものっすごく不愉快な顔 でクラビウス王を睨みつけます。

クラビウス王は小揺るぎもしません。

さすが、 一番気合い入った王 は違います。



「そして、このような質問は不躾かもしれんがな。元法王 聖下? そちらの淑女は一体、どういうご関係かね?」

「…っ!!」

奥さまが絶句なさいました。

奥さまとしては、天界くらい遠い世界の話であった マルチェロは特級犯罪者である という一件も、ここまで世界的なVIPが傍にいてはまた話が違います。


「あちらは、 アルバート家のマダム・アローザ でいらっしゃいますよ、陛下。」

レベッカが、 聖堂騎士及びニノ法王に聞こえるように 囁きます。


「ほう…」

クラビウス王は穏やかな表情を崩しませんが、相当不味い会話であることには間違いありません。

だって、 「どうして特級犯罪人であるマルチェロと一緒にいるのか」 という事を追求されたら、奥さま始め、アルバート家だって只では済まないからです。




「ソチラ ハ マダム・アローザ デス。 ボク ハ ブタ デス」

またチャゴスが元気よく、レベッカの発言を肯定します。



「ほほう、チャゴスよ、 お前がお世話になった、リーザス村のアルバート家のマダム か、そうかそうか…」

「…」

この口ぶりからすると、クラビウス王はマルチェロだけでなく、アルバート家そのものに対して 非常な敵意 を持っているようです。

まあそうでしょうね。

いくら チャゴスとはいえ クラビウス王にとっては、大事な一人息子なのですから。



マルチェロは、


ちらり

と奥さまを見ると、



ニヤリ

より更に程度の高い



ニタリ

という 超極悪人スマイル を浮かべてから、廃墟のゴルド全てに響き渡るような大声で叫びました。




「誘拐だ。」





2010/3/26




愛する人の為なら、泥くらいひっかぶる。
それが真の漢というものですよね?

そして 結末予測アンケート まだまだ設置してます。
二人の恋の行き方を想像して、べにいもにも教えてください。




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