人の子 その二

とても疲れることがありましたが、明日もあります。









「ボク ハ ブタ デス」


「お前はブタなどではないっ!」

「イイエ ボク ハ ブタ デス」


聞く者をうんざりさせる…とりあえず、ニノ法王は とてもうんざりした顔 をしていますけれど…会話を、サザンビーク親子は交わします。




「もうっ、さっさとブタだと認めてしまえばいいのに。 誰から見てもブタなんだから。」

「レベッカ… 『ブタ』とは誰のことだね?」

「まあ。 それが誰かなんて、わたし、一言も申上げておりませんよ?」

そう にっこり微笑みながら レベッカが口を挟み、そして再び、




「ボク ハ ブタ デス」


「お前はブタなどではないっ!」

「イイエ ボク ハ ブタ デス」


DQ名物無限ループ会話 が繰り返されます。




が。

まあ。

そんなことは完全にムシ して、奥さまはマルチェロに更に歩み寄りなさいます。









「マルチェロさま。」

「それ以上、私に御近付き有るな、マダム。 貴女が私と出会ってしまったのは、間違いであったのです。」

「いいえ、この出会いは女神さまのお導きですわ。」

「私と出会った事で、貴女は愚かになられた。それが女神の導きの結果だとでも仰るのかな?」

「もちろんです!!」


「つか兄貴、もう観念しろよ。」

「私はとうに観念しているぞ、愚弟!!」

「そーゆー意味じゃねえっての…つかさ、奥さまがいても、兄貴の手が効かなくても、 オレとエイタスの二人がいりゃ斬り抜けられる…」

「僕はそんな手伝いはしないからねっ!!」


マルチェロは、奥さまを宥めるように言います。

「分かりましたマダム。貴女と出会った運命を否定しはしますまい。 女神には、私のような凡俗にはその片鱗すら窺い知る事も叶わぬ深慮遠望が御有り だったのだろう。」

相変わらず、可愛げのない物言いですね。


「ですがな、マダムっ!!」

マルチェロは、かつては小山のような聖堂騎士達すら一瞬で畏怖させた峻厳な声で、奥さまを一喝します。


「貴女には、アルバート家が御有りだろうっ!?」









「ボク ハ ブタ デス」


「お前はブタなどではないっ!」

無限ループ会話はまだまだ続いていました。



「自分のことを ブタ などと言うではない、チャゴスよ、 儂の世界で一番可愛い息子よっ!!」


「イイエ、ぼくは ブタ です。」

「確かにお前は かなりなぽっちゃり系 だ。 頭の中身も相当な晩成型 で、 ちょっとヤンチャが過ぎる 所もあるっ!!」


「陛下、 親の贔屓目って言っても、限度と言うものがありますよ?」


「いいえ父上、ぼくは ブタ なんです。」

「だが、それがどうあれ、お前は儂の可愛い、たった一人の、大事な大事な息子…」

「父上っ、ぼくの話を聞いて下さいっ!!」




クラビウス王は、目を見張りました。

つい先ほどまで なんだかカクカクしていたチャゴス が、ナチュラルな動きに戻っています。

いえむしろ、 いっそ凛々しいと表現しても良いような表情 をしています。




…ま、見た目そのものは所詮チャゴスなんですけれど。




「…チャゴス?」

「はい、チャゴスです。」

「そんな… 声まで変わって…」

と、 昔懐かしいネタ まで織り込みながら、 声まで変わったチャゴス は、 チャゴスらしからぬ真剣で凛々しい表情 で口を開きました。




2010/7/15




サザンビーク国王付き秘書官レベッカ(メガネの女文官)は、 にっこり笑って毒舌キャラ なのですが、意外とこーゆーキャラって、テキストで表現するの難しいですね。




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