雍歯封侯 その二

前回から1月ぶり以上の更新。
もしかしたらべにいもの奴、ここまで盛り上げといて完結させないつもりじゃねえ?
とご心配のみなさま、大丈夫です、とりあえず完結に1歩は近づきました。









「えーっと…」

せっかくの チャゴス王子とは思えぬカッコよさげな台詞 の腰を途中で折られて、チャゴス王子は困った顔をしました。


「やだなあチャゴス王子、お続け下さいってば。」

いつもとテンション&キャラが違う エイタスの口調が、チャゴスの困惑を倍加させます。




「もうっチャゴス王子ってば♪そんなに恥ずかしがらないで下さいよっ♪つ、づ、け、て♪」

「えーっと…その…エイタス王太女婿殿下…」

「もうっヤダっ♪チャゴス王子ってば、そんな他人行儀に言われるとエイタス悲しいっ♪」




しーん




周囲はスゴい勢いでドンびき なのですが、テンションがΦ214くらいにおかしいことになっている…でもソレって、 ゲームプログラムにバグがあるのではないでしょうか?




あらいやですね、 バグって何のことでしょうね?異世界の言語かしら?




何の話でしたっけ?

そうそう、 エイタスのテンションがバグってるというお話 でしたね。




ふう…

まあ、いくらしっかりしているとはいえ、一児のパパだとはいえ、 彼だってまだ若いのです。時にはテンションがバグることだってあるでしょう。









「マダム…」

「マルチェロさま…」

あらあら、見物人たちが、 アホ丸出しなやり取り をしている間に、アローザ奥さまとマルチェロは、 とても深刻な顔 をして、互いの名前をただ呼んでいます。




「マダム…」

マルチェロはそう言って、彼にしては珍しく、開きかけた口を閉じ、また口を開きかけては閉じ、としています。


「マルチェロさま…」

アローザ奥さまは、何度もマルチェロの顔を見ながらそう呟いています。

いえ、呟くたびにお声は大きくなりますが、どうしてもその続きが出ないようです。




まあ、そりゃあそうでしょうね。

我だって、そう簡単に返答されたら困りますもの。

そう…


人の子に自由意思を与えたことで、人は悩み、そして答えが見つからずに苦しむようになった。

けれど、答えが常に一つしかない事を、人はそれ程欲するのでしょうか?





我に取っても、非常に興味深い問題なのですよ。




そして、それを選ぶのが、 我に反逆した者であれば、尚更…









さあ、悩みなさい。我が与えた天寵によって苦しみなさい。それが我の…












「決めました。」×2







はへ?










「まあ…」

「いっそ気持ち良いくらいに」

「ハモりましたね、マルチェロさま。」

「そうですな、マダム。」

二人は、それぞれの 何かをひどく決意した表情 で、互いに見つめ合いました…





けど。




結論、大分早くありませんか?




「決断力のある方ですな、マダム。」

「マルチェロさまこそ。」

「私は、即断即決を旨として生きて来ましたので。」

「わたくしは…」

マダムは、穏やかに微笑まれます。


「わたくしはあなたに会うまで、ただ、 レイディであれ という言葉に従順に生きてきました。アルバート家に嫁いだからには当然だと思って、この家を守って来ました。そんな自分を疑ったこともありませんでしたけれど…不思議ですね、 マルチェロさま、あなたと出会ったことで、わたくしは 決断する ということを初めて知ったと思うのです。」




ねえねえお二人さん?

自分の人生、というか、自分の今後の魂の救済まで全て含めた選択 なのですよ?

こおんなにアホな雰囲気 の中で、 そんな割とすぐに決断してもいいんですか?




「決断することには責任が伴う。ですがマダム、貴女ならば、自らの選択で苦しみはしても、責任転嫁をなさるようなことはなさいますまい。」

「後悔はするかもしれませんけれどね。」

奥さまはやはりにっこり微笑まれます…けどね、




だから、もっと悩んで欲しいんですけど、ね?




「…決断の結果は、どちらから申しましょう。」

「まあ、マルチェロさま。こういう時は、

『せーの』 で同時に、ですわ。」


マルチェロも笑います。




「では。」

「ええ。」




「せーのっ!!」×2










2011/1/30




「せーのっ!!」
って言ってる二人はカワイイと思うのですよ。




雍歯封侯 その三へ


アローザと元法王さま 一覧へ inserted by FC2 system